2012/03/31

虎屋の羊羹「おもかげ」


  最近、なにやら昭和の「復活」を売りにした商品が多い。かつてのバブル時期に売上げを伸ばした飲料や食品とか、中高年が若い頃親しんだマンガの主人公とか、憧れて欲しかった車種とか、よく聴いたスキャットとか、様々な分野で昭和の色を復活させようとしている。活気のあった時代を懐かしがる気運が広がっているようだ。歌謡曲のような流しものならまだしも、その時代を懐かしがる中高年に、どうしてもお金を使わせたいのかもしれない。

  財布の紐が固くなっている時代だからこそ、何か紐が緩むきっかけを作ろうと努力している。紐の前に気を緩めないといけないので、「昭和の思い出という琴線に触れようとしている」のである。つまり、新たな企画で商品化された製品を宣伝しても、価値観が違ったり、美学やデザイン性が既に固定化されている人たちを満足させるには、難しいと思ったに違いない。そこで、一度昭和の時代に立ち戻って心を揺さぶり、そこから再出発させる必要があると判断したのである。しかし、当時とまったく同じ手法や技術で作られているわけでもなく、今の時流に適した最新の技術が盛り込まれている点が優れている。そんな復活商品を横目にしながら、自分としては特別執着のあるものは無いけれど、何か1つと言われれば、うーむ、「小豆の餡子とか、饅頭、最中、羊羹」だよなと思うのである。

     ・・・・「やっぱ、それかよ!」と思われるかもしれないが、小豆と言うのは、おはぎとか大判焼き、あるいは羊羹として幼い時から口にしていて、自分の記憶の中では、半世紀以上の長い歴史を共に歩んできた食品である。井村屋のジュースの素より古いし、丸美屋ののりたまや、牛肉すき焼きふりかけよりも古く、もちろんテレビは白黒で、赤胴鈴之助や鞍馬天狗と同じぐらい身近な食品だったのである。だから、母だけではない、祖母のことまでも思い出せる食品なのである。そうそう、ちょうど右の写真を撮ってもらった時代からの記憶だと思うのである。

 さて、リードが長くなりすぎたが、今日の話は1言である。虎屋の羊羹を買って来たので報告したい。この羊羹は、7種類ほど製造販売されているが50gの少量包装は5種類ある。興味があれば、5種類を食べ比べてみてほしいが、それなりの驚きと新しい発見があると思う。その1つが「おもかげ」である。これを口にすると、ばあちゃんの作ってくれた餡子の味が蘇る筈である。しばらくの間、「あ~ぁ・・・と回転しながら、タイムトンネルに引き込まれて50年前に遡っていく」 感じなのである。ただ、それだけだけど、しばし懐かしさが襲ってきて胸を熱くしてしまった。

  もっと、熱くなりたい人の為に虎屋では、和菓子のオートクチュールを受注してくれる。使い道などの要望を受け、素材から形・色・菓銘に至るまで、お客と一緒に考え、「その客だけの和菓子」を作ってくれるというものである。東京赤坂本店と京都一条店でのみの受付だが、お茶会やお祝い事等には最高だ。それ以外にも、身近な使い道として、「いつ、今回で最後になるかもしれない父や母の誕生日に、懐かしい50~60年前のイメージの饅頭、羊羹、最中等をオートクチュールで作ってもらう」のはどうだろう。ケーキよりも、はるかに喜ばれるに違いないし、また、何度も、何度も、当時の同じ話が聴けるかもしれない。きっと、親孝行になる筈だ。価格は、通常の120%~200%程度とのこと。
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補足:今日紹介している羊羹は、1時間かけて練り上げたものを、多層構造で遮断性に優れた中袋に密閉封入していて、未開封では刻印された賞味期限よりさらに1年間は美味しくいただけるそうだ。羊羹は、元々大量の砂糖を加熱して作られているので、開封後でも表面に白く砂糖が固まっても腐ることはない。むしろそのほうが美味しい筈である。

2012/03/27

極めた味


     今、家族の食事を分担するリタイア組みのおじさんが増えている。元々、手先が器用で「包丁を不気味に使いこなすこの手の達人」は、喜んでそれを買って出るらしい。一方で、「男の人が作る料理と言うのは、高くついてしょうがない」とも言われる。テレビで、鰹節は一本釣りに限ると言われれば、早速高知へ飛んで幻の鰹節を手に入れて、帰りに四万十川の鰻を食べてきたとか、昆布のいいのが採れると聞けば、北海道の日高まで探しに行き、ついでに蟹を腹いっぱい食べてくる。椎茸ならやはり大分だよねと言いながら、ついでに日替わりで温泉地獄に浸かってきたとか、食材の本場へ出向くのはいいとしても、交通費だけでもままならないのに、時間だけは無尽蔵にあるために、その逸脱行為にお金がかかるのである。そんなにお金を掛けて、「この味噌汁一杯でっか?」と思うわけである。そうやって、年に何度もそんな味噌汁を作ってもらっても、家族はちっとも嬉しくないのである。

  どうせ、食べてしまうのだし、たくさんは食べられないので、少しでも高品質で美味しい物を集めて腕自慢したいと、日ごろから情報収集に努めているわけである。ところが、サスペンス・ドラマの影響か、テレビショッピングに洗脳されたか、あるいはグルメ番組にそそのかされたのかわからないが、それらが混然一体となって妄想が広がっていくのである。たとえば、特上の昆布と聞くと、それなら北海道、行くなら列車、列車の中の殺人事件とくればアガサ・クリスティか西村京太郎である。そこで、事件に巻き込まれて、自ら謎を解き明かすために、寝台特急に乗車しなくてはならない。

 そうやって、たかだか昆布を仕入れに行くのに「北斗星」のA寝台を使うことになるのである。おまけに、キヤノンのCMを見ながら「趣味なら本気かあ!」とついでにサンニッパでオホーツクの流氷を撮りたいとか、帰りは登別温泉で2泊するとか考えていると、つい「ドリフターズのいい湯だな」の旋律が口から洩れたりする。そこで、周囲に気付かれ「何かお父さん怪しい!」とか言われる訳である。そうやって、多かれ少なかれ、そのような逸脱行為を潜り抜けることによって、男の料理は次々と開発され、本人しか味わえない専門性の高い満足感と、人生観にも似た奥深い味わいに仕上がっていくのである。

 今日はそんな料理の達人に、全国各地を飛び回らなくても、それに匹敵する旨味を引き出して美味しい味噌汁や煮物が出来る「和風だし」と「風味調味料」のパックを紹介したい。前者の和風だしが「銀色のパッケージ」に入った「珠味」で、鹿児島産の本枯鰹節・荒節、道南産の天然真昆布、大分産の原木栽培椎茸を原材料にして作られている。また、後者は「金色のパッケージ」に入った風味調味料「味彩」で、こちらは、焼津の本枯れ鰹節、熊本のうるめ鰯、長崎の鯖節、宮崎の原木栽培椎茸、利尻の天然昆布を使って調合してある。このだしパック1包を水500ml~700mlで煮出すことによって、味噌汁、吸い物、うどん、蕎麦などのだし汁に使ったり、煮物のだしにも使え、一流板前の味を家族全員がくまなく楽しめることになる。

 今日はイトーヨーカ堂で「かぶ」を見かけたので、この出汁パック1包を使って「かぶの味噌汁」を作ってみる。かぶは本来、お漬け物の様な歯ごたえや旨味を期待してしまうが、火を通し過ぎると柔らかくなってしまうので、その調整に注意が必要である。まず、あらかじめ出汁パック1包をアルカリイオン水300ml 相当で一晩寝かせて常温で出た出汁を用意する。かぶの味噌汁は出汁が濃くなくてはならないので水量を少なめにする。そこへ味噌を加える。次によく洗って裁断したかぶと、出汁入り味噌汁の両方を器に入れ、電子レンジで2分程度加熱する。それで出来上がりになる。そのまま120秒程度放置してから戴くとよい。たった数分でこれだけの美味しい「かぶの味噌汁」が出来る。一般的にはかぶは白味噌との相性が良いが、私は逆で普通の味噌に八丁味噌をブレンドしている。
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補足1:「北斗星」とは、上野から札幌まで走り抜ける寝台特急列車のこと。
補足2:サンニッパ(328)とは、今、一番人気のあるキヤノンの焦点距離300mm 明るさf2.8の大口径望遠レンズのこと。
補足3:経験的に、出汁の常温抽出にはアルカリイオン水が適している。
補足4:出汁パックは、煮出せば2~3分で出汁が採れるので、特に一晩寝かせなくても良い。

2012/03/22

撮影所のある街


     調布駅から多摩川へ出て、狛江市へ抜ける川沿いの遊歩道を行くと、角川大映撮影所と日活撮影所の脇を通る。最近角川大映撮影所は改装されて綺麗になったし(上の写真)、日活撮影所も新装工事に入っているようで、物々しい目隠しをしている。日活撮影所には、映像の専門筋を育てるための日活芸術学院が併設されていて、時折、多摩川の河川敷で撮影練習をしているグループを見かける。また、放送中のテレビドラマの撮影現場に遭遇することもある。通行規制や携帯撮影禁止と書かれた看板とか、巨大なライトやレフ板が置いてあったり、発電装置や本格的な撮影機材が無造作に並んでいる。通行者はついつい遠くからでも俳優さんを探してしまうわけだが、いつだったか、あのザ・ガードマンの宇津井健さんと、ごくせんの仲間由紀恵さんを見かけたことがある。

 角川大映撮影所の正面へ向かう道の右側には公園があり、そこには、俳優協会理事長 池部良さんの映画俳優の碑があって、著名人の名前が彫られている。並んで森繁さんの「生涯を映画に生く」と書かれた碑もある。調布市布田には、あの㈱石原プロモーションがあったり、旧甲州街道沿いの布田と国領町の間には高津装飾美術㈱がある。また、調布市国領町には、どの窓も黒いカーテンで覆われた異様なビル 東映ラボテック㈱もある。㈱東京現像所などは、大学の隣にあったので、学友が徹夜のアルバイトをしていた記憶もある。また、品川道と野川が交差する場所には、ウルトラマンが空へ飛び立つような格好をしたオブジェが屋上に見える会社があったり、興味がなくても目についてしまう。そんな調布は、東洋のハリウッド?と言われるぐらい面白い街なのである。

 それにしても、なぜ、調布近辺に映画産業関連の企業が多いかといえば、「この場所のルーツとなる日本映画株式会社の多摩川スタジオは、後の調布市長となる本多嘉一郎さんが昭和7年この地を調査に訪れ、「水澄み、時代劇、現代劇に最適なり」と報告して、建設に着手したと伝えられているからで、やはり、元々フイルムの現像に適した、綺麗な水が豊富に得られた場所らしい。もちろん、すでに京王帝都電鉄が走っていたことも一役買っていたわけである。その翌年の昭和8年には、この広大な土地に撮影所が出来て、昭和30年頃には市内に大映、日活、独立映画などの撮影所や㈱東京現像所、高津装飾美術㈱などの関連企業が集中したと言われている。

 近くに住んでいても、その様な産業に参画しなければ、なかなかその値打ちは分からない。でも、時折、今でも旧甲州街道で、乗用車の窓を開けながら、「西部警察はどう行けばいいですか?」と聞かれたりすると、自慢げに「この道をまっすぐ行って左ですよ、でも、今日は大門さんはいないすよ!」と返すこともあるし、子供さんから「ゲゲゲの鬼太郎は、何処で撮影してるの?」と聞かれたこともある。こうやって全国から足を運ぶファンがいることに、その層の広さを感じるわけである。そして、テレビ・ドラマの最後に出てくる会社の名称が、このあたりの会社だと、やはり身近に感じられて、一寸うれしい訳である。
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補足:角川大映撮影所の上の写真はクリックで大きく表示されます。それによって、入口付近に置かれた自転車との対比で、背後の「はにわ」姿の大魔神の大きさがわかります。

2012/03/20

レッド チェダー チーズ

  今更に、チーズごときで「うんぬん、かんぬん」と言っても仕方ないのだが、今日のチーズは、昨年の暮れに撮影しておいた商品である。こんなブログでも、写真を撮って、原稿は書いたけど「待ち行列止まり」と言うのも少なくない。特に食品は、気分が進まないとか、この商品大丈夫かなとか、ま、それなりに考えるところもあって、没のコーナーに蓄積してあるわけだけれど、今回は、その中から復活させようと思う。既に自分なりの評価は終わっていたのだが、しばらく(3ヶ月程度)近くの西友やイトーヨーカ堂、マルエツでは見かけなかったので、紹介するのには少々抵抗があった。しかし、再びマルエツの店頭で見かけるようになって、品質問題はなさそうなので一応大丈夫そうだ。

 血液型のB型の人は、乳製品との相性が良いという研究者の報告から、それを鵜呑みにし、さらに相性を追求したいと思い、売り場にあるチーズとヨーグルトは端から片付けてきた。ネズミにでもなったつもりで食べつくそうとしているのである。おかげで、一度でも口にすると、好き嫌いを含めたそれなりの結果が出て、最終的に2~3種類に集約される。百貨店の食品売り場や輸入品コーナーで新たな商品を見かけても、高価であったり、入手性にも問題を抱えていたり、課題は少なくない。それにもまして、一番気にしているのが、「多くの人に親まれないものはリスクを伴う」と言うことである。それは、食品以外にも言えることだが、もし、それを口にして何か体調不良を起こしたとしても、それが少数派なら、社交辞令で「気の毒ね!」と言われるだけで、誰も問題にしない。むしろ、「そんな変なもの、何で食べたんや!」という批判にさらされるだけである。しかし、逆に多数派に属していれば厚生労働省や消費者庁も問題にせざる負えなくなるわけで、その差は大きい。だから安易なブログでさえも、食品の紹介には神経を使う。老舗だとか、暖簾だとかを重視するのは、その販売実績を重視しているからである。

  さてチーズに話を戻すと、食べ方といっても、何種類もあるわけではないが、そのまま口にする美味しさもさることながら、フランスパンの上に載せて、オーブンで焼きあげた美味しさは、また格別である。今日紹介するレッド チェダー チーズは、この「焼きあげ」に最適なチーズなのである。もちろん、今まで紹介したチーズの中では間違いなく「一番美味しい」と思っている。パッケージから出したままのレッド チェダー チーズの表面は、ぼそぼそして荒引きと言った印象で、そのままでの食感は劣る。しかし、オーブンで焼くと一変し、何とも言えない香ばしい薫りと、荒引きの表面が、さらに沸々として滑らかになり食欲をそそる。もちろん、とても美味しい。元々チェダーチーズは、洋食屋さんなどでハンバーグの上に乗せたり、ハンバーガーのパテの上に重なっていて、お肉との相性が良いとされてきた。その印象が残っていて視覚と記憶を同時に刺激し、この色は、確かに美味しそうに見える。しかし、残念ながら、この赤みがかった黄色は、後から着色料を使用したものである。

 今日紹介するサンワ乳研㈱のチーズ商品は、市場には10種類ぐらい出回っているようだが、どの種類もすべて同じパッケージに収まっている。味気ない業務用を思わせるシンプルなデザインで、説明も最小限度で諸元もはっきり書かれていない。この会社のチーズは、マルエツでは、3種類用意されている。他と比べて価格の割高感は否めないが、味はやはり一押し出来そうである。ちなみに、写真のものは、1パッケージ5枚入りで265~285円で売られている。チーズマーケットの今後は、輸入品を加えてまだまだ広がりを見せ、成長する可能性がありそうである。
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2012/03/16

ディスカバリー5

    舶来製品の寸法を表わすときに、よくインチと言う単位が使われた。そうそう、昔ではテレビの対角寸法を表現するときにも使われていて、奥様方でも電気屋でそのインチを使って店員と話している姿を目にしたことがある。 1インチ=25.4mmになる。ただし、いつもインチとセンチを交互に換算しなくても、何となく映像の専門筋が使う単位として漠然と受け入れられてきたのである。今日は、そんなたわいもない「インチ」の話になる。

 今から34年ほど前、編集屋になりたての頃は、古いことを知らないことで苦労していた。だから、昔の事は、社内の棚に積んである本誌のバックナンバーをみながら学ぶしかなかった。ある日、フィリップスの1+1/4インチのPbOを使った小型4管式スタジオカメラが日本テレビ放送網に採用されたという取材記事を見つけた。1+1/4インチ4管式でも小型かって、もちろん従来の2インチより小型なのだが、それでも内部の巨大なプリズムの写真を見て驚いたのを覚えている。対角ではあるが31.75mm と撮像部もまだ巨大である(標準カメラは、このサイズがしばらく続いた)。これが、ネジよりも先にインチを実感した時の事である。その頃は、NHK技研の取材などでも、まだ2インチVTR(幅50.8mmのテープ)を使って映像を扱っていたのを覚えているし、そう古めかしい感じは受けなかったが、あれもインチ、これもインチと、インチがはびこる世界は広かったという実感がある。


  実は、スピーカ・ユニットの口径も、マイクロフォンの口径も本来のインチで表わされた時代は長かった。今でも、そういう単位を使う年配者は多いが、スピーカで15インチとか言われても、マイクロフォンで1/2インチと言われても一般的にはピンと来ない。やはり、38cm とか 12.7mm と言われた方が分かりやすい。その理由は、JIS(日本工業規格)が1991年から国際単位系に全面準拠となったためである。それを契機に、インチは国際単位から外され、国内では「型」と言う表現に統一されている。あくまでおおよそであるが、1尺=10寸=12型=0.3m となり、一寸法師より親指(1型)人形は小さいことになる。

 今日紹介するPDF写真は、段ボールの中から出てきたオープン・リールの1インチ・テープである(テープは、2、1、3/4、1/2インチまでインチ表記)。外枠のプラスティックも重たくしっかり作られていて、開くと当時の空気が溢れ出て、思わず懐かしい薫りにつつまれてしまった。恐らく、今でも古い映像の専門筋の人達の間で「インチ」といえば、実は、このテープのことか、もしくはそれを使った世界標準的なヘリカルのフォーマット(SMPTE TYPE C)で記録再生できるVTR機材を指すのである。

  今日のPDF写真のテープは、当時、別冊MOVEmentで業務用および放送業務用の「3管式ビデオカメラの測定」をした後の画質比較に、このテープを使っていたのである。その様子の一部を、以前のディスカバリー3のPDFで紹介しているが、当時の放送業務用ビデオカメラで撮影した画像も多く収録されている。池上通信機のHL-83、HL-79D、HL-95、ソニーのBVP-330、BVP-3(サチコン)、BVP-30 等もある。
ではこちら
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補足1:PbO=フィリップスが開発し、製造特許を所有しているプランビコンのこと。当時の放送業務用カメラの殆どに使われいた。国内では、つい最近まで松下電子工業がライセンス生産をして各メーカーに供給していた。PbOの特徴はハイキーな画像やハイライトに強いことだが、RchはPbSでめっぽうハイライトに弱い。昔のテレビ番組で赤い尾を引くコメットテール現象が多かったのはそのためである。
補足2:上の写真は、昭和53年に技研公開で見た8ヘッド超小型VTR。テープの幅、走行速度共に従来の1/2で、面密度が従来の4倍ながら従来のハイバンドと同等の画質が得られる。オープンリールだがヘリカルではない。特徴として、リング型8ヘッドドラムは、冶具なしで短時間で交換できる。重量は12kgと超軽量で、まさに野外撮影向きという。
補足3:ディスカバリー3のPDFは、こちら
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2012/03/13

黄色の萬来軒

 今日、府中税務署から帰りの電車の中で、吊皮にぶら下がるようにして車窓をぼーっと眺めていたら、様々な想いがこみ上げてきた。そういえば、通信工学科の奴はどうしているんだろう、てっきり電電公社とか東芝、日立に就職するのかと思っていたら、ある日偶然、調布市役所にいたのを見つけてびっくりしたなあー。若い時は、あの長い髪の少女を追いかけて、小さなスナックへ入り浸っていたが、今は、いいおっさんになっているに違いないし、お孫さんもいるかもしれない、いや、頭もはげているかもしれないから、街中で遭ってもわからないだろう。
 
  準特急は調布駅の手前で徐行運転をして、ゆっくりと踏切を通り過ぎようとしていた。「あれ?、あの店いつ色を塗り替えたんだっけ」と少し戸惑っているうちに、電車は滑るように調布駅に入線してしまった。昔、「黄色いハンカチ」という映画があった。それを連想させる可憐な色が黄色なのである。まるで「戻ってきてよ」と呼びかけているような気がしたのである。そんな、黄色いガレージ風のお店には、ある記憶を呼び戻す材料がいくつか塗り込まれていたのである。ひょっとしたら、奴は、今でもあそこでラーメンを食べているかもしれない。そこにいなければ、調布会館で玉を打っているに違いない。今すぐにでも無性に覘いてみたくなった。・・・・いるはずもないのに、そう思えてしまう自分がいて、とめどもなく懐かしさが押し寄せて来たのである。

    おかみさんは、愛想よく出迎えてくれた。お品書きを遠目に眺めながら「ラーメン1つください」と声を掛けた。おかみさんは、すぐに調理場の方へ引込んでしまった。私は、周囲を見回しながら、少し大きめの声で、「いやー、もう40年くらい前になりますが、何度かお邪魔したことがあるんです。授業を抜けて、この先の調布会館でパチンコした後、よく寄せてもらいました」。おかみさんは、暖簾越しにちょこっと顔を覘かせながら、「そういう方が懐かしいとおっしゃってお見えになるんですよ~」と嬉しそうな口調だった。前掛けで手を拭きながら、「お茶にしますか、それともお水になさいますか?」と昔のままの姿に、すかさず「お茶でお願いします」と反応してしまった。そのお茶も今日の写真の中に写り込んでいる。写真は、一緒に残された僅かな昭和の空間も色濃く写してしまった。

  ラーメンの味は、殆ど変っていなかった。中央にはどーんと鳴門が渦を巻いているし、メンマがややピンク色だったのに、普通の桃屋色になってしまった。スープは、さっぱりした生姜入りである。こうやってこのお店は、コストに無理なく独自の工夫で味を保ってきたのである。ラーメンの入った器が違うことで、現在と40年前の記憶が交錯する。妙な感覚だが、安心感にも似た心地よさが伝わってくる。これが、老いて昔を懐かしがる脳内物質の実体なのかもしれないが、ひどく心が懐かしさで揺さぶられている。

  御主人は、もう70歳過ぎたのではないだろうか、「御主人は?と、心配そうに少し迷いながら問いかけてみると」、「はい、少し頭を患いまして、今リハビリ中です。そのかわり、息子が手伝ってくれています」。「そうだったんですか、早くお元気になられるといいですね」と話ながら、鴨居にかけてある調理師免許証を眺めていた。本籍地新潟県 村山健一 昭和14年12月14日生まれ、昭和33年に調理師免許を取得されている。おかみさんは東京のご出身で、同じく調理師免許を33年に取得されている。生年月日は1カ月違いらしい。当時は、空腹を満たすことで精いっぱいだったのに、今は、店の隅々まで懐かしさを探し求めている。

 「景気はどんな案配ですか?」「今は、やっぱりよくありません、でも、昔からの人が懐かしがって、皆さん寄ってくださいます。ここで同窓会のようなことをされたりすることもあるんですよ」、そうだ、彼もその一人に紛れ込んでいるかもしれない。ここに顔を出していれば、昔の奴に遭えるかもしれない。  ・・・ 「また寄せてもらいますから、いつまでも続けてくださいね」。
そこはこちら
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2012/03/09

かにや2

  大河ドラマの「平清盛」にも出てきそうだが、 大納言とは、元々朝廷の役職のことである。役職にはさらに中納言、小納言とある。誰でもこれくらいの事は知っているわけだが、大納言は殿中で抜刀しても切腹しなくてもよいことから、「煮ても腹割れのない大粒の小豆」という意味が込められているらしい。これが大納言小豆という名称で品種化された由縁なのである。うーむなるほど奥が深い。また、大納言は普通の小豆より糖分が多いので味もよく、表面も艶やかで綺麗なので、珍重され徐々にブランド品に成長したようだ。そう言われてみると、中納言や小納言は、実在するのかもしれないが口にした事はない。かつて、甘納豆にはあったかもしれない。

    今から十数年前に、狭山の駅前の和菓子屋で何度か「どら焼き」をお土産に使ったことがある。その頃から、自分も小豆の餡子が好きで、届け先の人達も同じように「食べ応えのある、小豆の餡子入り」が好きだろうと勝手に考えていたわけである。そんなことを思い出しながら、その懐かしい和菓子店の前を通っていたわけだが、かといって、お店の名前を確認したり、改めて看板を見上げることは無かった。そんな日々が続いていたのだが、昨日、不覚にもその店こそ「かにや」の狭山駅東口店であることを知ったのである。

  十数年ぶりに、その「かにや」の暖簾をくぐり店内に入ると、そこには春の新作饅頭やら、季節限定の和菓子などが並んでいる。それらには目もくれず、「大納言入り餡子の・・・」はありますかと率直に尋ねる。やはり、何といっても伝統的な餡子を満喫する必要があったからだ。それには、大納言の食感が出やすい最中とか羊羹が適している筈だ。お菓子の種類としては、洋風のものも大量に展示されてある中で、あえて伝統的な和の商品を幾つか買い求めた。その中から特に、美味しいものだけ、今日のPDF写真の構成にした。それでも、やはり、大納言小豆入りの最中は、プリッとした舌触りで小豆の輪郭が伝わってきて、格別に食感が優れている。

 今でも多くの老舗和菓子店は、伝統的な製法で大納言を丁寧に扱っているが、最中としての上品さとか美味しさは「神田の老舗有名店」(神田シリーズ公開済)に一歩譲る。しかし、大納言の食感はあくまで老舗らしさが感じられて格別に美味しい。さすがに「丹波の大納言」だけのことはあると思った。そこで、その食感を写真を通して感じてもらおうと、あの去年買った「良く切れる包丁」で、最中のカットモデルを作ってみせる。今日のPDF写真の和菓子の中で、お届け物として使うとしたら、「大納言の最中の詰合せ」がお薦めである。それこそ、初老の先輩とか、何処へ土産に持ってしても、誰にでも、喜ばれる筈である。
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2012/03/06

オーディオマニア24


  前回は、試作パッシブラジエータのスピーカを紹介したので、その続きというか、完成している3ウエイの方をみっちり紹介しようと思って、当時の資料を探していたら、懐かしい写真や違う資料ばかり出て来て、つい寒い部屋の奥に座り込んで、時間が過ぎるのを忘れてしまった。写真は、当時の記憶を整理するには、大いに役に立つことがある。中でも、この古い写真を見たことのある人は、結構いらっしゃるのではないかと思って、今日はこの1枚を登場させることにした。個人的に当時の増刊などは残していないので、比較はできないが、同じカットでも少し違うのが増刊表紙に使われていたと思う。

 ちょうど1977~83年頃はスピーカの人気が高く、年末増刊の企画としてスピーカ・ユニットの測定とか、スピーカ・システムの測定をテーマに、「無響室でのデータ」をたくさん載せることでいつもより部数を伸ばすことが出来た。たくさん売れることは、多くの人たちの支持を得るということで、編集者にとって、たいへん気分の良い話だったのだが、無響室での作業は、腰を痛めたりすることも多かった。無響室は一切の音の反射を許していないので、上下左右前後が大きな楔の様な吸音材で囲まれている。人はその空中に張れた不安定な格子状のワイヤーの上を移動しなければならない。ブックシェルフ程度の大きさならまだしも、数人でフロアー形を中央にある測定台へセットするのは難儀だった。

 あと、少々マニアックな話になってしまうのだが、本来ならば、メーカー1社に決めて無響室を使わせてもらうと新旧のデーターの比較等もできて良いのだが、会社の上層部のお付き合いだとか、無響室の利用状況等もあって、その度に使う無響室が変わってしまうことも多かった。その様な事を繰り返していると、現場では分かりにくいが、データーを持ち帰って整理しながら気がつくことがある。我々も「必ず毎回同じスピーカを測定の仲間に入れておく」、ということもあって現実味が増すのだが、無響室によって50Hz以下の低域特性が大きく異なるのである。読者の方には、やっぱりそうかと納得される方も多いと思うが、そういうことが分かってくると、都内では芝浦にあるソニーの無響室がいいとか、西なら松下電器産業の無響室がいいとか、それぞれ無響室の癖を把握して、システム全体の測定にするか、ウーファか、スコーカか、あるいはトゥイータかなど「特集の企画」を変えるのである。

 今日の写真は、測定したスピーカ・システムを一同に並べてみたところで、場所は松下電器産業社内である。スピーカは測定結果だけで云々できる機器ではないが、逆に測定を担当すると、色々な事が分かってきて面白い。例えばB&Kのマイクロフォンの性能限界だとか、SPユニットの配置によるf特の変化だとか、キャビネットの回析現象や縦横奥行き比といった単純な寸法による定在波の影響もデーターに反映されるのである。そうやって、現場での経験を重ねることで少しづつ分かってきて、原稿を作る価値が出てくるのである。それも、人に何かを伝える面白さなのかもしれないのである。

  さて、写真の中の、「必ず毎回同じスピーカを測定の仲間に入れておく」には、やはり、編集部のお気に入りのYAMAHAのNS-1000M と Lo-DのHS-400 が紛れ込んでいる。あと、この時には、数種類のJBLのシステムが入っていて、プロフェッショナル好きな方でもかなり参考になった筈である。この写真の中から今でも半分の19機種ぐらいメーカー名が分かれば、まだ記憶が確かと言えそうだ。ということで、たわいもない古い写真の紹介ではあるが、このような話を前振りとして1発間に入れておくと、その続きの「完成している3ウエイの方をみっちり」紹介しやすくなるというシナリオなのである。
ではこちら。
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補足1:増刊は売れて部数が伸びたとしても、特別に儲かるわけではない。誇りにしたり面白がるのは編集長と企画担当の編集屋だけである。まず、刊行に当たっては、企画の段階で先に広告収入が決まる。その広告収入の案配によって「定価」を決めるのである。それこそ、広告がたくさん入ると、定価を下げて部数を伸ばし、他社競争に勝ちたいからである。ま、全て当時の話ではあるが。
補足2:私は1988年に退社したが、ラジオ技術社は1993年に無くなっている。「ラジオ技術本誌」は会社が変わっても、引き続き残った少メンバーで継続刊行されたが、現在は販売方法が変わったのか書店から姿を消している。
補足3:当時1976年~1988年までの事は、古い話なので忘れないうちに書き残しておこうと思う。今後は、時々突発的にこのような「時代遅れの話」が出るかもしれないがお許しいただきたい。

2012/03/02

玄米と雑穀入り和風雑炊

    少し前に、美味しい和風だしで「鯛だしのおぼろどうふ」の話を書いた。これは46kcal しかない低カロリー仕様なので、いつ何時口にしても、後々気分はすっきりである。・・・・ と、自分でそんなことを思いだしているうちに、小腹がすいてくるので、時々同じ商品を求めてあちこち探し求めているわけだが、やっと同じような「鯛だし雑炊」の商品を、なんと薬局で見つけることが出来たのである。全く同じものではないが、パッケージに写された「鯛くんの横顔」が美味そうに見えたのである。商品名は、「リセットボディ」で、何となく期待が持てそうである。
 
  その期待って何?と改めて聞かれても困るのだが、「 簡単調理のお湯を注ぐだけ → 飽きのこない美味しさ → しばし満足感が継続する → 体に良い栄養成分が豊富に含まれる → 少し痩せられる 」 というプロセスそのものなのである。この期待感は、今や、若い女性だけではない、むしろ中高年のサラリーマンの方が慢性的に渇望していることでもある。もちろん、「少し痩せられる」という結果には、様々にアプローチ方法があるには違いないが、やはり大きなお腹を抱えながら、心臓に負担のかかる「極端な節制や過激な運動」は、今更実行出来ないと思うのである。

  少し前に紹介したばかりなのに、既にベスト10入りしてヒットが続いている、0Kcalの「ピロリ菌も排除できるし、花粉症やアレルギーにも効果があるとされる、秩父の蒟蒻やしらたき 」ばかり毎日は食べていられない。それより、少しづつでも体を動かしたり、ウォーキングでもしなければならない。とかく、食べることを中心にカロリーを考えると食事は1日3回なので、とても人生が窮屈になる。だから、24時間や72時間といった短い単位で考えるのではなく、1か月単位で摂取カロリーを考えることにしている。つまり、月内のカロリーを通して、例えば61,200Cal → 59,400cal するにはどうするかを考えたり、逆にウォーキングは、その日のコンディションで距離を変えたりするのではなく、短時間でも毎日実行した方がよいとか、いずれにしても、我々は日々地道な努力と継続を余儀なくされる運命にあると思うのである。

  そこで、まず伸びきった胃袋の状態をリセットして、小さくするために、こんな雑炊から始めてみたらどうだろうか。もちろん最終目的は、空腹に耐えられる精神を作り上げることである。そんな時にこそ、今日紹介する「体にやさしい雑炊シリーズ」が役に立つかもしれないと感じたのである。鯛3個と松茸2個が同梱されていて、飽きのこない詰め合わせになっている。見た目や数値より、意外に美味しいし、腹持ちも良い。ま、このような食品を通して、カロリーという数字の実体を噛みしめながら、自己啓発の1つのチャンスを作りたいと考えるわけである。

 他にも、まだ口にしていないが、豆乳を使ったカニ雑炊とフカヒレ雑炊、スープパスタの紅ズワイガニ&トマトとクラムチャウダー等もあるようだ。全てに共通して言えることは、一食80kcalで食物繊維3000mgである。だから、夜遅くなって小腹がすいた時とか、今日は1回胃腸を休めたいとか、月1回だけ絶食日を作るとか、そんな苦行・荒行にもお勧めである。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%211100&app=WordPdf

補足:1日の摂取カロリーの目安:目標体重に25~30を掛けた数字で、現状を維持するには、私の場合、現状体重が68kgなので、維持なら68kg x30=2,040kcal (1日) で、目標とする体重が66kgと減量なら、66kg x 30 =1,980kcal (1日)となる。それを更に30日倍したのが、上記数字の61,200Cal → 59,400cal (1ヵ月)で、その差は、1800kcal と約1日分の摂取カロリーになる。