2012/04/27

アポロ18号


  「お金がかかるから止める」。それは、誰もが納得する言い訳であった。1970年9月にNASAは、アポロ17号を最後にアポロ計画の終わを告げていた。ケネディー大統領が「月へ人類を送り込む」といった計画が、急遽終焉を迎えようとしていたのである。しかし、既に1969年7月にはアポロ11号が月面着陸に成功していた。ハリウッドで撮影したのではないかと言われるほど、月面の鮮明な画像が地球へ送られてきた。1969年11月には、アポロ12号で月面の幅広い情報収集活動にも成功している。ただ、1970年4月のアポロ13号では、途中酸素タンクが爆発し、急遽引き返すことになる。これには、クルーの生還に向けて、世界中が固唾を呑んで見守った。映画にもなった有名な話である。

 そして、1971年にはアポロ14号、15号、1972年にアポロ16号、17号と続く。いずれも、月面での地質調査が主なミッションであった。当時、我々は、「月へ人類を送り込む」の言葉の意味するところを正しく理解していたはずである。したがって、スペースシャトル計画では地球の軌道上に宇宙ステーションを建設し、そこから月へ人を送り込むものと思っていたし、信じていたわけである。だれも、その宇宙ステーションの中で長期滞在することが目標だったとは思っていなかった。それは、アポロ計画は既に成功していて、地球から宇宙ステーションへ、宇宙ステーションから月へ向かう2段構えが、いわゆるNASAの言うところのコストダウンになると思っていたのである。つまり、宇宙ステーションは1つの中継基地の様な役割だと信じていたのである。

 ところが、待てど暮らせど「月面に巨大宇宙基地の建設」などの構想はいまだ発表されていない。我々の世代の月世界や宇宙好きのマニアは、それは何故なんだろうと、漠然と考えていたに違いない。そこに月へ行かない別の理由ともいうべき、1つの憶測が生まれたとしても、それは自然な事だと思うし、むしろ、そこには、もう1つの「誰もが納得する言い訳」があってしかるべきである。それが、今日紹介する映画の意味するところなのである。ふーん。

  映画の内容は、面白いとか、面白くないとか余裕のある状況ではなかった。最初から最後までドキュメンタリー風の作りだから、深呼吸をする暇さえない、延々と1時間40分ぐらい固唾を呑んで見守るとはこのことで、アポロ13号以来の興奮と言えるかもしれない。それくらい、実写なのか、フィクションなのか、あるいはその境目は、どこなのか分からないくらいに作り込まれている。内容は見てのお楽しみなので紹介できないが、パンフレットの一部を参考資料として下記に置いた。興味があればどうぞ。
ではこちら
https://onedrive.live.com/?cid=CFBF77DB9040165A&id=CFBF77DB9040165A%211132&sc=documents&v=3

2012/04/24

スゴイダイズと優しいダイズ


   新製品が出る度に、このブログで取り上げているので、ひょっとしたら、この商品が好きなんだと思われるに違いない。しかし、はっきり申し上げて、商品そのものが好きなわけではない。大塚製薬グループが好きなのである。特に、ボンカレーの時代1965年頃からのファンである。現在でも、大塚製薬と重なるイメージは、「ある田舎の田園風景の中にある」。畑の真ん中にぽつりと建っているお店に、遠くから砂埃をあげてバスが来た。一人の男を降ろしてバスは走り去る。男は砂埃の中でベンチに荷物を置きながら、ふと、お店の軒先を見あげる。すると、1960年代後半に配布されたであろう松山容子さんのホーロー仕上げのボンカレーの汚れた看板をみつけてしまう。「ああ~、ボンカレー食いたい」、そして、その看板の様に、錆びたその記憶を修復しておきたいと、願うのである。うーむ、そんな感じかな。   
  
  最近、沖縄の方では松山容子さんのパッケージのままボンカレーが販売されている事実を知ってしまった。「なんだよそれ、関東でもどこでも、全国で売ったらいいじゃないか・・・今、復活が流行だし」と口を突いて出てしまったのである。そのくらい、長い間販売されて来た商品には、他にはない信頼感である。また、信頼感=食べ慣れた美味しさでもある。長い間と言えば、そうそうオロナミンCだって、いや、オロナイン軟膏だってそうで、若いころからお世話になった製品ばかりである。そして、今日のこのダイズと言うのは、今の自分の体が必要としている食材であり、それだけ、体に良い食品だということは分かっている。問題は、どうやって食べやすい商品に仕上げていくのか、それを見とどけたいし、それが楽しみなのである。

 そんな興味から、新製品が出れば、必ず口にしてみて、「うーむ、まだ青臭さが残っている」とか、「少し甘味が強すぎるとか」とか、ああでもない、こうでもないと屁理屈をこねている訳である。これがまさに古いファンならではの応援気分なのである。かつて、「ミルクのようにやさしいダイズ」を紹介するのに、自ら抹茶を溶かし混んでバームクーヘンと一緒にPDF写真で紹介したことがある(2010年5月)。その時は「やさしいダイズ」と「抹茶」の相性は抜群で、青臭さや苦みが緩和されて、かなりのみやすかった記憶がある。ただ、抹茶そのものは「やさしいダイズに」なかなか溶けなかったし、本物の抹茶を大量に使わないと、ダイズの青臭さも消えなかった。

 今日紹介するのは、同じように抹茶を入れて仕上げた「ミルクのようにやさしいダイズ」と、さらに食べやすくなったヨーグルトタイプの「スゴイダイズ」である。前者の、抹茶味は、私の好みよりかなり薄味仕上げで、飲みやすさは良いとしても甘味が強すぎる感じである。これは、バナナ味やイチゴ味と同じ甘味なので、それなりに、ちゃんと計算づくの甘味のようである。後者のヨーグルトタイプのスゴイダイズは、青臭さが潜む渋みがかなり減った。良く冷えていると、味も香りも全くヨーグルトそのものである。かなり食べやすくなった感じである。口にするときの温度は重要な要素になっている。あと、以前のカップタイプは寒天で固めてあったが、新製品は流動性のある黄色になっていて、蓋を開けるときには、力を入れ過ぎてベトッと飛ばないよう注意が必要である。
ではこちら
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補足1:松山容子さんは、当時、今でいう「暴れん坊お姫様」といった感じの役で、テレビで人気の女優さんであった。きっと、そんなことを思い出すおっさんは多いのではないかと思う。大塚製薬とはそういう、自分と密接に時代を重ねてきた会社なのである。
補足1:商品の備わっている効能などは、大塚のホームページを参照されたい。

2012/04/20

混ぜご飯の素


    決して得意分野ではないが、炊き込みご飯は、元々好きなので過去にも幾つか紹介したことがある。これらは、牡蠣飯とか、帆立ご飯とか、あさり飯などで、味も最高である。ただ、じっくり取り組む時間は無いので、既成品と生の素材を混ぜるなどして完成させるのだが、先行きは全てオリジナルを突き詰めていきたい。そのための準備として、よく切れる包丁を購入したり、超贅沢な出汁の素を試してみたり、今日紹介する商品の様な、既成品をしたたかに検討材料の1つとして試しているのである。

 料理は、レシピを真似れば早い成果に繋がると考えがちだが、それでは面白みがない。何でもそうだが「パクリで済ませると人生を貧弱にする」。やはり、既成品を超える独創性を見出してこそ、喜びが沸き上がり、さらには次への挑戦気運が高まるのである。とまあ大袈裟な話にするつもりはないが、既成品を使うのは、あくまで参考資料としてである。様々な既成品を口にし、自分なりのものを模索するのである。例えば、私のような広島県人は牡蠣飯は、さぞかし拘って作るのだろうと思われるかもしれないが、本醸造の醤油と昆布だしと多めの牡蠣だけである。ただ、牡蠣は寒い場所で採れる牡蠣に限る。最近は特にそう感じる。やはり三陸の牡蠣がよい。あえて、広島県の中で抽出するならば倉橋島の牡蠣を使いたい。地元ならではの個人的な見識なのである。今年は三陸の牡蠣が採れなかったのが残念であった。

 この本醸造の醤油と昆布だしと多めの牡蠣という単純な作りは、素材の味が強いので、若いうちは、これで完璧と悦に入っていたわけだが、歳を重ねるともう少し幅の広い豊かな感じに仕上げたいと思う事がある。そうなると、海の素材か、山の素材か、畑の素材か何か組み合わせてみたいと考えるわけである。そこで、同じ海で採れるものを組み合わせて味のトーンを揃えるか、あるいは、山のものと組み合わせて、絶妙な味に仕上げるか、同じ時期に採れる畑のものを組み合わせて、少しぼけた感じに仕上げるか、理屈では無限の可能性が広がっていることになる。

 今日は、そんな教材の1つとして「ほたてごはんの素」と「あわびごはんの素」を紹介したい。温かいご飯に混ぜるだけで出来上がるのでいたって簡単である。いつも驚くが、どういうわけか、この手の海の素材を加工にしているにも拘らず、山梨で作っているケースが多いのである。商品はパックが2個セットになっていて、パックのシールをはがすと、ジェル化したごはんの素が現れ、そのままつるっと取り出し温かいご飯の上に乗せてかき混ぜる。これだけの事であるが、ジェル化しているのでこぼれもなく操作性がよい。両者とも様々な山海の素材とエキスを組み合わせて味をまとめあげている。個人的な好みは別として、こういう味作りは、素人には簡単に真似できるものではない、やはりプロの技の領域なのであろう、甚だ感心するばかりである。また、この商品の最大の特徴は、いつでもどこでも「温かいご飯さえあれば」すぐに作れるところにある。 
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2012/04/17

オランジーナ


     テレビから寅さんのテーマが流れ、我々はそれに吸い寄せられるように耳を傾ける。そんなはずもないのに、寅さんが帰ってきたのかと、いつものイメージが浮かぶのである。そして、勝手にストーリーを思い出すのである。そこには、寅さんと関わり合う人たちが次々と登場する。あるときは、寅さんの憧れの人であったり、悩みを抱えた人、あるいは、自分だけが不幸をしょっているような人、今回はどんな人が登場するのかな?「美人だと楽しいな」と思うわけである。そして、その人達が寅さんの家族に癒されるのが主題である。それは決して偶然ではない。寅さんを待っている家族の想いが募る頃に現れ、そこに待ちうける愛情は、寅さんにではなく、客人に注がれてしまうのである。そこには、我々がいつも追い求めている温かい家族の淡々とした映像が繰り広げられる。だが、寅さんはそこに安住することなく、再び旅に出てしまうのである。うーむ、格好いい!

 フランスの国民的炭酸飲料のオランジーナと、寅さんがどう結びつくのかよくわからないが、「愛と青春の旅立ち」「プリティーウーマン」など著名な作品に登場したリチャードギアが、あたかも寅さんのような姿で、オランジーナというジュースを四角い鞄に入れて戻ってくるという演出は、1つ1つのシーンにフランスの田舎が、美くしく収められている。また、少し老いたリチャードギアであることが、戻ってきたという印象を強め、今なお伊達男としての健在ぶりを発揮するシーンに、老いて更に磨きのかかった格好良さが漂うところが嬉しい。そのリチャードギアとフランスの田舎の風景の組み合わせが、寅さんのイメージを世界的規模に広げ、今まで以上に輝かせるに違いない。それが、オランジーナという炭酸飲料の美味しさのイメージに繋がっていくのであろう。

  さて、実際にそのオランジーナを口にしてみると、もはやCMに洗脳されているのか、「おおーっ」と少し甘めのオレンジ炭酸が広がる。まさに舶来の味なのである。地中海沿岸の温暖な地域で、柑橘系の果物がたわわに実った情景が自然に浮かぶ。オランジーナには、様々な柑橘系果実の薫りや酸味が混然一体となっていて、嫌みのない微炭酸が加わり爽やかな刺激を強めている。そして、程良い甘味がどこか懐かしく幸せな気分にするのである。そうやって、舶来に弱い持ち前の感受性を一挙に埋め尽くすような、爽やかな刺激を喉越しに感じてしまったのである。普段は、このようなファンタ・オレンジ風の炭酸飲料は飲まないが、このオランジーナのもつイメージは気持ち良く爽やかなのである。

 柑橘系果汁は、味に飽きが来るのが早いので、愛用され続けるのは難しいとされてきた。そこに、微炭酸と柑橘系果汁の混合と言う複雑な味を構成することで、飽きの来づらい商品に仕上げている。もっとも、市場にある柑橘系飲料は多種多様で、消費者とすれば1つの商品にこだわる必要性も感じないために、メーカーとしては商品の導入に際して、それなりのイメージ作りが大切であったということなのであろう。価格は標準で140円、だが安いところでは88円で販売されている。こういうイメージ作りと価格戦略を上手に組合せることによって、労少なく一挙にマーケットに浸透させる腹づもりらしい。
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2012/04/13

マルちゃん正麺


    麺業界で、マルちゃんほど面白く変ったCMを提供する会社は他にない。赤いきつねと緑のたぬきの武田鉄矢、榮倉奈々さんは、古くはハチャメチャな感じであったが、最近は格調ある雰囲気でまとまってきた。商品に歴史もあるし、知名度も高い、おまけに売れているので、多少遊びを含んで余裕さえ感じる。個人的には、真矢みきさんの面白い展開が続く「麺づくり」と「屋台十八番」のCMが好きだ。真矢みきさんの人柄というか芸達者な感じがよく出ている。宝塚出身の人たちは活躍の場が広く、東芝の天海祐希さん、金麦の檀れいさんなども絶好調である。「昔ながらのソース焼きそば」には、タカアンドトシが起用されているが、残念ながらどこが面白いのかわからない。

    奥ゆかしさの中に、秘めたるメッセージを織り込むといった旧来のCMから、最近は、ストレートで分かりやすく、おまけにあつかましくも、短いメッセージでまとめるという傾向が色濃く打ち出されている。「嘘だと思ったら食べてみてください」と言う、役所広司さんの口を突いて出る言葉にも、その一端を垣間見ることが出来る。このシリーズには他にも、「食べ終わってお礼を言う」とか、「美味い美味いと3度、ある時は4度言う」とか、「マルちゃんが無いと機嫌が悪くなる」とか、「お客のもてなしに、鰻からマルちゃん正麺に変えた」とか、かつて無いほどの幅広いバリエーションを用意して、微妙な美味しさの攻撃をしかけてきた。最近の「鰻からマルちゃん正麺に変えた」は、ずいぶん抵抗を感じるが、鰻好きの人は少し気になるに違いない。

    一方、CMではないが、電子レンジでチンをして、水でほぐすだけの麺道楽という商品がある。そば、うどん、そうめん、中華めんと4種類揃っているが、この「麺道楽」のネーミングの由来は、お鍋で麺を茹でなくても良いから、面倒になるというもので、それを「どうだ!面白いだろう」と押しつけられても、我々としては考え込むしかない。それより、麺道楽の麺と従来の手順で作られた麺の食感や喉越しの違いを「綾鷹のように、一般消費者に街頭で」比較してもらいものである。まあ、CMにしても、このネーミングにしても、人の心をどのようにして掴むかという点においては、ひどく拘りを感じるわけである。

  東洋水産㈱が、有名になったのは、赤いきつねと緑のたぬきの1978年からである。他方の好敵手ともいえる日清食品の「どん兵衛」は1976年からである。この即席麺における「仁義なき戦い」を繰り広げてきた2つの商品は、まさに、我が青春の胃袋を満たしてくれ、高度成長時代を牽引した商品なのであるが、「どん兵衛」の目先を変えて次々と新商品を投入するのに対し、マルちゃんは、あくまでも麺と厳選された出汁にこだわり続け、「どん兵衛」より、それは常に一歩リードしてきた。そんな東洋水産㈱が、決定的なネーミングの「正しい麺=正麺」として登場させた商品は、誰でも少々興味深いに違いない。

  そんな足跡からか、この「マルちゃん正麺」を歴史的な偉業の1つとして写真を撮っておきたい。そこで、苦慮するのが実物の麺の上に添える具材の種類である。そこには、その人が歩んできたラーメン好きとしての拘りが如実に表面化してしまうからである。今日は、味噌味を取り上げるが、北海道系の味噌ラーメンの代表的な具と言えば、焼き豚、メンマ、茹で玉子、ネギである。安っぽく感じられるせいか、最近はコーンがめっきり影を潜めてしまった。それでも、ラーメンの上に具をたくさん載せると栄養豊かに見えるが、味がぼけてしまい、本来のマルちゃんの良さが出ないことになる。そこで、写真用として少し強調感は出ても、味噌との相性に配慮し、「帆立のバター炒め、コーン、かいわれ、なると」 全て少量という形でまとめてみた。麺はかなり太い乾燥麺で、お湯で4分と早く茹だる割には、食べ応えのあるモチモチ感に驚かされる。また、しっかりした太麺の喉越しがとてもいい感じである。これを「生麺うまいまま製法」といい特許出願中らしい。
ではこちら
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補足1:昔ながらの図柄が浮き出る「なると」は少なく、入手が難しくなった。今日の「なると」はそれでも、まあまあ気に入っている。どうよ。
補足2:東洋水産㈱が推奨している味噌味の具は、少なめのベーコン角切りとキャベツ、コーンとネギのようだ。あくまで少なめに拘りがある。

2012/04/10

野川の桜を撮る


    週に2回も「甘い物」を扱っていると、それにしか興味がないかと思われるので、時たま調布市の見どころを載せたいと思っている。しかし、5年目にもなると、既に出し尽くした感もあり、自分の気持ちの上ではとっくに飽きている。しかも、ローカルな話題なのに、全く同じような写真を毎年同じ時期に載せるのも、いかがなものかと考えるわけである。しかし、大概のところは、撮影してあると自信を覘かせてみても、写真好きの人からは、もっといい場所があるのではないかと言われることもある。確かに、そのような拘りと言うか執念にも似た視点は希薄だった。撮ってあるよん~では駄目なのかもしれない。

  そういう反省を踏まえ、今日は桜でお茶を濁そうと思う。日曜日のお昼過ぎから、いそいそと野川沿いに出て、桜並木の方角に向かって歩く年配の人達やら、子供づれ夫婦らの列に加わる。思った以上に人の列は長く続いていた。昨年は、東日本の震災の影響で自粛ムードが広がり、川沿いは人出もまばらで、全体的に殺風景だったような気がする。ところが今年は、一転し河川敷でバーべキューをしたり、カラオケで騒いでみたりと、すっかり楽しそうな雰囲気が戻ってきた。久々に、屈託のない笑顔と楽しそうな人の姿を見たような気がする。それにしても、どこから湧き出てくるのだろうか、年配の人が多い。

   調布のお薦めコースは、京王線調布駅から、まずバスで神代植物公園へ直行し、正門から入場し一通り散策して、東門から退場する。そこから僅か数十メートルで深大寺へ降りる、深大寺と言えば蕎麦、蕎麦と言えば門前の粗引き蕎麦。蕎麦を食べたら、おみくじを引き、結果によって楽しみ方を変える。何といっても末吉以上なら腹ごなしに深大寺温泉へ入浴する。一汗かいたら、野川に出て甲州街道まで夜桜を眺める。そして、もう少し足を延ばして京王線国領駅へ出るというのが一番楽しいコースになる。末吉以下の場合は、運を使い果たさないように、そそくさと深大寺バス停前から調布駅行きに乗って帰り、日を改める。

 今日のPDFは、その深大寺からの調布に抜ける道が野川と交差するあたりから、甲州街道と交差するまでの650mほど続く桜並木で、撮影したショットは、調布市 八雲台2丁目近辺になる。ここは、人通りが比較的少なくカメラを構えやすいが、望遠系レンズが必要なので敬遠されがちである。桜の撮影でわずらわしいのが、僅かな風で花をつけた枝が、いつまでも振動のように動き回り、静止しにくいところで、ならば高速シャッターを使いたいが、それぞれの枝の間隔とか奥行きもあることから、F5.6~8 程度の被写界深度も必要になる。出来れば、この時期は撮影に風のない日やあるいは時間帯を選びたい。
ではこちら
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補足:神代植物園の夜桜はこちら2010年4月10日の再掲になる。こちらは、EF17-35mm F2.8L にて撮影。
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2012/04/06

桔梗信玄餅


  この信玄餅を口にするたびに思い出すのが、「武田信玄は、息子が茶漬けの湯を途中で足すのを見て、 自分の食べる湯の量さえ分からないのに、偉い武将になれるのか」と、落胆したという話である。それを聞かされてから、お湯を使う食事に関して、子供心に慎重に対処するようになった記憶がある。この「いい案配」を予測することは、確かに、この世の中にたくさん存在し、最近は「経験済み計画性の中からこそ正確な予測が出来る」として、経験豊かな事でも慎重に取り組むように心がけている。しかし、果たしてそんな面白くない人生でよいのか。

  武田信玄は、武将として多くの「名言」を残しているが、一種独特の身近な笑いにも通じるような庶民的な「明言」も残している。たとえば1例として、「自分の学んだことをひけらかしたり、自慢する必要はないとする人が、真の知恵者である」とか、あるいは、「人は遠慮の二文字が肝要である。遠慮さえあれば分別にもなる」とも説いていたり、今でも通用する納得感のあるものが多い。この2つを、もう少し現代調に書きなおすと、さしずめ、この「自分で学んだことをひけらかす行為は、同時に自分の理解度をひけらかすことにもなり、たいへん危険な行為である」と説きたいし、人生は「遠慮」ばかりしていても埒が明かないので、別の視点から「人は謙虚のニ文字が必要である。謙虚さえあれば組織に馴染みやすい」と説きたい時もある。そんなことを、最近身近に感じることがある。

 餅を食べる前から、喉がつっかえるような話をしてしまったが、今日はこの武田信玄公のお名前を拝した信玄餅2種を比較してみたい。まず、本来この信玄餅の「戦いの場」での食べ方は、ビニールの風呂敷包みに、容器に入っている3個の餅を全て広げ、その上から黒蜜を掛けて、きな粉と混ぜたり、混ぜない部分を残したりしながら餅につけて戴くというのが、「それがし」の考える流儀かもしれないが、最近メーカー側は食べ方について、「容器に入った3個の餅の真ん中の1個を持ち上げ、そこへ黒蜜を注ぎこみ、きな粉と混ぜて戴くように」と推奨している。いずれにしても、きな粉をこぼしたり、鼻息で飛ばしたりしないように注意が必要なので、個人的には、上の写真のように大きめの器で戴くのがお薦めである。

 この信玄餅2種(上写真右が吟造り)の比較をすると、「吟造り」は、1.餅は、餅米の違いによる、風味、甘味、柔らかさが異なる。2.きな粉は、丹波の黒大豆のきな粉を使い、薫の高い香ばしさが際立つ。3.黒蜜は、山梨県産のアカシアの蜂蜜を加え、甘さを抑えた味わい深い蜜になっている。等、幾つかの違いあるらしいが、それらが混然一体になって、より上品で奥深い味わいを醸し出す信玄餅「吟造り」になっている。しかし、「吟造り」の薫高い高級感は、「客人向けとしては美味しい」とは思うが、個人的な好みをあえて云わせて戴くならば、餅の硬さや食感、あるいは黒蜜との相性としては、通常の桔梗信玄餅の方が満足感が高い。ま、簡単に申し上げれば、「食った気になるのは」普通の信玄餅ってことなのである。
ではこちら
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補足:信玄餅は、武田信玄公が活躍されていた室町時代から、あたかも戦いの場で信玄公御自身が口にされたような雰囲気とネーミングだが、昭和43年のごく最近の発売である。

2012/04/02

オーディオマニア25



     たまに昔の仲間が集まると、オーディオ談義が始まることがある。既に気持ちの上では整理し尽くされた世界なのだが、Hi-Fi が生活の一部として今でも日常化していると、どうしてもその再生装置のことやら、何十年も試行錯誤を重ねて来た「自分の追い求める音」と言うものを話してみたくなるのかもしれない。私のスピーカも30数年とよく働いてくれたので、今度、全てのユニットとネットワーク部品の交換をしたいと考えている。そんな話を出すと、「音のイメージが変わってしまい、新たな課題を背負い込むから止めたほうがよい」と指摘を受けてしまった。しかし、当初からの計画でもあるし、準備のためのコストも掛けて来ているので、不安もあるが当時の原稿を読み返しながら記憶を辿って、ブログにその後の続きを整理してみようと思う。そうでもして歩みださないと、交換用ユニットや関係部品を残したまま、私の方が先に寿命がきてしまう可能性もあるからである。

  そんな流れから、現在も音出しに使っている「3ウエイSPシステム」を紹介したい。外観は、上のタイトル写真の通りで、ウーファ(ミッドバス)がLo-D (日立製作所)L-205、スコーカとトゥイータがYAMAHA(日本楽器製造)のJA-0870とJA-0572である。実験的に更なる高域再生を試みてテクニクス(松下電器産業)のリーフ・トゥイータやパイオニアのリボン・トゥイータを接続してみた。これらを何回かに分けて紹介する。

 キャビネットは、2つに分かれていて、上部4/5に各ユニットを円形配置してあり、音響中心はキャビネットの中心、同時に、スコーカとトゥイータは縦に並べて配置し水平方向の指向性を改善している。内部空間体積は約75リットル(吸音材充填後で65リットル)である。通常50リットルの容量でL-205は、F0c=40Hz で Q0c=0.5 となり臨界制動になる。しかし、先行きスーパーウーファの接続を予定していたので、キャビネットは、やや大きめに設定し F0c=34 とQ0=0.36 程度に下げておきたい。キャビネット内部には、ユニットに関連するピークコントロール回路、定低抗化回路等を収容している。アッテネータL082は、スコーカ用とトゥイータ用をそれぞれ前面に配置した。一方、下部1/5は低、中、高の分割フィルタを収容した引き出し構造になっていて、内部は各部品をマウントした基板が収まっている。これによって、帯域分割フィルタの定数変更も容易に出来る。

 キャビネットの板の厚みは全て30mmで、背面バフルは壁に密着できるようにフラットを実現し内部を補強している。各ユニットはフレーム部がキャビネットのバフル面に沈むように、バフルに座ぐり処理をして中高域周波数特性への影響を抑えている。引き出し手前には2pin のキャノンコネクタを配置し、パワーアンプに接続している。キャビネットの製作はフォステクス、引き出し部には建具屋職人さんの手を借りている。前面部の塗装指定は、黒のつや消しだったのだが、製作関係者の言葉を借りると、「黒のつや消し仕上げより、米松の付板の方が綺麗なので、側面と同じ付板仕上げにし、気に入らなければ自分で塗装してください」とのことであった。以降、そのまま30年それを尊重してきた。

 さて、今回はウーファL-205を中心にまとめる。設計者である日立製作所の河村信一郎さんは、ある日、編集部に手みあげにアイスを持ってこられて、一同それを食べながらSPユニットにまつわる苦労話を聞いた記憶がある。L-205は、我々の様々な実測データでも特別優れた性能を備えおり、それを作った人だということで、我々は無意識のうちに崇拝していたのである。その従来からの改良の多くは、世界的な特許で固められていたので、ブレイクスルー的な価値の高い苦労話になっていた。それを、一言も漏らさず記憶に残したいと願っていたのを思い出す。その代表的な幾つかの特許を記憶から列挙しておきたい。
 続きはこちら。
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%211121&app=WordPdf

補足1:サンドイッチメタルコーン(日、米特許)、ギャザード・エッジ、ギャザード・スパイダ(日、米、英、西独特許)、Lo-D アクチュエータ(日、米、加特許)ほか。
補足2:上の見出しは、1983年「ラジオ技術」本誌に掲載した時のタイトル。撮影は無響室の中、測定用マイクはB&K1/2インチ使用(右)。リボン・トゥイータを取り付けて視聴中が左の写真。
補足3:引き出しにネットワーク回路を搭載したスピーカ・キャビネットは世界で初めてである。やはり使いやすく、今でも自慢できる機能の1つである。