2009/12/25

チョコを運ぶトラック

 スーパーの売り場の棚の上には、赤と銀色でデザインされた長靴がズラーと並んでいる。その長靴のネットの中には、お菓子がいくつか覗いている。このような風景は何十年も変わらないようだ。今の子供達は、そんな物は欲しがらないんだろうなと思っていたら、それを大切に抱きしめた子供を見かけた。言葉少なく、お母さんの上着のすそを握り締め、じっとレジが済むのを待っている。いつもなら元気いっぱいに動き回って母さんを困らせているのに、今日は随分大人しくしている。さぞかし至福の時を過ごしているに違いない。さすがにその長靴はいらないが、私も何か買ってもらって、大人しく無口になりたいものだ。この場の雰囲気が読めないかなと後ろをチラッと見る。 

 母さんは、子供達が大人しく言う事を素直に聞いてくれるなら、クリスマスは毎月あってもよいと思うかもしれない(思わない)。その場で買ってもらう喜び、あるいは買ってあげる喜びは、財布の許す範囲で幸福感の共有が出来る親子の唯一の作業である。この殺伐とした現代社会では、子供達だって多くのストレスを抱えているし、時折不安感さえ覚えるかもしれない。そんな時、やはり、母さんは、いつも自分の味方であることを認識したいのである。大人は、子供が「何気なく今、気分で欲しがる物」は、わがままだとさらっと流してしまうが、時には試されているかもしれない。それを、敏感に察知する能力を備えておいて欲しいものだ。

 クリスマスだからといって我が家には、特別なイベントは無い。参加者2名では、何をやっても盛り上がるはずが無い。いつものように、いつものごとく、年末のざわめきの中に消えそうになる。しかし、こういう時期には、特別な商品も顔を覗かせることがある。売り上げ低迷の折、なにやら復活だとか言って人気のあったものが期間限定で再登場することもあるし、どのような付加価値を付けて夢を企画してくれるかわからない。それが許されるのもこの時期の特権といえそうだ。そこで、情報だけは見逃さないように心がけたい。私なんか、もし、ハーゲンダッツにブランデーチェリー・アイスクリームが復活しクリスマスケーキという形でも提供してくれれば、迷わず買ってくる。いや、そうでなくても形には拘らない。贅沢も言わない、カップ入り小売だけでも良い。あれだけは、群を抜いて美味しかったと印象深く残っている。

 今朝、目が覚めると机の上に包み箱が置いてあった。サンタが寄ってくれたのであろうか、忙しいのに申し訳ないなと思いながら、包みを開いてみるとブリキで出来たトラックが出てきた。荷台には板のチョコレートが4枚入っている。いやー、それにしてもブリキのおもちゃは懐かしいな。ふと昔へタイムスリップしそうだ。私の幼い頃は、こんな物しかなかったが、貰うと1ヶ月ぐらい一生懸命それで遊んだ。知らず知らずのうちに、将来の夢を抱いたものだ。昔の写真には、必ずブリキで出来た、はしご付き消防車、電車、オート三輪、ドイツ製のバン、等のおもちゃが一緒に写っている。今、このトラックを眺めながら、しばし、ブリキの角の絞りを指で撫でる。最近のものは作りが良い。子供が触っても絶対に怪我などしないようにと巧妙に処理してある。塗装も随分綺麗に仕上げてある。ふと、この頃に比べて今が幸せかと聞かれると、必ずしもそうとは言えないが、こうやって、楽しかった子供の頃を思い出す事が出来る自分は、そこそこ幸せだと思うのである。そんな、昔を思い起こすひと時を与えてくれるこのブリキのトラックは、大人への優しいプレゼントといえよう。
 ではこちら
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