2011/07/31

IBM eServer 336

 前回の4Uに対して、今日は、割と最近の1Uの薄型サーバーである。内部に実装する部品が小型化されると、必然的にこのような形になるという、一種の進化を感じさせる構造である。稼働中の音も4Uの「ゴーッ」と鈍い音から、「キーン」と戦闘機の排気音のような高い音に変わった。スペース的に高さは1/4になり、同じスペースに4台積み重ねることが出来るが、この高い音に嫌気して同じ部屋で長時間作業するのは辛いというチェンジニアは多い。そこがこの1Uサーバーの決定的弱点だが、質量が比較的軽量なのでメンテナンスやシステムの入替えには都合がよい。車両から降ろして一人で遥か彼方のサーバールームまで、小脇に抱えて移動できる便利さは、何物にも代えがたいと思える程だ。また、同じ性能なら、使用するスペースが1/2、1/4、1/8など、どんどん省スペースになるので、システムインテグレータには色々と都合がよい。

 この1Uサイズサーバーへのディスク装着は、2/3インチサイズなら、おおむね2本は入る。1/2インチサイズなら最大4本と決まっていてパラレル、シリアルを問わずSCSI または シリアルのATA が使用できる。どうも、実績から来る信頼感とは、そうたやすく新たなディスクを採用されるものでもないらしく、現在でも相変わらず15K U320ディスク2本入りで稼働している例も少なくない。さて、今回のこのIBM eServer 336は、シリアルATAディスク2本をブートに使用しミラーリングしてある。外部へは、SCSIのPCI カードのServe RAID6M を経由してEXP-400と組合わせることも可能になっている。たとえ、薄型サーバーでもPCIスロットの数が許す限り柔軟に1人前の仕事をこなすことが出来る。その他の接続可能な外部ディスクシステムとして、PCIホストアダプタを介してファイバーチャネルのDS-400、iSCSIのDS-300(スイッチモジュールを経由した接続)なども使用できる。

 CPUは、3.6GHzのX-eonを最大2個搭載している。また、後日、デュアルコアを装着したモデルもラインナップされた。その程度の古いモデルである。CPUの後部には、DDR2 PC2-3200 Chipkill RDIMM用のメモリースロットが用意され最大16GBまで増設できる。PCIスロットは、2本用意され、PCI-X スロット1がハーフサイズの64bit-100MHz-3.3V 、PCI-X スロット2がフルサイズの64bit-133MHz-3.3Vである。585Wのホットスワップ電源ユニットが最大2個挿入している。その他、背面入出力端子には、イーサネット用2口、キーボード、マウス、USB 2.0 2口、シリアルポート、モニター出力等と一通り揃っており、用途を問わず誰にでも使いやすい。

 保守点検用には、例のリモート管理用のアダプター の小型版であるリモート管理アダプターII SlimLine x が装着できる。これによって、24時間フルタイムのリモート・アクセスを提供する。そこで、リモート管理アダプター II SlimLine 導入時に気をつけることとして、Windows2000の下で使用する場合は、Windows2000の導入を終了した後、デバイスマネージャーの中でキーボードのデバイスドライバーを"English 101/102 Keyboard"から"Japanese 106/109 Keyboard"に変更する必要がある。この変更はServerGuideを使用してOSの導入を行った場合も例外ではない。

 まとめると、IBMのX86 PCサーバーは、本体の種類が豊富に揃っていて、使用するディスクや導入目的が決定さえすれば、本体が必然的に選択される。つぎに、多種なPCIのボードや多様な周辺機器を組合わせてハードの構成を完成できる。そして、最後にServerGuideでソフトの導入を完了するといったプロセスで、何も苦しむことはない。つまり、機種決定から導入・構成までを誰にでも簡単に実現できるという、専門的な知識を用いないでも、手順さえ間違えなければ 「今日からあなたもITエンジニア」といった感じである。また、6年間の保守契約を締結することで、障害発生時にも、障害の解決のための納得のゆく説明に留まらず、システムコンサル的な要素にまで親身になって支援してもらえる。また、稼働中の障害発生頻度も極めて少なく遠方で監視するには都合がよい。
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補足1:ServerGuide:OS導入用に作られた専用ガイドCDで、IBMのデバイス用にOS別にドライバーソフトを保存してあり、導入時にOS毎に必要なドライバーを適用したり、ユーザサイドで構成する要素を選択するだけで実装を完了するなど、素早く希望のOSを導入できる。勿論、OSディスクは同時に用意する必要性がある。

2011/07/27

SUN Fire 280R

  どのような昔話にでも、現在に繋がる接点がある。・・・・それにしても、今後は、4Uサイズのサーバーの内部なんか、もう覘くこともないだろう。そこで、今日は、そんな分厚いサーバーのゆったりとした内部を撮影してみた。もちろん、奥の部屋から発掘された製品である。このサーバーの中には、大型のファンが3基も稼働していて、常に「ゴーっと鈍い音」を出している。近づいて手をかざしてみても、あちこちで張り付きそうになる。そのくらい、この時期のサーバーは、冷却に力が注がれていたのである。背景には、少しでも高い周波数でCPUとそれを取り巻く周囲デバイスをドライブし、熱くなった筺体内部を強力なファンで冷却するという、常に危ういバランスで動作する仕組みだった。それでも、その稼働期間は、次のリプレイスまでのおおよそ8~9年と長いので、システムとして、熱的にはかなり余裕を持って設計されている。

補足1:オーディオ機器やコンピュータのラックは、EIAの規格品が使われる。幅19インチ=約482.6mm、高さ1.75インチ=約44.5mm のことを「1U」=1ユニットと呼んでいる。4Uサイズは、この高さの4倍=約178mmになるように設計された筐体のこと。

 PDF写真では「黄色いシールの上に黒いファンのマーク」が描かれているスチールの下に直径12cm 程度のファンが3基並んで回転している。中央のファンが、2個の青いCPU Module を専門に冷却していて、他の2基より強い風を送り込んでいる。向かって左側のファンは、大型の8GBのメモリーボードを冷却し、向かって右側はRASボードや64bit PCIボードを冷却している。CPU Moduleは、1.2GHzのULTRA SPARC ⅢCu  で 64bit  RISCアーキテクチャを実装している。Cu とは銅配線を使用して、高いクロックによる耐熱性にも優れる仕様であることを示す。また、CPU Module内部には8MBの高速SRAMによる2次キャッシュを備え、当時としては贅沢な構成で、かなりパワフルなCPUであった。今でも、Solaris 8/9/10 では、優れた実力を発揮する筈である。

 補足2:SPARC→スパークと読むが、「?発泡する」ではなく、Scalable Processor Architecture の略である。SUN Microsystems, Inc.(以降SUNと略す)が 開発・製造しているCPU(RISCベースのマイクロプロセッサ)のこと。頭にULTRAが付くとSUNが製造する64bit SPARCで、SPARC 64と後ろに64が付く型名は、富士通が製造してSUNに供給している64bit SPARCである。

  CPU Module 以外にもいくつか特徴がある。1つは、サーバーが電源供給障害に見舞われてシステムダウンしても、30分程度ならイーサネットやモデムを使って外部から侵入し、再起動、リセット、電源投入はもとより、POST Open Boot 診断、ブートログ、実行ログ等を収集できるRSCカードを標準で搭載していることで、勿論、これは、従来のSun Management  Center、Sun VTS、kadbカーネルデバッガ、OpenBoot PROM、OpenBoot Diagnosticsなどの既存の監視や診断ツールを補う形になる。そしてもう1つ、FC-ALコントローラを搭載し、内部ディスク2台のFCループへのコネクトをはじめ、外部ポートを介して同じループにアクセスすることが出来る。これには、本体背面に設置された銅製のHSSDC (High-Speed Serial Data Connector)を使用する。つまり、外部のディスクと内部のディスクを連結したり、一緒にRAIDのシステムを構築することも出来る。外部ポートは、Stor Edge Multipac -FC 、StorEdge T3 Arrays をサポートしている。A5000シリーズへは、StorEdge Dual-Loop PCI FC/AL アダプタを介して接続する。

 Fire 280Rには、まだまだ当時としては先進的な試みが数多く搭載されていて、いずれも掘り下げて調査することで、多くの発見があると当時は目論んでいた。先で時間的余裕が出来たら、じっくり検証してみたいと思う気分になったものである。しかし、今となっては、あくまでも趣味でないと出来なくなったし、単純に知識が増えることに喜びを感じる事が出来るかどうか自信がないのである。また、知識が広がり、その連鎖で整合性が高まるにつれて、やはり、それらを使用して新たなサービスを展開しないと、自己満足に終わってしまい、社会性という点において寂しいものを感じる。それもこれも、SUNという会社がなくなってしまった現在では、懐かしがるだけで、まったくそのような気力を失ってしまっているのである。

 さて、まとめると、現在のサーバーにおける最低条件でもある、Reliability、Availability、Serviceability つまり、システムとしての信頼性、可用性、保守容易性は、既にこの時期にSUNによって基礎が築かれたといっても過言ではなく、その先進性が同社の最大の魅力でもあった。かつてのSUNは、全世界のサーバーの90%を占めていた時期もあり、優れた性能を実績という形で証明してきた。一方で、社会貢献でも高い評価を得ている。そして、多くのエンジニアやIT志望の学生から、将来を存亡された企業であった事は言うまでもない。2009年SUNが買収されると報道された時、誰もがせめてIBMにと考えたに違いないが、残念ながら、オラクルというつまらん会社に買収されてしまった。それによって、SUNのDNAは徐々に実体が消滅することになる。そして、長年サーバーやワークステーションなどに携わってきた初老達の心の中で、SUNというブランドイメージだけが生き続けることになるのである。
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補足3:CPUの上にある白いケース(緑の縁取り)は、CPUの着脱に関する注意点を書いた書類を収容している。さらに、サーバーの前面方向にある緑の冶具はCPU専用の着脱用ドライバーになる。実際に白いケースを開いてみると、CPUを外す時は、その専用のドライバーを使い、左右のねじを均等に緩めながら、垂直に持ち上げるように、あるいは、装着するときも同じように、と注意が残されている。CPUの長い寿命に特化した配慮と言えよう。
補足4:誰もがせめてIBMに:最初の報道がIBMであったためである。2番手企業は想像すらできなかったが、日本の詳しいユーザーは、SUNへSPARC64 CPUを供給したり、SUNからサーバー製品をOEM供給してもらっている富士通が買収にあたるべきだと考えたようだ。
補足5:6月20日、世界一になった日本のスーパーコンピュータ「京」は富士通製で、使われている68,544個のCPUは、同社のSPARC64 VIIIfxである。

2011/07/23

SUN StorEdge A1000/D1000

  再び重たい装置の発掘になった。だいたい、このような、サーバーとか、ディスクアレーのような製品は撮影にも一苦労するし、片づけも進まない。発掘されるものは、どこかで必ず同じものを販売した経緯があって、タイムアップしたからさっさと廃棄したいと思うが、そうも出来ない状況なのである。したがって、撮影後はそっと、再び元どおり放置されることになるだろう。ここまで古い機材に関して、さほど役に立つ話はないと思うが、万が一にも困ることがないように記憶を整理しておきたい。今回も、RAIDを構成できるディスク装置である。RAIDは、集められた複数のディスクに対して、ファイルを指定されたサイズで分割した後、パリティーを付加して、それぞれのディスクへ分散して書き込む。それによって、ディスクシステムとして信頼性を確保しながら高速性を実現するものといえる。

   サーバーと連携して動作するディスク装置は、同時期のオペレーティングシステム、インターフェイス・カードなど、関連する周辺も一緒に確保しておく必要がある。このA1000の場合は、インターフェイス・ボードの中には、RAIDのパリティ演算を行うプロセッサやメモリーなどが搭載されている。この部分の設定はサーバーから行わなければならない。まず、Solaris 8 (7/01)が動作する当時のSUNのULTRA SPARC サーバーと、ディファレンシャルSCSIカードX6541Aを整備しておきたい。RAIDの構成には RAID Manager 6221が必要になる。勿論、そのパッチ、最新版ファーム等も必要だ。ところが、D1000の方は、SCSIインターフェイスが内部で並列になっているだけなので、おおよそ、どの種類のサーバーにでもULTRA2 SCSIのみで連結出来るディスク装置である。

  あの頃は、ディスクが壊れるのは日常的なことだったので、ホットスペアを用意して対処してきた。A1000 / D1000 ともにサポートSCSIは、 ULTRA 2 だが、ホットスペアとしてはその上位のULTRA160 / 320まで使用できる。ただし容量も同じで、回転数も同じ、その前にSUNの認定(SUNの部品番号表記)でなければならない。キャビネットは前面からディスクを最大12本挿入できる。もし、空きスロットが出来た場合は、必ず硬い発泡スチロールで成形された「ディスクと同じ形状のダミー」を装着することを忘れないように。背面からは、電源ユニットが2基、冷却用の大型ファンが2基、そしてA1000にはRAIDカード、D1000にはSCSIカードが挿入されている。これらの内部構造はStorEdge D2と全く同じで、違いを探すと、挿入されるディスク(ULTRA160)と前面扉のデザインのみで、コンストラクションは全く同じである。PDF写真のRAIDカードは、アルミフレーム、バッテリー(手前の切りかけ部分に入る)などをはずして主要部品だけにしているが、これは、フレームとカバーを取り外し、CPUやメモリーが見えるようにしたもので、それらの補修部品は、保守期間7年間で1度も使用することはなかった。ただし、バッテリーは2年に1度必ず交換してきた。

   D1000を使ってRAIDを構成するには、DiskSuite、Volume Manager 等が使われる。これらのソフトを使用すると、D1000ではアクセススピードにやや問題があるにしても、スピードを要求しなければ、今でも問題なく使用できる。RAID5はもとより、ミラーリングやストライピングも構成できるので、OSを導入するシステム・ディスクのミラー構成にも DiskSuiteやVolume Manager が使われる。現場へ出掛けてサーバーのメンテを行うチェンジニアの人たちは、A1000の障害ならばディスクを交換するだけで済ませられるが、D1000やシステム・ディスクの障害には、状況によっては、この2種のソフトを柔軟に使いこなす必要があり、今だに面倒な作業を強いられている。

   PDF 写真は、左上がA1000のキャビネット。中央部がA1000用のRAIDカード、最下部がD1000用SCSIカード。写真はないが、ディファレンシャルSCSIカードX6541Aは、サーバー側のPCIスロットに導入される。忘れないように確保しておきたい。
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補足:インターフェイスとしての最大転送速度: ULTRA2 SCSI = 40MB/sec  ULTRA2 WIDE = 80MB/sec  ULTRA 160 =160MB/sec  ULTRA320 = 320MB/sec  あくまでも瞬間最大値。一般的にディスク単体では、15K の ULTRA320TYPE で、シーケンシャルリード・ライトで平均データ転送速度はおおよそ 70MB/sec 程度である。しかし、ULTRA160 / 320等の優位性としては、SCSIコマンドの送受信の速度が瞬間最大値あたりまで向上しているところである。

2011/07/19

まい泉のポケットサンド

 暑い日に遠出の撮影にでかけるのは億劫である。暑いから水分ばかり採ってしまい、肝心なお昼の腹ごしらえに困る事が多い。昔なら出先の中華食堂などで「おばちゃん、冷やし中華、大盛りで!」と威勢よく声を掛けたものだが、最近は、年齢のせいもあってか、そんなに沢山は食べられないし、お店に入ることにも、二の足を踏むことがある。その背景には、この不況で客足も遠のいた食堂で、僅かな期待に堪えてもらえない可能性もあるからである。かといって、出されたものは八割方は食べなければ失礼だし、そうやって考えると、私のような、わがままで、自由きままに生きている人間には結構辛いことも多いのである。

 出先で弁当を広げて食べられるくらい胃袋に余裕があれば、浅草今半の「牛肉弁当」でも買っていけばよいし、お茶は、急須で出すより最近はペットボトル入りの方が美味しくなって、自販機で調達できる。しかし、ここでも今の時期、現地で残さず食べる気力があるかどうか、時々そんなことに悩むこともある。勿論、最寄りの駅の近くでハンバーガという手もある。しかし、順番を並んだ時から漂う空気で、お腹いっぱいになってしまう。食べれば食べたで、ずっとお腹が満腹状態が続き、動き回るのに苦しいことが多い。なんでこんなに消化が悪いのだろうか。

 ま、そうやって、神経を使うことも多く、平素から興味を持って色々お店を覗いている。そんな中から、今日は、まい泉の「たまとろメンチ」を買ってみた。例のカツサンドは有名で、それでもよかったのだが、平素は手に取らないものにしてみた。この「たまとろメンチ」はメンチカツの上に半熟卵が覆いかぶさるように収まっていて、上下をパンで挟んだものである。なかなかボリューム感があって美味しい。これを水出しコーヒーのコンデンスミルク入りと一緒にもって出かけ、お昼に食べることになった。とても美味しそうで食欲はわくが、量は少ないので、食べたか、飲んだか、わからない。それでも、しばらくすると満足感も出てきたし、おおよそ4時間ぐらいは腹もちもよかった。そして、日が暮れかかるころには、小腹が空いてきた。

 活動する時は、簡単に食べられて、やはり消化・吸収の良いものがいい。たかが撮影といってもスポーツと同じで、たくさん食べた後の、重たい腹を抱えての作業は苦しいし、辛い。出来ればすぐにエネルギーに変わり、やる気を起こすものがあればベストだ。そのためにも、口にするものは、例え少量でも、美味しいものを準備しないといけない。好きな物、美味しい物、を食べる事で得られる精神的満足感は、他に代えられないほど行動意欲を高めるのに機能し、重要な役割を果たすのである。平素から、少量でも「美味しいものを食べること」に拘わった方がよい。草食系のあなたには、ポテトサラダサンドもある。
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補足1:ヒレかつサンド1箱777円、ポテトサラダサンド1箱273円、たまとろメンチ1個399円。

2011/07/15

オーディオマニア17

 若い人から、オーディオってなんですか?って問われるかもしれないが、昔は、程度の差はあったにせよ、これを趣味にしていた人も少なくなかった。今日は、以前から続いている我等テープ党の話題の中から、例のナカミチTT1000の弟分であるTT700 を紹介する。すでに、滅多に使わなくなったカセットデッキも、改めて写真に撮ってみると案外魅力的に見えるものだ。筺体に触れるとアルミのエッジで指が傷つけられそうな仕上げのまま、相変わらず強い個性を漂わせている。1978年頃、当時、生録をして楽しめるスーパー・カセットデッキは2~3台しかなかったが、これは、その1台である。しかし、その優れた性能もさることながら、唯一、ヨーロッパ調の個性的なデザインが多くのファンを魅了してきた。

 少し操作の説明をすると、まず、四角い蓋を開き、カセットを挿入する。手前にある6本の縦筋が操作部である。昔のエレベーターのボタンと同じで、触れるだけでよい。録音する時は、以前からお話をしている通り、このデッキの特徴でもある独立型3ヘッドにより、事前に録音ヘッドのアジマスを再生ヘッドに合わせる操作が必要になる。そのために、400Hzのテストトーンを記録再生し赤い2つのインジケータが同じように光る位置を探しだす。この調整機構をアライメント・ビーコンと言い、PDF写真の中では蓋が開いたところに存在する。我々は、この操作がやはり面倒なので、同じ銘柄のテープをたくさんストックしておき、いくつかサンプルを抽出してアライメント調整をして、それで済ませてきた。

 調整を終えると、巻戻して400Hzのテストトーンを消去しておく。それから録音を始めるが、操作ボタンの右側にあるのが、左右チャネルの音量を示すピークレベルメータである。おっと、昔の人間には普通の事でも、デジタルに慣れた若者には、理解に苦しむかもしれないので、少し説明を加える。本機は3ヘッドなので、録音前の音質と再生時の音質を source と tape のポジションを切替えることで比較できる。まず、source のポジションだと、音声が入力されてメーターの針が振れる。一般的には、この針の振れが小さいと録音する音がノイズに埋もれてしまうし、赤い領域まで大きく振らせると音がひずんでしまう。source と tape のポジションを切替えて聴き比べるとよくわかるが、大方においては、針はPDF写真のように、中央の0目盛りのあたりを行き来するぐらいにボリュームを調節すると良い。

  さて、年代も経過している本機だが、今でも現役で活躍している。最新のCDをコピーしても申し分ないが、同社のより新しいデッキと比較すると少し物足りなさもある。しかし、一方で、当時のミュージックテープの音質を髣髴とさせる艶やかな部分もあるので、廃棄できないのである。デッキの音質の評価は、自己録再だけにとどまらない。ミュージックカセットをどのように再生するかも重要なファクタなのである。ナカミチのデッキに共通する優位性として、ミュージックカセットの再生において、DOLBY の効果が音質を劣化させないところである。このことは、当時のレコード会社のリファレンスデッキとして使われていたことからも裏付けられる。古いミュージックカセットの音質も十二分に引き出すことが出来る。まさに、ミュージックカセットとデッキの相性が残っているようだ。そこに、古くてもこのデッキの存在価値がある。PDF写真は、細部を改良された後期モデル700Ⅱである。ではこちら
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補足1:デザイン→天才とも神様とも呼ばれた「レイモンド・ローウィ」のデザイン。
補足2:触れるだけ→フェザータッチともいう。この操作フィーリングは、世界最高といわれている。
補足3:B TYPE DOLBY SYSTEM →DOLBY SYSTEMには、A TYPE と B TYPEがあった。A TYPEは、レコーディング・スタジオや制作用として普及し、その簡易ローコスト版が家庭用カセットデッキ等に搭載されたB TYPE。要は、入力された楽音の高い周波数成分のダイナミックレンジを圧縮して録音し、再生するとき伸長するというもの。どのようなデッキでも、上手くいくわけではない。

2011/07/12

UCCの水出し珈琲

  この夏の節電ムードの影響で、売れに売れているものがあるらしい。すだれ、風鈴、蚊取り線香、扇風機、かき氷製造機、ジェルを使った冷温寝具、などなど、そうそう、あの「熱さま、ひんやり、ジェルマット」もその代表例といえる。それらはどこか、懐かしい昭和の風情を感じさせる商品ばかりで、それを並べたスーパーのディスプレーを眺めながら、一挙に幼いころへ引き戻されそうになる。あの頃は、まだまだ、夏が楽しい時期で、朝から麦わら帽子をかぶって蝉やかぶと虫を採りに行き、午後からは市営プールで2時間程泳ぎ、3時頃には昼寝をして、夕方は母と買い物に出かけてアイスキャンディーを買ってもらい、植木に水をやるのを手伝う。夜は、縁側で花火をしたり、スイカをほおばったりと、とにかく力果てるまで遊んだ。そういう、夏を満喫した頃を思い出して、昭和の思い出に浸りながらこの夏を乗り切れるとしたら結構楽しいかもしれない。

  さて、またも、と言った方がよいかもしれないが、再び水出し珈琲の紹介である。今日はUCCの水出し珈琲で、「ポットで一晩つけるだけ」と書いてあり、じっくり出すタイプである。アイス珈琲を楽しむこの時期には、色々と違いがあってもよいので、早く抽出するタイプから、じっくり抽出するまで、種類が揃えば、楽しさも増えるかもしれないと考えた。ところで、改めて申し上げるほどでもないが、UCCとは関西の珈琲のトップブランドである。関東の人にはなじみが薄いかもしれないが、ぜひ試してもらいたいブランドである。さて、2社とも、希望小売価格は同じだが、UCCには季節限定の「1パック増量」サービスは用意されていない。商品に自信があるのか、あるいは、単に他社研究が不足していたのかわからないが、恐らく後者であろう。関東で商売をするのにKEY COFFEE の手口を無視できるほど余裕はないはずだ。

 ということで、水出しの手順に入るが、袋の裏に美味しいアイス珈琲の入れ方の記述があり、1パックを常温の水500mlに投入しそのまま冷蔵庫へ、4時間から8時間の冷蔵放置を推奨している。ほとんど、KEY COFFEEと同じ条件で抽出されることになる。そこで、まったく同じ容器にアルカリイオン水を少し濃いめになるよう投入して、UCCを先に用意し、2時間後KEY COFFEEを用意し、UCCの6時間後とKEY COFFEEの4時間後が一緒になるようにして比較してみた。いずれにしても、それより時間が短ければ香りやコクが物足りないだろうし、時間が長ければ、えぐみや苦みが過ぎるようになる筈だ。

 この商品の持つ「味わいの差」や、「2時間という抽出時間の差」は、果たしてどのような結果となって現れるのであろうか。そこに興味を持って購入してきたのだが、実際に抽出した珈琲を口にしてみると、心配した「抽出時間の違いや、濃いめとか、苦みとか」などと理屈では片付けられない味の違いが存在したのである。好き嫌いは別として、UCCを良くご存じの方は馴染みやすい、まさにUCCの味がするのである。丁度、あの赤と茶色のUCCの缶珈琲の味を想い浮かべてもらうとよい。UCCの珈琲で育った方には、とても懐かしい味と言えよう。一方の、KEY COFFEEは、こちらも、やはりKEY COFFEE の味がする。私個人は、関西育ちだが、関東の生活は長いので、やはり KEY COFFEE の方がなじみやすい。
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2011/07/08

井村屋の和匠菓選

 いつからか、夏に限らず年中アイスクリームが食べられるようになって、気がつくとそれは、ファーストフードの仲間入りをしていた。ただ、店舗販売では独自に試行錯誤をして、四季を通して多少なりともバリエーションというか、季節感を出した商品展開をしてほしいと思っているのは、私だけか。「売れている」から「まだ大丈夫」と、半ば溶け始めて、再び凍ったような商品企画を続けていたら、いつしか客足が減ってしまった、なんて事のないように、常に新しい感覚で先取りしてほしいし、新たな情報発信基地になってほしいと思うのである。

 つい先月も、新宿で京王線に乗る前に、ハーゲンダッツを覘いた。そう、あの角のお店である。一通り見まわして、相変わらず食べつくした定番ばかりだったので、「つまらんな・・・」と思いながら、だからと言って、しらっとお店を出てしまっては「変なオヤジ」と思われるだけだと思い、そこで、既にディスコンになって15年ぐらい経過した銘柄を引き合いに出して、「ブランデーチェリー」は無いの?と改めて聞いてみた。すると、首をかしげながら「そんなの・・・・」と言った反応だったが、横からフレームインしてきたお姉さんが、「来月から期間限定のチェリーが出ますよ」と教えてくれた。「じゃ、また来ますわ」と、気分良くお店を出たのだが、帰り際、かつて同僚を連れてきて、「どうだ、どうだ、ブランデーチェリーって美味いだろ!」などと、御馳走した頃の事を思い出し、妙に懐かしく思えた。

 いつでも食べられると、希少価値の印象はないが、いざ、無くなってみると、今となっては 「う~っ、もっと食べときゃよかった」 と後悔するものである。やはり、若いうちから好き嫌いなく、「世の中にある美味しい」を実感しておけばよかったと、今になって想うのである。まあ、美味しいものは、思い出になるのである。思い出と言うのは、「時間的、あるいは空間的な隔たりや、薄れた記憶によって美化される」ところがよい。美化される=うれしい、楽しい、という関連から、心が存分に解放されるわけである。・・・・と、いつものようにアイスクリームにまで屁理屈をつけているわけだが、そうやって、少しづつ悔しい想いを残していく品物が続いている。

  さて、その、「期間限定のチェリー」を食べてはみたが、「あれ、これどこかで・・・」という、他社にもありそうな感じであった。これって、OEM商品かあっ!あの、昔のハーゲンダッツ独特の「引きづり込まれるような、くどい甘さの中にある美味しさ」は感じられなかった。 最近は、どちらかと言えば、甘さもカロリーも、軽い感じになってきて、食べ終わっても、一体、今何を食べたっけ?と思うぐらい、味に個性が残らなくなってきた。まあ、色々と、ファンの心理は多種多様で、低カロリーへの変化をよしとする風潮と、昔ながらの個性的な美味しさを求める気質とが相互に入り乱れ、爺じ、婆ばと若者の両者を顧客に持つ場合は、とかく品種の増える方向のマーケティングになりかねないのである。

 少々余計な前置きが長引いたが、今日は、小豆一筋と言ってもよいくらい強いこだわりをもつ日本の老舗「井村屋」からの出題である。決してスタッフが顧客リストを広げて検討しているわけでもないのに、今、我々が何を求めて生きているか、を高所からうかがい知るような商品企画をする。戦後すぐに創設され、50年くらい前には、既に一大旋風を巻き起こし、小豆と言えば「井村屋」、井村屋と言えば「ジュースの素」と言われるぐらい、当時から全国ヘ展開する強力な甘味老舗メーカーである。実は、いつでも、この井村屋の商品を見るたびに、幼いころ「食べたジュースの素」を思い出すし、TVCMの旋律まで呼び起されるのである。今日の2種のアイスは、そんな世代が喜ぶ小豆のアイスクリームで、口に運ぶと、懐かしくて、優しい「こしあん」の中に、甘納豆の強めの甘さが広がり、何とも上品な新しい風味なのである。これこれ!
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補足1:「つまらんな・・・」→ そう言われること自体、それはもう終わりかけている証拠である。
補足2:戦後すぐに創設→ 昭和22年より創業。
補足3:食べたジュースの素→飲むの間違いではなく、粉末のジュースの素をそのまま口に頬張って食べる様子のこと。
補足4:TVCM 「ホホイのホイでもう一杯、井村屋のジュースの素ですもう一杯」だったかな。

2011/07/04

このブログへ来るきっかけ

 友人とブログの話題になると、いつも同じように聞かれることがある。「よく続くね・・・」と、友人も若くはないので、継続の辛さを痛感しているのだと思う。それにしても、今まで累計342回程度のことで、そう言われると返事に困ってしまうが、確かに最初の頃は目的があった。その分、勢いもあったと思う。それは、とある定期刊行物の売上げ部数を、ブログの継続ユーザー数で抜き去ることであった。現在では、そのこと自体は、既に時間の問題になってきており、もはや「つまらん動機だった」 と考えているし、その目的は大した意味のあることではなくなってきた。しかし、その競争心と言うか、「私の自己満足を支えてくださった、継続ユーザーの皆様には、大変感謝申し上げている」 わけで、これからも笑って楽しんでいってもらいたいと思う。

  一方、初めてこのブログをご覧になった方は、色々戸惑いがあるようで、過去のタイトルの深いところ(過去150件近く)まで閲覧されている様子が見受けられる。「古いのをご覧になっても、絶対に、新しい発見はない」ので、意味はないと思うし、無駄な労力になると思う。しかし、このブログの特徴をつかみたいという事ならば、検索からの履歴などで、ある側面を知ることが出来ると思う。そこで、あらかじめこちらのAnalyticsで調べた結果を紹介しておきたい。それは、期間を区切って限定した「検索ワードひっかかりベスト20」と言ったところ。とはいうものの、あくまでも、検索から見出しで引っ掛かった記事の順位で、筆者の意図するところは全く含まれていない。また、Google Analytics からの一方的な報告の転載である。
 
  これからは、これに類似した報告も行い、何かの参考にしてもらいたいと思う。そこで、まず1回目の今回は、まず期間を2010年7月1日~2011年6月30日にした。過去1年間の統計である。原稿のリリースの日はまちまちで、古い方が若干上位に有利になる。そして、あくまでもアドレスではなく「タイトル、もしくは、ラベルから」のみ関連ワードを抽出している。すると、20位→SUN StorEdge D2 、19位→ウォークマンで蘇るわが青春、18位→VHD、17位→超特選タルト、16位→被爆とその累積量、15位→仕事でEOS-7D、14位→八幡太郎義家納豆、13位→パエリア風、12位→オーディオマニア13、11位→オーディオマニア15、10位→フランス流紅茶芸術、9位→競馬は興業なのだ、8位→京王フラワーガーデン、7位→カフェドクリエのマカロン、6位→新品種みかん せとか、5位→無停電電源(UPS)を使いこなす、4位→キャンディーズと電線音頭、3位→贅沢ヨーグルト、2位→不二屋のミルキーロール、1位→腰痛治療、となっている。

 全体的な傾向を見て、自分でコメントするのもいかがなものかと思うが、引っ掛かったタイトルは割と散漫で、これ等からでは、このブログの得意とする分野とか、狙いどころがはっきりせず、特徴も見受けられない。その事実は筆者の人間性に依存するため仕方ないにしても、これは、検索ボックスに関連したワードを投入して、検索ボタンを押し、抽出順に眺めながら Archivetec Report をクリックしたという結果に他ならないのである。その1つの側面だけで決めつけられないが、世の中の人たちは、おおよそ、ここに上がっている20個のような「関連するワード」を使って検索しているという側面もあるということである。

  誤解されては困るので、重ねて補足するが、これら20位のランキングは、記事がよかった20位ではない。あくまでも、その関連ワードによって検索している人が多いということだけである。つまり、「不二屋のミルキーロール」を知りたいから、「不二屋」とか、「ミルキー」とか、「ロール」と検索してみて、その中から Archivetec Report をクリックしたと言うだけの事である。中には、気に入った記事にブックマークをして、何度もクリックしたというケースがないとも限らないし、末尾に順番のついたタイトルが気になって、そればかり遡るということもあるかもしれないが、それらは、数字に表れるほどではないと思われる。

 ということで、初めてこのブログをご覧になった方の行動手順としては、以下のようになる筈である。上記で紹介した20タイトルのうち、興味のあるものがみつかれば、そのワードをページの右側にある「ブログ内検索」へ投入して、そのページを開いてもらえば良いし、もし、20タイトルに面白そうなものがなければ、さっさと他のブログへ行かれた方がよい。これで、無作為に面白みを探す時間の無駄が省けると思う。もちろん、いずれも強制するものではなく、まれに、小さな文字を追いかけるのがお好きで、誤字脱字を見つけるのが趣味とおっしゃる方は、じっくり、いくらでも古いのをほじくっていただいて結構である。

補足:この話を例えてみると→旅先でお腹がすいて食堂を探した。食堂の中に入ると、御当地ならではのメニューが並んでいて、どれをオーダーしてよいかわからない。そこで、「美味しいお勧めはどれですか」と聞いてみた。店のおやじは、どれでも美味いけど、やっぱり、注文の多いのは、かつ丼、ハンバーグ、カレー、ラーメンかなと、どこでも食べれる物ばかりを挙げてくれた。だから、どれか1つ食べてみれば、だいたい味の傾向がつかめると思う。それに似ている。