2013/06/28

多摩川 4

   雨が続くと、体が鈍るという年配の人は多い。今にもパラパラ降りそうなのに、勝手な解釈で大丈夫そうだと判断すると表に出てくる。何時行っても、歩く人、走る人は相変わらず多いな~あ、と愕然とする場所がある。それが多摩川の土手にある遊歩道である。ここは、ウォーキングする人だけではない、京王閣がある影響で、高速で走り去るプロライダーも多く、それを真似た人達による歩行者をまきぞいにした事故も多い。とはいうものの、一般道では、そこどけそこどけのママちゃりが横行するし、犬の散歩と同じコースは、足元が危険だし、木の陰が多いところは毛虫が落ちてくることもある。芝の長い陰には大量のダニが潜んでいる。ま、これからの時期はどこを歩いても、危険が付きまとうわけで、今頃のワンパターンなコースを気楽に歩くと言う態度は、決してお勧めできるものではない。


  そして、最も恐ろしい曲者は不意に現れる。全長2m程度の蛇なら可愛いものかもしれない。しかし、直径8~10cmもあろうかと思うような、見えている視界が僅か60cm程度(左右両方とも草の間)なのだが、何か光る光沢感の強いものが目の前を横切る(徐々に細くなっていく)姿を見て愕然としてしまったのである。「ひぇー」と心で叫びながら後ずさりをして、この歳になっても驚きを隠せなかった。すかさず、随分遠回りをして通り過ぎたが、次からその道を通れなくなってしまった。うーむ怖い。「自らの根性なし」に改めて情けなくなる。 子供の頃は、母の田舎でこのような状況に遭遇することも少なくなかったが、それに遭遇すると、いとこ同士で面白がって竹の先でつついていたような記憶もある。人の気配が少なく、草むらがあって、近くに綺麗な川がある、そんなところは蛇の水のみ場なので要注意である。


  護岸工事も終わり、再び静けさを取り戻した多摩川だが、休日前は、中ノ島へ渡ってテントを張ってキャンプをする人までいる。もちろん、もっと下流では本格的な小屋を建ててあって、毎日のように何時でも涼しい川の流れを感じていられる贅沢な仙人もいる。この時期、水嵩が増すと一大事になるリスクがなければ、それも幸せな時間の過ごし方の1つかもしれない。何時だったか、もうずいぶん昔の話になるが、中ノ島に置き去りになった人を助けるレスキュー隊の活躍が報道された番組があったが、それは、濁流に流されそうで非常に危険な手に汗握るドラマで、ヘリコプターも出てベトナム戦争の現場を思い起こさせるような迫力ある映像に、興奮したものだ。助けられた人は、このあたりのその仙人の一人であった。


  そんな多摩川でも、今年は上流で水不足である。水源確保のためか、二ヶ領上河原堰堤(にかりょうかみがわらぜき)より上流の貯水量が増えたような気がする。この二ヶ領上河原堰堤は、この写真のように奥に写っている水門があり、なんとなくその風景に溶け込む構造物を眺めながら、同じものが、よくダムの上流にある貯水池などで見受けられるが、それらが作られた時代を知らない我々でさえも、何故かノスタルジーに引き込まれてしまう。今日は、白黒の写真にして、手前の親子に自分の幼い頃を重ねてしまった。仮にも、50年前の写真と何も変っていないかもしれない。
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2013/06/25

そばらーめん

  市販の「カップ型即席の蕎麦」には、同梱されている「麺つゆ」に粉末タイプと液状タイプがある。また、麺自体も、縮んだタイプと直線タイプが用意され、それぞれは別商品として、販売ルートまで限定されている。あからさまに「どん兵衛  蕎麦」のことを指しているのだが、欲しいのは、液状タイプの麺つゆと麺自体が直線になっている組み合わせである。いわゆる「液状出汁にピン蕎麦」である。こういう即席物の蕎麦にまで拘りを持つことには、大いに好感されるべきものだが、商品の選択肢はかなり狭まれいる。また、「 どん兵衛  蕎麦」にも「天ぷらときつね」があって、「きつね」が美味しいことは良く知られているが、スーパーにはほとんど置かれていない。このような状況からおもんばかるに、我々消費者はメーカーの管理下で飼いならされているのである。

  そういう、明らかに美味しい商品は丁寧に販売したいという希望もあって、コンビニで販売される。しかも、価格維持のためか、供給量をコントロールして品薄気味になっている。ま、そのくらいの企画力を持って、マーケティングから製品化まで丁寧なプロセスで慎重に商品の位置づけを考えているのであろう。しかし、一方で、そんなつまらない競合を避け、まったく別の方向への商品化を提案するメーカーもある。元々、麺好きの人達は、手軽に天ぷらを揚げたり、薬味のバリエーションを日常的に心がけているし、また、冷蔵庫にそれらを常備していたりするのである。そして、好みの麺つゆも和食には欠かせないので、色々用意されているはずだ。そんな事情を考慮して、商品に無駄なものは同梱しないという、虚飾を廃し洗練された日本の美意識を再現した商品が少しづつ売り場を占有しはじめているのである。しかも、この商品は、プラごみを大きく減らし、低価格を望む大人数の家族に向いた商品ともいえるのである。

  今日紹介する、その「そばらーめん」は、実は、かつての昭和を髣髴とさせる、どこか懐かしいコンセプトを引きずっているような印象を受けたのである。昔々、このような干し麺(そうめんのように直線性が強い麺)を入れた袋麺商品はいくつかあった。かすかな記憶を辿ってみると中でも「福島ラーメン」という名称が思い出される。中身は、ラーメンの干し麺が2束入っていて、粉スープが麺の間に2パック同梱されていた。即席ラーメンと言うと、それが一番初期の商品だったと思う。今日のPDF写真を見て、[そうそう、大昔そんなんあったわ」と思うおっさんも多い筈だ。その流れを汲む今日の「そばらーめん」は、如何なる物なのだろうか。それは、紛れも無く、蕎麦の風味を残しながら、ラーメン以上に麺の腰が際立って、極めて喉越しの食い商品だったのである。そして、幾度と無く麺の腰を確認するように、つい口に運んでしまう癖がついてしまう程である。

  内容量は、200gとしてあり、一人100gとするとちょうど良いが、天ぷらなどを用意するならば、80g程度でも満足できる。茹で時間は、4分半と記載されているが、やや消化に時間がかかる感じがあるので、5分半ぐらいでも良い。意外に伸びたりしない。麺つゆは、自分でしっかり調味混合できる技術を必要とするが、今回は、出汁を「創味のそうめんのつゆ」を使用した。そばの麺が細いから、ちょうど相性も良いが、あくまで蕎麦屋風に戴くとするならば、より一般的な「創味のつゆ」を「ほめられ香りだし」で2:1で割ってみると良い。こういう出汁の旨みを確認しながら、薬味と共に楽しむことは、既に飽きが来ようとしている、お仕着せの蕎麦よりも楽しいかもしれない。また、これによって自分の体調や室温などの環境条件で、色々異なる薬味の組み合わせを楽しめそうだ。そんな「麺食いの極意を持った日本人でよかった」と思うのである。今そんな、独創性を要求し、素材を活かす楽しみ方が蕎麦麺にも広がっている。
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補足:辛口お好きな方のために、天ぷらがない時には、花椒油を使って爽やかにいきたい。

2013/06/21

森永Privateチョコレート

  明治や森永のような、国内のお菓子メーカーのチョコレートは、甘さを控えめにして、上品で滑らかに仕上げてある。そういうところに、日本の伝統的な美学を感じるといったら「言い過ぎ」かもしれないが、50年ぐらい前からその傾向は認識されてきた。しかし、海外の会社が入ってきてからは、「美味しさの表現力」の違いに気づき、大胆で分かりやすい食感に若者が飛びついてしまったようである。そういう輸入品の寄る足並みに押されて、以前より増して国内品は、益々寂れた存在になってしまったようだ。一度でもより甘いもの、あるいは刺激の強いものを口にすると、その印象が強く残り、控えめなものは、影を潜めてしまうのであろう。

  海外といっても、様々な国からカカオやチョコレートが輸入されているが、例えばロッテ等は、価格的にも庶民的で万人に好まれている。最近の人は、ロッテは新大久保の会社だと認識している向きもあるが、そうではない。サンディエゴのおばさんが、孫が勤めているソニーと言う会社は、アメリカの会社だと思っているのに似ている。そのロッテのチョコレートの中で息の長い美味しさを誇るのが、バッカスチョコレートとラミーチョコレートである。いずれも、洋酒が入っているので、刺激が強く食べ応えもある。しかし、これらは、洋酒の入ったチョコレートにもかかわらずチョコレート自体にも手を抜かず、しっかり滑らかに仕上げてあり、ヨーロッパから入ってくる安易な洋酒入りのチョコレートとは一線を画した仕上げといえる。

  そんなマーケットに割って入るべく、森永製菓のPrivate というチョコレート2種類が季節限定で販売されていた(過去形)。2種類とも箱の色が奇抜で、いかにも「満を持して」といった期待感をパッケージの色彩に表現してあり、早速手が伸びてしまった。これって、商品企画の部長あたりが、「もっと目立つ絵柄にしろ!」とか何とか檄を飛ばしたんだろうなと思わせ、「角度によっても、一寸派手過ぎる出で立ち」をしている。裏面にはチョコレートのカットモデルが描かれ、1つは、緑色の箱に入ったラムケーキチョコレートで、グリーンレーズンとラム酒を含んだケーキを混ぜて、ビターチョコレートで包んだ形になっている(ラム酒使用  アルコール分3.4%)。もう1つは、ピンク色の箱に入ったマロングラッセとブランデーのチョコレートで、粗砕きのマロングラッセとブランデーガナッシュを混ぜてビターチョコレートで包んだ形になっている(スピリッツ ブランデー使用  アルコール分2.7%)。このように、詳しい構造の紹介がされると、日本人の気質かもしれないが、つい口にしてみたくなるのである。果たして、それを美味しいと感じる消費者が残っているのであろうか。

  やっぱり、森永製菓という伝統なのか、期待通りの上品な仕上げになっていて、ほのかに洋酒が薫り、柔らかい美味しさに包まれてゆく。グリーンレーズンってどんな味とか思って、それだけをチョコレートから取り出して舌の上に乗せてみたりしたが、一番最初に確認しないと分かりにくい、それほど奥ゆかしい味覚が必要だ。それでも、空腹時には、「おっと、洋酒が回ってきた」のが分かったりして、その甘さに浸る心地よさも感じられる。もちろん、いずれの箱の表面にも「運転時には召し上がらないようにしてください」と明記されている。ラム酒やブランデーのアルコール分が前に飛び出してくるわけでもなく、上品にビターチョコレートに収まっていて心地よさに繋がっている。洋酒の入ったチョコレートは、包んであるビターチョコレートから洋酒が抜けないようにと、寒い時期限定販売になっている。
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2013/06/18

弁当シリーズ8

  最近は、東京でも全国各地の主要な駅弁が購入できる。いつでも、気が向いたら好きな駅弁が戴ける環境にある。だから、人生をより楽しくする事が出来るかもしれない。「東方の弁当をもって西方を目指す」事も出来るのである。しかし、そんな交錯した気持ちで、真の駅弁の楽しさが分かると思っているわけではない。弁当は、万人が愛する「もてなし料理」の一種である。車窓から眺める「その風景」と窓から流れ込んでくる風が顔をかすめていく感触が、この駅弁を「ひときわ美味しいものに引き立てている」と思えるのである。それも昔のことだが、「駅弁は歴史があるほど美味しい」といわれる。その由縁には、ほのかな薫りから、遠い記憶を呼び起こす懐かしさが漂うからである。しかし、ふと我に返ると、窓は完全密閉、駅弁を開けると車両内部がその薫りで充満して、ちょっと恥ずかしい思いをするかもしれないが、流れていく車窓を眺めながら戴くことに幸せを感じるのである。

  ということで、今日はとっておきの駅弁「ぶりのすし」である。これは久しぶりに堪能できた。たいへん美味しい!元々個人的にも魚系が好きというのもあるが、あの生の「脂と臭いの強いぶり」をてなずけて、何とも爽やかで食べやすい駅弁にしてある。かみしめながら、ぶりの風味を消さず、臭みを抜くための工夫がなされていて、そこが絶妙で素晴らしいと思ったのである。姉妹商品に「ますのすし」と言うのがある。こちらは、戴いても「また食べたい」と思うことはないが、お土産として時々戴いたりする。この「ますのすし」の方が知名度が高いのだが、しかし、断然美味しいのは、こちらの「ぶりのすし」である。同じコンセプトで容器も同じ仕様で作られているので、外見もよく似ているが、間違ってはいけない、美味しいのは「ぶりのすし」である。

  このような腐りやすい「生の魚を原材料に使う駅弁」は、酢や笹を使い抗菌効果を高めた材料で包装されている。押し寿司の形式であるがゆえに、中身より容器のほうが高くついていると思えるような贅沢な作りになっている。この圧力によって、ぶりの旨味を酢飯に写すのである。このような「自然の薫りを力で移し、独特の旨味を追求する」ところに奥ゆかしい美味しさが広がるのである。しかし、火の通った食材を使う駅弁に比べると、時間とともに早く消費期限は迫ってくる。だから、「入手したら、すぐに食べるのがよい」かと思われるかもしれないが、実はそうではない。ぶりの脂が「かぶら」やお米に浸透し、にわかに酢飯にぶりの味が染込む頃、つまり製造後24時間程度後がベストではないかと思うのである。ま、「最も美味しく戴く」には、人に薦められないが「危険が伴う腐りかける寸前」ということだろう。そうなると、何といっても、面倒なのが保管状態である。暖かい車内や室内常温に置けばすぐに腐ってしまうし、冷蔵庫ではそのままだとご飯が硬くなる。だから、空気を抜いたフリーザーパックで冷蔵保管する。そうすると少しだけ乾燥を抑える事が出来るのである。

  そして、今日はもう1つ、この「ぶりのすし」によく似合う添え物を用意した。伝統の京都西利の漬物である。こちらは袋から取り出し、軽く絞ってお皿に乗せるだけで、いただける。それだけで、京都の伝統的なお味がすぐに蘇るのである。この京都西利の漬物は、職人が自然の野菜を大切にし、加えて伝統を守るこだわりの製造技術が活かされている。この漬物の作業工程は、寒い作業場で冷たい水を使いながらの作業で、職人にとっては厳しい現場といえる。そのような作業環境で、伝統にこだわり続けて来たのが京都の漬物なのである。京都西利には、定番的で伝統的な商品から、新たな研究開発が生み出した創作漬物まで、色々取り揃えられているが、この懐かしさのある安定した安心感が伝わってくる漬物の食感は、日本人としての美食意識をさらに高めてくれる逸品と言える。
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2013/06/14

3種類の使い方が出来るバッグ

  三浦雄一郎さんのエレベスト登頂成功の快挙が刺激となって、年配の人たちが俄然元気を取り戻そうとしている。スーパーやデパートのバッグ売り場には、年配の人たちが色々と小道具を入れて背負えるようなバックパックを買い求めている様子を見かける。なぜそんな場所へ?と思われるかもしれないが、恥ずかしながら、まったく同じ理由である。手前の場合は、水を入れたタンクをデイバックに積んで歩いていたのだが、内部がこすれて駄目にしてしまい、新しいのを購入する目的で、この場に居合わせているのである。やはり、三浦さんの影響なのかナイキやアディダスなどスポーツメーカーの製品を手にしている人が多い。

  緊急を要しているわけでもなく、どこか出掛けたらついでにデパートの中を探してみると言った具合で、面白いものがあったら買ってこようと、気楽な気持ちで探していたのである。しかも、ほぼ同じ目的の人がどの様なバッグを買い求めているのかも、興味があったというのが本音である。まだ、大きいタイプの物なら未使用が3種あるが、それだと、2デイバッグあるいは3デイバッグで、近所歩きのような場合は、少々大袈裟な印象があって好ましくない。まして、草むらにボーンと投げ出すような乱暴な使い方には不向きである。中身は所詮、「水のタンクしか入れないし、惜し気の無い価格、さらに、水洗いが簡単に出来るのがいい」と虫のいい考えで背負うバックパックを探していたのである。

  そんな中、行く場所々で、年配の人を多く見かけたのである。ひときわ、大き目のバッグを背負ってみては、按配というか背負い心地を確認しているようだ。きっと、私のような使い方というより、2~3日山歩きでもする出で立ちを目指しているようだ。そんな姿が目についてしまった。初めてなのか、ご主人の背負い方まで奥様が「姿勢とか、背負い方、歩き方」まで指南されている姿を見ると、まだまだ、修行が足りないように推察することもある。横から眺めると、遠出をする前に、まずそのおなかを何とかした方が良い、と思う姿も見受けられる。「安定感があるので、前後のバランスが丁度いい」と言ってしまえばそれまでだが、もしかしたら、そのおなかを凹ませるために、バックパックを買うのかもしれない。

  案外身近なお店で、しかも売り場の片隅で、想定していた物とは大きく異なるそれを眺めながら、自分の価値観を徐々に捻じ曲げながら、都合よい商品だと強引に自分を納得させていたのである。価格も990円と手ごろだし、使わない時は小さく畳めておけ、荷物が大きい時には背負ったり手提げにしたり、という優れものである。これだと、水を背負って歩く感覚にぴったりである。特に、背中には大量の汗をかくために、すぐに洗濯できるし、また、汚れにくそうに思える。色々使い方もあるようで、例えば、弁当を持って日帰りで出かける時に、帰りは、手土産を入れた手提げになるのである。必要が無くなれば捨ててきても惜しくも無い価格である。説明書には、ラップトップパソコンを入れる手提げとしても使えると書いてある。小安いので2個買ってしまった。なかなかよく考えられた商品なので紹介しておきたい。
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2013/06/11

フランスパンによく合うコロッケ

   ウォーキング・コースは、しばしばコースから離脱し、迷路に迷い込んでしまいたいことがある。お腹のすくタイミングでちょうどいい場所にお肉屋があった。このお店のコロッケが実に美味しそうに見えた。以前覗いたときも、「いかにも美味そうだ!口にして見たいと思いながらも、結局、歩きながら食べるのは、行儀が悪い」と思って諦めたが、後ろ髪を惹かれる様に、どうにも「美味しそうと思う気持ちで頭の中がいっぱい」になり、どんどん膨らんでいったのである。街中に戻ってきて寿司屋の前、和菓子屋の前、色々のお店の前を歩いても、まるで、背後のコロッケから追いかけられているような状態が続いていた。


     その日は、家を出る前から意を決して、あのコロッケをゲットしようと思っていた。やはり、ちょうど小腹が空く頃、その肉屋の前にたどり着いた。店のおじさん(と言っても、私とそんなに歳は違わないが)に120円出しながら、コロッケ1つでもいいですか?とお願いすると、ニコニコしながらソースを掛けて渡してくれた。他にも色々美味しそうな物が並んでいたが、一番安いコロッケを選んだのである。これが美味しければ、手を抜かない職人気質を守り、他の品物も美味しいに違いない筈である。私としても、そんな際どい理屈を用意していたのである。コロッケを半分包んだ紙に脂が染みて、すこしづつ半透明になる頃には、既にそのほとんどを口にし、その美味しさに興奮していた。それは、やはり、伝統的な技術を感じさせる上質の美味しさだったのである。


  信号を渡ってマクドナルドの横を通り過ぎて、しばらく歩いたが、お腹が空いているわけでも無いはずなのに、珍しく「もっと手元に欲しい」と思ったのである。夜でも、明日でも、また食べたいと思ったからである。信号無視し、きょろきょろ左右を確認しながら路を渡り、お店まで戻った。おじさんに「美味しいんで、その残りの6個もらっていいですか」と頼んだのである。一人ごとのように、しみじみと「どこか懐かしく、美味しい~す」と呟くと、おじさんは、ニコニコしながら「昔ながらの作り方だから、旨いでしょ」と話しかけてくれた。「そうそう、やっぱりそうなんだ」と思った。この手のコロッケは、スーパーでも、おおよそ120円前後で販売されている。もちろん、先日「最近ハマッテいるもの1」で紹介したミートデリカカイゼルでも販売しているが、これほど、美味しいと思ったコロッケは無い。しかし、この「昔ながら」と言う言葉に、「昔の味を変えず、油を健康的に改良する、匠の技」が隠されていて、少しだけ昭和を感じられたのである。

  この美味しさとは、外がカリカリの感じで、中が少々しっとりしているところにある。じゃがいもに質の良いお肉のミンチがちりばめられて、そのお肉の旨みが封じ込めてある。さすがにお肉屋さんだけのことはあり、ちょうど、上質の牛肉を買ってきてミンチにして、その肉を加えながら一緒に「じゃがいもを練り上げた」ようなマイスター的な手作りのしなやかさなのである。一般的にコロッケは、じゃがいもがほくほくした感じで、口の中の水分を吸収してしまうが、それとは全く違う滑らかな食感である。これは、フランスパンに挟んだらきっと美味しいだろうなと思った程である。そこで、とっておきのフランスパンに、両サイドにチーズを塗り、コロッケを挟んでみることにした。買い求めたフランスパンはトロワグロである。サイドに塗ったチーズはブルサン、これで一応最高のサンドといった気品が漂うのである。
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補足:やはり出来上がりが一番美味しい。トレーに品物が無いとき、次の出来上がりの時間を聞いて、また寄ってみると良い。金曜日は定休日。メンチカツもお勧め。

2013/06/07

ドリップ工房MAXIM

  気温も上がり夏日が続くと、やはりアイスコーヒーが欲しくなり、何とかしなくてはと考えているわけだが、やっぱり、思い出すのは水出し珈琲である。以前も紹介したのだが「KEY COFFEEの香味まろやか水出し珈琲」は、かなり美味しいという印象が残っている。さすがに、水出しと言っているし、かといって本来の姿ではないが、珈琲の粉を浸透性の高いフィルターにパックした形で販売されている。一晩冷蔵庫でじっくり抽出という時代から、最近は早いもので4時間で抽出となっているが、「美味しい水」も用意しないといけないので結構手間もかかる。手前の研究によると、「KEY COFFEEの香味まろやか水出し珈琲」の以前の8時間タイプと「KIRINのアルカリイオンの水」の組み合わせがベストであった。

  最近は、「アルカリイオン水と水出し珈琲」の両者の調達が面倒と感じるので、何かすぐに冷やして飲めるものを探そうと思って、時々試しに新製品を買ってくる。しかし、UCCはUCCの味がするように、どういうわけかメーカーの独自の香味を強く感じてしまうのである。それが一種の差別化というならば、仕方なく「うーむ残念」に思い、首を傾げながらパスするだけだが、もっとストレートに珈琲の味が前に出てくるものがあれば、それでも簡単な方が良いと考えていて、それが欲しいのである。いや、それではかなり贅沢な商品になるかもしれないので、せめて香味を抑えたものが欲しいと考えているのである。そんな気分で今日は試しに「ドリップ工房」というMAXIMの商品を買ってきた。

  ドリップと言う文字が記載されてあるので、ホットで珈琲を抽出したのかと思いきや、アイスコーヒーという表記もある、白を基調にして必要な文字と、珈琲カップだけデザインされた、ここでもホットを意識してあるようだ。そして、明らかに業務用を印象付けるシンプルなパッケージである。「赤のみ、あるいは緑のみの印刷で、順に微糖と無糖の2種類」となっている。味は、多少MAXIMの香りが残るものの、そこそこの珈琲の自然さが出てきているようだ。「KEY COFFEEの香味まろやか水出し珈琲」と比較すると、多少「味の素ゼネラルフーズ」を思い出させるが、ガムシロップや乳製品と組み合わせると、意外に気にならなくなり「美味しいと思える」。つまり、微妙な香味の作りと言えよう。 

  これは、恐らく「香りの高いドリップ珈琲とエスプレッソを合わせる」ことで、より自然で豊かな香りと深いコクを実現したことによるようだ。パッケージが示しているように、珈琲専門店向けと、勘違いをするぐらい虚飾を廃するデザインで、かつての昭和の喫茶店で出されるような味に収まっていて好感が持てるし、水を用意する手間要らずで日常的には圧倒的に使いやすいと思える。購入後、結局2種類6本飲んでしまったぐらいなので、かなりのマニアックな人でも、そこそこ納得してもらえると思う。
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2013/06/04

あごのやき

  大人の「好き、嫌い」は一種の趣向である。また、「美味しい、美味しくない」は個人の感想である。したがって、「美味しいですよ」というのは押し付けになる。しかし、「こういう食べ方をすると、美味しいです」というのは、一概に「押し付け」とは断定できない。これは、本質的に対象が食べ物自体ではなく、手順とか調理方法を示唆しているからである。それは、また視点を変えると、人々の感想を統計的にまとめたもので、それは、自分だけではなく、多くの人の評価と解釈される。その手順や調理方法での食べ方に従っても、結果的には、さほど美味しくない場合もあるが「このような食べ方をするんだ」と納得することもある。この手法は、販売者が一度試してみて欲しいときによく使われる手法である。

  食べ物は、その人の育った地勢的な要因や経験的な背景によっても影響を受けていて、好き嫌いや、美味しい美味しくないという判断に影響を与えている。とりわけ、今日紹介する「あごのやき」は何なんだろう?と思われるかもしれないが、これは、少し大きめの「ちくわ」と思ってもらってよい。ご飯のような主食でもなく、かといっておかずにもちょっと適さないような「ちくわ」は、どの様な食べ方をするのが美味しいのか、と考えがちだが、一番美味しい食べ方は、酒のお供というのが良さそうだ。あとは、単純に一口大に裁断して、わさび醤油で戴くということになる。原材料は、かまぼことほぼ同じだが、一般的にかまぼこを戴くのは食卓で、一口大の大きさに切った大きさだが、これも同じ方法で戴くこともあるが、どちらかといえば、ちくわは携帯食の傾向が強い。

  現在は、そのような状況と遭遇することは少ないかもしれないが、かつては、駅や桟橋の売店では必ず見かけた。それこそ、今日紹介するような、少し大きめのちくわである。同様な品揃え状態で「かまぼこ」が売られている売店を見かけることはない。列車や船の中でビールを片手にちくわを口にする人は、ローカル線などでよく見かける。例えば、呉から松山へ向かう高速艇の中でそんな人を見かけたかもしれないし、岡山から伯備線で山陰に戻る人の姿を見かけたとすると、きっと日本酒とこのあごのやきを手にしているに違いないのである。山陰とは、中国地方の日本海側を示し、出雲の神様がいらっしゃる地域である。また、このあたりでは、松葉蟹をはじめとする美味しい海産物が大量に採れる場所でもあり、古くから魚肉練り物のちくわやかまぼこなどが有名である。

  「あご」と言うのは、飛魚(トビウオ)の事で、だし汁などでも美味しい出汁が採れる魚で、かつてフェリーで瀬戸内海を渡るときなどには、時々飛び跳ねている姿を見かたことがある。瀬戸内海だけではない、日本の近海には古くからたくさんいて、刺身、出汁、練り物などに使われてきた歴史がある。特徴として「少し甘めの美味しさ」で誰しもそれを知っていて、高級な和食の出汁に使われる事が多い。今日紹介するのは、そんな日本海側の山陰で採れた美味しいあごを50%使った贅沢な魚肉練り製品の「ちょっと大きめのちくわ」である。この山陰で採れるあごは、特に近海の海老や蟹を食べて育っているので大変美味しい。少し柔らかになる程度に暖めて、わさび醤油で戴くのが良い。
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