2014/01/31

麺職人 鯛だし仕立ての塩

  上手に作られた鯛のお吸い物は、とても美味しいが、本物の鯛を調理してそれを上手に作ることは難しい。和食の料理人ですらそう溢すことがあるようだ。一般的に鯛のお吸い物は、さっぱりした椀の代表のように言われるが、それは、たまに口にする人たちの感想であって、馴染みの多い人のそれではない。確かに、一口、二口、あるいは三口でもよいが、最初は美味しく感じるが、時間とともに鯛の脂が体に回ってしまい、そのうち、結構「ひつこい、あるいは、しつこい」と思うことがある。これは、鯛の風味と脂分の不均衡によるもので、大方は脂が邪魔をしている。したがって、脂を抑えながら鯛の風味を引き立てるのに工夫が必要になるようだ。

  ローカルな話にしても珍しいかもしれないが、かつて川向こうの「稲田堤」には「鯛ラーメン」のお店があった。鯛から採った出汁がラーメンに使われていて、その透明なつゆと細い麺とが絡まって、実に上品でさっぱりした感じに見えるのである。あくまでも「見える」なのである。どの客も、最初の一口、二口は首を横に振り、贅沢感に浸りながら「美味しいすね」と興奮した面持ちですすっているが、最後まで出汁を飲み干す客はいない。店主はそれを苦にして出汁に工夫を重ねていたようだが、単純に薄味にすればよいというものでもない。そこに、「何を引き立て役に使う」かが重要になる。しかし、そこに着眼し、それを追求するお客は多くはいなかった。このことは、鯛の出汁を使う時の難しさを示しているといえる。

  かつて日清食品は、2002年に、麺の達人シリーズで「鯛の炊き出し風味しょうゆ仕立て」を発売している。これは、鯛のだしと、チキンスープがバランスよく調和し、魚の臭みのない、あっさりとして上品なスープに仕上げ、今までにない新鮮な味と香りを堪能することができた。また、2006年には、おぼろ豆腐の入ったカップスープシリーズに「鯛だしの桜風味(焼鯛の香ばしく上品な出汁に、桜の風味がほのかに香るスープ)」を販売したが、これも素晴らしい作りだったと思う。いずれも冬場の季節限定品として大変評判の良い商品だったようだ。

  今回登場した、この麺職人「鯛だし仕立ての塩」は、上品な鯛出汁に、生姜や赤唐辛子で鯛の魚臭さを排除し、ちょっぴり辛めに仕上げられている。麺は得意の「まるで生めん」のノンフライ、中細ストレート麺仕様で、申し分のない食感と味わいを提供している。お湯の投入目安410ml、待ち時間4分で、麺はやや硬めの仕上がりになる。ピリッとした鯛出汁の美味しさは、寒さ厳しい折にも丁度よい美味しさに仕上げられ、冷えが応える女性や年配の人たちには、お味、喉越し、量、共に適切な感じで、温たまる最高のカップ麺となっている。これぞ、麺職人の技といったところだ。
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2014/01/24

黒にんにく

  医食同源という言葉がある。普段から、薬やサプリメントなどに頼らず、自らの体調に合わせて継続的に食材を選んで摂ることで、徐々に体調を改善し、免疫力を上げたり、体の内側から健康になろうとする概念である。そこに健康食品という分類の存在価値がある。しかし、一方では、健康食品という言葉の中に、「今すぐは効かない」ので根気が必要であったり、あるいは、ずっと続けることで、すこしづつ「体によい効果をもたらす」という期待感が隠されていたり、あるいは、ずっと続けても、「自覚できる効果が得られるとは限らない」という疑心暗鬼も含まれている。年齢を重ねると、健康に対する依頼心が強くなるようで、そのために食品に拘ることが増えて、その概念に沿って健康を維持するのが良いと思っている人は多い。

  古代エジプトでピラミッド建造に携わった人たちは、体力増強・健康維持のためにいつも「にんにく」を食べていたと伝えられている。それ以前から、にんにくは、種々の病気の治療に使われてきたようで、長い歴史と実績があり、今も効能について研究が進められている。また、個人的な話で恐縮だが、にんにくを高い頻度で摂取するという大先輩が周囲に2人もいて、よく話を聞かされた。それは、共通していて「毎日1粒程度摂取することで、積極的に健康が維持できる」というもので、もし、今後、年齢によって体力に不安を感じるようになったら、「にんにくはよく効くよ、効果は絶大でね」という話であった。今から20年ぐらい前の話である。

  そのころは、まだビンビンに元気だったので、「ふーん」という程度だったが、45歳を前後する頃から、風邪が治りにくくなったり、今ひとつ活力や頑張りが足りない、など不安を抱える様になってしまい、自然にその話を思い出すようになった。ただ、にんにくを毎日1粒食べると言っても、それ単独では胃に穴が開きそうなくらい強力で、結構臭いも強い。にんにくの輪切りからオリーブオイルにエキスを抽出して、それをパスタに使う程度にして、それでも、週に1回ですら体にまとわり付くような臭いに苦しめられる。その割には、風邪で苦しんでいる時でも、今ひとつすっきり元気を取り戻すわけでもなかった。

  その数年後、スーパーの即売会でこの「黒にんにく」と遭遇することになる。一般の天然未加工の国産にんにくに比べて10倍ぐらい高くて、当時(13年ぐらい前)は、なかなかその効能の情報も無く、その価値を見出す実感はなかったが、販売者の熱心な説明に説得されて購入してみた。しばらく冷蔵庫の中に厳重に保管されたままで、気分的にも半信半疑の日々が続いていたが、あるとき風邪で悪寒が走る事があり、苦し紛れに意を決して夕食後に口にしてみた。2時間ぐらいすると、「体が温まり、みるみる元気になってしまった。結果的に夜はその影響で熟睡できなかったにもかかわらず、翌朝の調子までまるで元気な」のである。首をかしげながら、「すげーっ」といった感じであった。それ以来、疲労回復、風邪予防、腰痛、体の冷え、食欲不振などに重宝している。ただ、在庫を0にしない程度で、姿を見かければ買ってくるが、それでも、もう10年以上お世話になっている。

  販売者の話によると毎日一粒ぐらいがよいらしい、この臭いも、強い刺激もない黒にんにくなら毎食後でも食べられそうだ。一粒あたり90~110円なので、1日2粒として「リポビタンD」相当と考えると、特別疲れた日でも2粒程度、あとは、寒い日に1粒程度という感じで口にすると、生姜や唐辛子は必要なくなる。今の年齢になっても、確かに「黒にんにくは効果が穏やかで、自然にみるみる元気になる」感じがする。その効能に関して、現在ではインターネット上に数多く書かれているので、そちらを確認してもらいたいが、若い人でも外食が多く、冬に風邪を引きやすい人は、一日おきぐらいに1粒ぐらい食べておけばよいので、冬場は常備しておきたいものの1つと言えそうだ。間違いなく穏やかな効き目を実感できる。
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2014/01/21

滋養になるキャンディー

  健康マニアになると、何かと周囲の環境や健康関連の商品が気になる。一方で、体は急激な変化を好まない事がわかっているので、ぼちぼち日課のようにストレッチしたり、少しでも悪いとされる習慣を直そうとしたりする。そういった、痛みを実感したり、細かなことに神経を使ったり.、そんな気休めでも、生きてる実感に繋がるようだ。そして、美味しい物を探すより、できるだけ体に良いとされる物を選んで口にする方が、健全な雰囲気が漂うのである。それには、必ずしも科学的な根拠を必要としないが、それ相応の能書きや理屈がくっついた方が納得感がある。

  酒飲みによくあるのが、夕方になると「風邪なんか、体をアルコールで消毒すれば治るよ、帰りに一杯やろうぜ」と話しているのを小耳に挟む事があるし、また、愛煙家は、「ストレスは、体の免疫を大きく低下させるので、煙草を吸ってストレス解消」になるのが一番体に良い筈だ、とか、まことしやかに煙に巻いている。世の中に同じような話は、山ほどあるが、これは一部に正しい側面を備えているところが始末が悪い。まして、「そんな理屈を繰り返されると、徐々にそんな気がしてくる」という、不思議だが精神安定剤のような役割を果たすのである。それに対抗するには、いつも冷静で本質を見抜く洞察力が必要になってくる筈である。

  能書きだけとは限らない。暗示によって購買意欲を掻き立てるというのもある。商品が置かれている場所によっても、これって健康食品?なのかと、疑問に持つものが薬局に並んでいたりして、説明を聞けば、なるほど、体に良いものなのかと説得されたり、逆に、スーパーの売り場で、健康食品なのに、こんなところに並べるのは不自然と思える商品が、大量展示をされている事もある。また、いつもレジの手前に「お菓子なのか健康食品」なのか判りにくい商品が置いてあったりする。それは暗に「所詮、口にするのはあんただし、騙されてちょうだいよ、こっちは売れればいいだけだから」と語りかけているようだ。そんなことがきっかけになって、その都度色々調べてみるが、結局当たり前の結論に達するのである。それは、最新の研究で作られた商品より、古くから食べられてきた食材は、健康食品的要素が高いということである。
 
  今日紹介する3種類の飴は、健康食品とは何処にも書かれていないが、明らかに健康食品の分類に入るものである。それぞれ、ロイヤルゼリー、プロポリス、マカを主成分とするキャンディーで、物凄く素朴な味の商品である。ロイヤルゼリーは、働き蜂が幼虫に与える為に分泌する乳白色の液体で苦味が強い。アミノ酸やビタミン類が豊富で美容や滋養にも良いとされている。一方、プロポリスは、木から集めた樹脂を、蜜蜂が唾液とともにワックス状にしたもので、フラボノイドが含まれて過酸化脂質の増加を抑える作用があるとか、さらに抗菌作用、抗ストレス作用なども認められている。そしてもう1つ、マカはアンデス地方の苛酷な自然環境で自生する根菜で、古くから滋養食として使われてきたもの。大地から吸収された栄養分が圧縮されて入っており、そのアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどのバランスにも優れているようだ。これら3種は、誰もが滋養効果を認めており、自然に健康食品という印象が強い。今頃は、鼻や喉をいためることが多いので、プロポリスがお勧めである。
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2014/01/17

オーディオマニア31

  今時、オーディオに興味を持つ人は、ずっと上の年配の人ばかりかと思っていたら、若者でもオーディオ売り場で新しいスピーカに耳を傾けたり、店員さんと何か話しこんでいる姿を見かけることがある。そのような状況を目にすると、つい昔の楽しかった事を回想してしまう。最近は、とんと新製品(1989年以降)のことはわからないにしても、難しい顔をしながら拘る若者の姿に「彼も好きなんだろうなぁ、きっと苦労するぞ」と、にんまりしてしまうのである。オーディオは、受け売り型の趣味で、「缶詰を開けて、お皿に盛りつけて口にしながら、生とは違うけど、それでも、それなりに美味しいね」と言うのと、似たようなところがあって、生と比較しても理屈は通らないが、1つの理想を探求したいという目標を掲げると、それは、価値ある終着点として存在しているように見える。

  少々先輩づらで話を進めるのを許してもらえば、昔のオーディオ機器はある意味で「理想を追求しようとする製品」が多かったと言える。理想といっても、エンジニアの自らの夢を実現しようとする姿そのものだが、そんな足跡の中から、ここでは、過去のオーディオ機器を題材にして、Hi-Fi 論とでもいうような表の看板に隠れた、実はたわいも無い話を展開してきた。ちょうど年寄りが、昔を懐かしがって同じ話を繰り返すようなものだが、実はそれが読む人によっては、「その頃の自分に照らし合わせて共感できるのだ」と逆に励まされることもある。今まで紹介したオーディオ機器は、今だに我が家でなんとか「稼動している機器」ばかりなので、大昔の話とは思えないが、まれに、写真が出てくると、記憶が蘇るというケースもあるので、今日は、その写真の中から1枚を選んでみた。オーディオ機器の魅力は、人によって異なるが、中でもメカとエレキが同居したものに異常なほど執着する人がいる。

  数々の名機といわれるオープンデッキを世に送り出してきた老舗のテープデッキメーカーとして、カセットデッキの理想的な姿を追い求めてきたティアックが、集大成とも言うべきカセットデッキC-1を登場させたのは1978年である。隅々まで実用的に考え抜かれ、全く無駄が無く質実剛健ながら、技術者が自分の拘りのために作ったと思われる程の傑作である。デュアルキャプスタン方式で3モータの堅牢なメカニズムを搭載し、アンプ系は直流アンプで構成し、再生EQを樹脂モジュールで固める(プロトタイプだけだったかも)など、各ステージには、ふんだんに新機軸が盛り込まれていた。また、テープごとの調整は抜き差しできるカード(下の写真CX-8)になっており、テスト信号発生器(TO-8)の400Hz、6.3KHz、12.5KHzを使って BIAS、LEVEL、EQ調整を行い、フラットな周波数特性を得ることができる。これによって、必要に応じてテープ別にカードを差し替えてセットアップを完了させる。しかし、当時、同社は「コバルト吸着型テープ」を推奨しており、それによると事実上カードは合計2~3個もあれば十分であった。

  同社はテストテープの製造・外販をしており、そのために自社デッキの再生特性を完全な状態にセットする事が出来る。したがって、そのままフラットになるように録音することで、C-1で録音されたものが、他社のカセットデッキでも綺麗に再生できることになる。このクラスのデッキに求められるのは、自己録再に留まらず、他社との互換性も当時は重要な課題になっていた。また、それによって、生録音をするマニアにとっては、絶対的な信頼を寄せることが出来たようだ。現在50本近い手元にある自家録音テープは、全てC-1によるものであり、現在他社デッキで再生しても、綺麗に再生できている。一方で、市販のミュージックテープを再生すると、ややハイエンドを抑えた再生音になるテープもあり、ミュージックテープ製造側の品質管理の難しさを垣間見ることも出来る。そのような現実にあわせてナカミチのデッキを置くマニアも少なくなかったと推察される。

  その後、C-1はメタルテープ対応としてMKⅡ化し、また、前面デザインを統一したローコストタイプC-2、C-3なども市場投入されている。C-1MKⅡを使ってメタルテープへ録音した当時のカセットテープも30本ぐらい手元に保存してあり、それを現在再生してみると、メタルテープの保存性能の悪さ加減がよく分かる結果になってしまった。やはり、当時テストテープの製造をしていた同社は、既に保存性能において、コバルト吸着型テープの方が良好であることを把握していたと思われる。
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補足:質実剛健の設計といっても絶対額として、当時本体のみ 238,000円は割合高価な部類であった。

2014/01/14

京風ちらしの素

   「和の食材」を扱う大手食品メーカーは、全国津々浦々まで、「美味しいと評判を呼ぶ」ような商品の企画に苦労している。それほど「和の地域性」を「全国統一的に扱う」ことのできる食品に仕上げるのは難しいようだ。人にはそれぞれ「故郷の味」があり、さらに「お袋の味」もある。それらを超える「美味しさ」を掌握して、更に独自の味を打ち出す事だからである。しかし、最終的な味付けをお客に委ね、半製品に留めてしまえば、後の処理は、母さんが「故郷の味、あるいは、その家の味」に仕上げる事ができるのである。そこに「一手間掛ける美味しさ」が浮かび上がってくる。昔の話だが、「京都のデパ地下」を眺めて、「紀文の惣菜」が幅を利かせているのに驚いたことがあった。

  時たま、故郷の牡蠣飯の味に舌鼓を打つことがあるが、広島で戴く牡蠣飯よりも、少々お高いが渋谷で戴く牡蠣飯の方が味も濃いし、美味しいと思うことがある。これは、東京に合わせた味付けをすることで、「東京の牡蠣飯」になっているのであって、広島のそれではない。元々、商売は客の求める先を読んで、それを付加価値とすることで優位性を確保することが出来る。つまり、広島の牡蠣飯をそのまま東京へ持ってきても誰も見向きもしないし、東京のお客は、醤油味の濃いのが好きで、旨みにもうるさい。そういうマーケティングの下で工夫されなければならないのである。それゆえ、その牡蠣飯に入っている牡蠣は燻製になってしまったのだ。

  それに引き換え、「美味いと言うのは、こういう味」なのだと、かたくなに食材の品質や味付けに拘り、「我が食材が一番」を誇りにしている老舗食材店もある。老舗は、長い伝統に裏打ちされ、度重なる試行錯誤によって完璧の域に達し、厳しい職人技が幅を利かすのである。しかも、長い間その同じ味を継承することで、安心・安全という漠然とした信頼感で覆われているのである。そこに、老舗の暖簾を大切にする食材思想が脈々と流れ、一味も二味も美味しいと言わしめる背景が描かれてきた。その評価は時と共に広く伝わり、老舗の味として、誰が口にしても口を揃えて「美味しい」と言わせたのである。また、職人はそこに心意気を感じてきたと言えるのである。

  今日紹介する、「京風ちらし」の素は、そのような側面を持つ商品の1つと言える。作り方は、炊き上がったご飯に混ぜるだけの簡単なもだが、特徴は、具の中に「じゃこ」が入っていることで、じゃこの微妙な美味しさが広がるところにある。ただじゃこが入っているだけではない。そこに、非日常の味わいが存在するのである。中でも、ちらし寿司の「お好きな人」には、1度是非にでも試してもらいたい。さらに、この揃えられた「様々な素材から滲み出る旨みや、酢の優しい酸味」など、わずかな違いがもたらす微妙な味わいが、独特の風情をかもし出し、一線を画した違いが新たな発見に繋がっていく。素朴だが品の良い美味しさに溢れ、ちょっとだけ嬉しい気分になるはずである。
ではこちら
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2014/01/10

ぜんざい

  何故、何度も意味不明な作業を繰り返すのか、幼い頃から不思議に思っていた。母は、小豆の赤い色が溶け出した湯を何度も捨てる。子供心に、これは、きっと出来上がった「ぜんざい」が赤飯のように、赤くならないようにするためだと思っていた。ところが、実はこの作業、小豆の「あく=渋味」をとる行為で、普通3~4回は行われる。この時、しっかりと笊で水気を取るので「切る」といい、合わせて「渋切り」と言うそうだ。よく、野菜などを炊くと細かい泡が固まって残ってしまう事があり、それを「あく」というが、その「あく=渋味」は丁寧に採るようにと指導される。しかし、この「あく」も野菜のエキスだと思って、少し残す方がよいという考えもある。
  
  さて、この小豆では、皮と実の間の部分に「渋」として、サポニンや、赤い色素成分であるアントシアニンが含まれている。したがって、「渋切り」を繰り返すことで、それらの成分は流れて無くなり、同時に小豆くささも無くなっていく。その方が、あんこもぜんざいも「上品な仕上がり」になると言われていて、昔から、祖母は母へそのように「うるさく」指導していたわけである。ところが、サポニンは炎症を鎮める作用や、便通をよくする効果、あるいは血行を促す働きがあるといわれているし、アントシアニンはブルーベリーなどに含まれ、目の疲労回復、抗酸化作用などの働きがあると言われている。それなら、渋切りを1~2回にして、健康に良い「ぜんざい」にしたらどうかと考える。

  丹波の小豆は大きい。だから大納言と呼ばれてきた。煮ても型崩れが少なく、それだけ皮も厚い。したがって、十分炊き上がっていても、僅かな豆の風味と食感が良いのが特徴だ。皮が厚いのは、昼夜の寒暖の差が大きな地形で育つためとされる。それが、小豆のみならず、様々な種類で「丹波の豆」は優れていると言われてきた由縁である。しかし、それだけ煮上げるのに火力と手間が掛かることから、老舗のように専門の職人が小豆の案配を見ながら大切に炊き上げる。炊き上がると、ぜんざいには独自の甘みを加える一方、餡は、まず、粒の綺麗なものをより分け、さらに型崩れしたものを潰し、布等で裏ごしして漉し餡にし、粒小豆と合わせて甘みを加える。これを小倉風とも言い、漉し餡の方はとても手間がかかるが、この滑らかさの食感は素晴らしい。

  さて、以前、ぜんざいを紹介したのは、随分前のことだが、今日は、伊勢丹で「美味しいぜんざい」を買ってきた。ここで言う「美味しい」とは、小豆に僅かな風味と食感を残しながら、職人ならではの仕事を思わせるところだ。さすが大納言で、一粒の大きさもさることながら、型崩れが少なく、わずかにとろみ加え、通常の製造工程とは違う食感を得ている。砂糖の絶対量を抑えながら甘味をより引き立てるには絶好の技といえる。口解けも素晴らしく、豆の風味を残す美味しさはうれしさがこみ上げる。和の趣を感じながら、幼いころを思い出せる風味と大納言の食感に満足。まあ、お好きな人にはたまらない「ぜんざい」だと思う。
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2014/01/07

焙煎で胡麻油の色が変わる

  そこに含まれる成分とか、その効能などを把握することも無く、何が何でも「元気になればよい」と「盲目的にテレビのCMや人の話を信じてしまう」こと、そんなことが加齢に伴って増えてくるのかもしれない。心の底で、信じて鵜呑みにすることの代償として、現状から救われることを望んでいるようだ。それほど、人によって老化は辛いことなのか、しかし、その辛さを受け入れてこそ「陰徳を積む」ことであり、魂の成長なのである。だから、やはり焦らず、冷静に自分を納得させる内容に整理しておく必要がある。また、食べ物で補えるならば、出来るだけ自然な形で口にすべきで、それが純粋であればあるほど「効果も顕になる」と思えるのである。

  老化は体の酸化であるとされ、その酸化を防ぐのに、胡麻に含まれるセサミンが良いと言われてきた。一体それは何なのか、何処にどのくらい存在しているのか知りたい。そこで、胡麻の成分を調べてみた。胡麻の種類によっても多少異なるかもしれないが、51%が脂質、19%がたんぱく質、18%が炭水化物、食物繊維10%、残りの数%が、ビタミン、ミネラル、機能性成分とされている。脂質は不飽和脂肪酸のオレイン酸とリノール酸がバランスよく含まれて、それはオメガ9とオメガ6に属し、日常的に食品から摂取されているものと同じだ。たんぱく質、炭水化物も良質で、糖質も含み、極めて栄養価の高い食材の1つとされる。では、あの「体に特別効くとされるセサミン成分」は、一体何処にあるのだろうか。
  
  残された、おおよそ1%には「ゴマリグナンという特有の機能性成分」が存在するそうだ。機能性成分とは=必ずしも体に必須だとは言えないが、摂取することで健康増進に良い結果を発揮すると説明されている。これが、胡麻のパワーといわれる由縁のようだ。さらに掘り下げると、ゴマリグナンには、セサミン0.5%、セサモリン0.3%、その他セサミノール、セサモール等が微量が含まれているそうだ。やっと、ここでセサミンが登場する。専門筋の記述によると、それは、体の中に入ると肝臓で代謝されて高酸化作用を持ち、老化防止等に有効とされる。また、運動機能の改善も顕著で、微量でも大きな有効性を発揮するとされている。なるほど、この「運動機能の改善が老化で最も渇望されている魅力」といえるかもしれない。そのような、胡麻による効果を実感するには、1日1000粒程度摂取するのが目安のようだ。

  よーしと思っても、毎日1000粒の胡麻をすり鉢で磨り潰して食べるのも面倒である。それなら、胡麻油をそのまま使った方が手軽で応用が広がる。しかも、多くの人が口にしてきた歴史がある製法で作られた胡麻油なら安心である。そこで、老舗の胡麻油会社には何か情報があるに違いないと思えたのである。そこで、胡麻油にも、透明で薫りの殆ど無いものがある事を知った。胡麻は焙煎せずに生のまま圧搾製法で搾ると、透明の液体で薫りの無い胡麻油になる。一方、低温で焙煎することで、搾った油の色が琥珀色に変わり、香ばしい薫りを放つ液体になるようだ。実際の製品でも、その透明の胡麻油の方は何も香らないが、琥珀色の方はとても香ばしく薫る。これなら、日常的に上手に使い分けが可能だと考えられる。炒め物でも食材別に2種類の胡麻油の使え分けが出来そうだ。おまけに、この中にもセサミンが存在しているなら、それはそれで納得である。
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2014/01/03

焼いて食べる あんこ餅

  あんこ餅という言葉の響きには、昭和の良き思い出がいっぱい詰まっている。もちろん、一口であんこ餅といっても家庭ごと様々に食べられてきたが、造り方は手間の掛かるものだった。私が小学生の頃は、原材料のもち米、小豆、三温糖などより良い物を母と祖母が市内を回って調達し、丁寧に前加工して漉し餡、粒餡の2種を準備する。餅は、朝からみんな役割を分担しながら、もち米を蒸して石臼に入れて杵で捏ねながらつきはじめる。おおむねどこのお宅でも母が「合いの手」を担当する。父が「杵をつく」が、杵が石臼から離れている間に、合いの手が張り付いたもち米を臼から剥がし、形を丸く整える。そんな危ない関係がしばらく続き、粘りのある餅が出来上がる。それを、祖母があんこを丸く整形しながら餅で包むのである。もちろん、同時にあんこの無いもちも沢山作られる。そうやって、家族、あるいは親戚などが集まって、みんなで力を合せて作るところが良き思い出となっている。

  出来立てのあんこ餅は、たいへん美味しいので1つはそのままいただくが、当時からそれがもっと美味しく食べられる時期があることを知っていた。それは、時間が経って表面が硬くなる頃である。そこで、練炭火鉢に網を張ってあんこ餅を炙る。しばらく炙っていると、どこからとも無く割れて、中から柔らかい餅が顔を出す。その柔らかい餅が膨らむ時にあんこを伴い、とても美味しそうに見える。大方火が通って餡子成分の甘い汁が垂れ落ちそうになると、あんこ餅を茶碗に入れて、上からお茶を掛ける。餅の固い部分もお茶によって柔らかくなるので、食べやすいし、中から餡子が溶け出して、粒餡だとぜんざい風に、漉し餡だとしるこ風になる。

  父のこのような食べ方を始めて見た時から、そうやって食べるのが大人の食べ方だと思っていた。また、お茶を入れる時のことを考えて、あんこ餅の餡子は大きめに作るよう祖母に頼んだこともある。そんな時「あんたは美味しいものをよう知っとるね」と言われたものだ。今ならもっと美味しいものが沢山あるが、当時としては、それほど美味しいものだったのである。そういう食べ方の出来るあんこ餅をここ50年ぐらい食べていないが、それでも懐かしがることはあっても、同じようなあんこ餅を食べる機会に恵まれることは無い。社会全体として、今では食べたいとも思ってはいけないかのように、あんこ餅に対して、世間一般が拒絶しているようにも思えるのである。あんこ餅は、和菓子屋などで見かけることはあるが、今では、自ら作れるとは思えない。

  今日は、そんな自分にオーブントースターで焼くだけのあんこ餅を買ってきた。3種類のあんこ餅(小倉あん、黒ゴマもち、抹茶もち)が発売されていて、一人こっそりといただけるように、一種類小さく4枚入りになっている。自宅で作っていたような大きな餡子が入った餅ではないので、しるこ風には出来ないが美味しく戴ける。この小さな形そのものも、なかなか好感できる要素で、もう1枚行ってみようかなというのが3回まで続けられるのである。そうやって、膨れ上がった腹と相談できるところが絶妙にいい感じなのである。
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