2011/10/28

海老のビスク

 時折、思い出したように、いつもと違った時間を過ごしたいと想う。それは、体に優しいスープを「落ち着いて味わう」気分に浸ってみたいのである。手間と時間をたっぷりとかけられたスープはすべての料理のベースでもあり、一寸とだけ幸せを感じられるひと時である。・・・・ただ、コース料理の最初に美味しいスープを出せる由緒正しい洋食屋は、最近極端に減ってしまった。だから、ホテルが販売している「スープ缶の詰め合わせ」を戴いたおりには「とても幸せな時間」が過ごせるのである。昨年も今頃レトルトパックのスープを紹介したことがあることを考えると、今の時期はスープが恋しいかもしれない。

 昔の即席スープは、お湯を注いで手早く出来る優位性しか感じられなかったが、最近のスープは、お湯に溶けやすい割には、それでもどんどん濃厚になっていて、本物らしさがあちこちに溢れている。薫りのつけ方も昔とは随分違って本格的になったように思われる。そんな本物っぽさを匂わせることで、一際高年齢層にも受け入れられるようになってきており、売り上げを伸ばし、製造メーカーも増え、様々な種類が派生して販売されている。たとえば、コーンスープもポタージュ風とか、焼きとうもろこし仕立てとか、胡麻と豆乳を組み合わせたポタージュとか、工夫を凝らして、濃厚さや香ばしさも追求されるようになった。

 今日紹介するのは、そんな派生品の中でもとりわけ異端児ともいえる「海老のビスク」である。ええっビスク?それ何?と疑問を発してしまったが、キーボードで「bisk」とタイプしてみる。No Response である。では、「bisque 」とタイプしてみる。すると、1.素焼きの陶器、2.競技者の弱者に与えられる1点、3.貝類、鶏肉、野菜などで作る濃厚なスープ、4.粉末にした木の実入りのアイスクリーム、と返ってきた。これらの解釈からわかることは、若干拡大解釈になってしまうが、餡子で例えると「こし餡と粒餡が混じり合って」より深みのある美味しさを追求したってところなのだろう。つまり、「海老ビスク」とは、海老で出したスープに海老の頭とか殻を粉砕したものを加えたと思われるのである。

 この「海老のビスク」は、とてもよく出来ていて、本物にかなり接近している。カップに溶かしてすする程度だと、よく出来た即席スープ程度にしか思えないかもしれないが、ホテル等でちょっと立派な2段重ねの大きな器に注がれて出されると、「さすがに、手が込んでいて美味しいね・・・」という言葉が漏れるに違いない。ただ、味や薫りなど、強調し過ぎの感は否めないが、「それを差し引いても美味しい」と思う。今日のPDF写真には、他にも同じくポッカのクラムチャウダー、そして理研ビタミンの「焼きとうもろこしのポタージュ」も並べてみたが、「海老のビスク」だけでも、試してもらいたい商品の1つである。ただ、海老の嫌いな人は駄目かな。
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2011/10/25

木場の角乗り

 先日、日本橋屋というお店の「天下鯛へい」という和菓子を紹介した。一寸個性的な顔をした「鯛焼き風の和菓子」で、割と美味しかった。戴き物という事もあって、その製造元の背景とか歴史についての詳細は全く不明であった。もっとも、とびきり驚くような衝撃や影響を受けたわけでもなく、ただただ私が知らなかっただけの事なのだが、さりとて、どこか少しだけ「魅かれる気分」が残っていて、もう少し、日本橋屋というお店を探ってみたいと思うようになったのである。ちょうど「鯛飯の椀の中で鯛の身を探すような気分」とでも例えられようか。ということで、日本橋屋の他のお菓子も戴いてみたくなったのである。

 お店のガラスの展示棚で目を引いたのは、この栗入巴衣「木場の角乗り」である。よくある栗の入った巴衣(=パイ)なのだが、なぜ、「木場の角乗り」と名付けられたのであろうか、調べてみると、それ自体は東京都指定無形民俗文化財で、「江戸時代の筏師が筏を組み上げるために、水辺に浮かんだ木材に乗り、鳶口を操って筏を組み上げるための高度な技術から派生したもの。それに由来して数々の技術が積み重なり、芸能文化として民俗文化財にまで発達したもの」という。栗入パイに、そのような大げさな名前を付けるとは、関係者からは「不届き千万」と言われても仕方ないが、それなりに、創造された栗入りパイ1本に貫かれた、日本橋屋の骨太とも言える主張や発想の豊かさを感じるわけである。うーむ、ほんまか?

 さて、この商品の包装状態というか、包装構造だが、「箱自体が巧妙に考察された組立て型の包装紙で作られている。外装半分には角材を感じさせる木目の印刷が覆っている」という凝った箱になっている。その箱を開けると中には、白いビニールに包まれた15cm程度の1本のパイがどーんと横たわっていた。この包装状態で、15日程度の賞味期限を確保している。この「角材を感じさせる印刷の包装箱」を見て、どれだけの人がセンスの良さを感じられるかどうかは不明だが、強い主張を感じることは間違いない。そして、私と同じように、「木場の角乗り」とは何か、調べてみたくなるのである。いわば、東京都指定無形民俗文化財の広告宣伝のための和菓子といえるかもしれないのである。

 全体として小ぶりの包装のお菓子だが、丁寧に手間暇かけて作られているようで1本850円である。もっとも、売れ残りは捨てるしかないようだ。中味を開けると1本のパイ状になっているので、口にするには、切り分ける必要がある。それだから、良く切れる包丁を用意しないと中の栗の断面まで美しくならない。その、綺麗に裁断された断面を見つめながら口に運ぶと、パイの外側の生地の薫りと少々田舎風の小倉餡、そして香ばしい栗が絶妙に調和した美味しさに繋がるわけである。小倉も栗も品質の高いものが使われているのがすぐに分かる。・・・・が、パイには油分があるため、小倉餡との相性には、従来になかった対比する独特な美味しさを感じるのだが、その油分が逆に製造日より1週間程度で風味が低下することも念頭に置いておきたい。この様なパイ生地のお菓子には、賞味期限の内側に風味期限がつきまとうようである。
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2011/10/21

冷温保存食品1

 東北の震災で、牛乳、ヨーグルト、チーズ、その他乳製品が極端に減っていたが、少しづつ回復しきたようにも見える。しかし、まだ十分ではない。今は、何らかの代替機能が働いているにすぎないと思えるからである。そんな現象1つ眺めても、やはり震災の影響はその後も日々広がり、細部にまで浸透していったのではないだろうか。復興、復興と声を大きくしても、お金がなければ何も進まないし、遅れれば遅れるほど傷口は広がるのである。この農業分野も、政府が出来るだけ早く手を差しのべて、復興が進むことを期待したい。

 と、偉そうで杓子定規なことを申し上げても詮方なきことだが、乳製品を好むDNAが組込れた全国の血液型B型の我々は、細胞レベルでそう願っているに違いない。半年ぐらい調子が悪いB型の人は、きっと、今日紹介するチェダーチーズが不足していたのかもしれない。ハンバーガーやハンバーグの上に乗せて溶かすチーズの元祖が、KRAFT 社のチェダーチーズである。マクドナルドのチーズバーガー等に挟んであるのも、その類似製品である。これは、一般のプロセスチーズに比べて深いコクがあり味わい深い。少し赤みがかっているのは着色で、それも手伝って美味しそうに見える。薄くスライスされ1枚づつ丁寧に包装されている製法は、KRAFT社の特許である。

 KRAFT社の乳製品は、日本国内では森永製菓が販売を一手に握っている。チーズは裁断が面倒なので、通常の棒状チーズでは、最近「切れてるチーズ」が売り上げを伸ばしている。それもこれも、棒状チーズは、料理の一部に組込れることが多い。適当な大きさに裁断してパスタやサラダに使われることもある。一方、料理の仕上げに使われるのがスライスチーズである。肉料理や野菜料理の素材の美味しさに、深い味わいを引き出す時に使われる。さらに、単品で食べる習慣のある人たちは、雪印の円形6分割のアルミホイル包装のプロセスチーズの印象が長く残っているようで、お酒のおつまみには定番と言えよう。いずれの使い方も今までの習慣の上に成り立っている。とりわけチーズ好きの人たちには、製法や熟成度、あるいは材料の違い、青カビや白カビなどによる味の違いを楽しむことに注意が注がれる。

 さて、今日は大量のKRAFTチーズを見つけたので買ってきた。10 度以下の要冷蔵ではあるが、チーズは保存食としても活用できるぐらい、長期保存が可能な食品である。これから寒くなるとアルミホイルで包装された製品は、冷蔵庫でなくても冷たい場所に置いて保存できる。乳製品依存症のB型のみならず、震災に備えて常に冷蔵庫に適量保存しておくことをお勧めしたい。
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補足:大まかに分類すると、熟成させないモッツアレラ・チーズ(PDF写真中央)、白カビのカマンベール(PDF写真右)、やや固目になるチェダーチーズ(PDF写真左)。そのほかに青カビのゴルゴンゾーラも美味しい。

2011/10/18

のんある気分

 お酒の呑めない私にとって、お酒の世界は、いつも一種独特な別世界の様相を呈しているように思えていた。「お酒はぬるめの燗がいい」 ・・・ふーん、そうなんだ。「肴は炙ったイカでいい」・・・おーっ、確かにそれは美味しそうだ。「女は無口なほうがいい」・・・・うーむ、そう、そう、全くその通り。と、一見して共通する感性もあるように思われるが、実は、感情に任せて、意固地になり、あるいは「天の邪鬼」といった、独特で難解な「わがまま」を通す世界に浸れるのかもしれない。肝臓にアルコール分解酵素を備えているかいないかだけで、そんなわがままを乱用する人達が、世の中にそんなにたくさん存在していいものかと、ずっと不可思議に思ってきた。おまけに、そんなに独特で難解な「わがまま」を通せるなら、酒呑みになった振りをしてやろうとする人も少なくない。

 これもまた「お酒が飲めない」という理由からくる一種の差別意識か、コンプレックスのように思ってきたわけだが、私の様な昔の若者は、それ自体で窮屈な青春時代を過ごしてきたのである。呑めないなら、呑ませてみよう不如帰ではないが、全方位的に先輩方からいじめられてきた。現代では逆に、呑まない若者の方が独自の世界を繰り広げていて、情報入手も多彩で不自由がない。したがって、自然とお酒の力を借りないと何も出来ない、あるいは「言いたいことも言えない人種」を軽蔑視してしまっているのである。最近は、その軽蔑というか差別視が行き過ぎて、思ったことをストレートに表現する人たちも増えた。酒の場というのに、「呑んだ後すぐに車を運転して事故を起こす」そんな理性の欠片もない人間が、「数年の牢屋暮らしで許される方がおかしい」、事故を起こし次第、即刻「公開処刑」にすべきだ!という怒りを露わにする「呑めない若者」も少なくないのである。確かに、そのような時の車は走る凶器と化すわけで、逃げ場がない橋の上や通学路などはたいへん危険である。

 さらに、事故の責任範囲の拡大解釈も進んでいる。飲酒運転した人だけには留まらず、飲酒を勧めた人たちも同罪であるという現行の責任範囲から、いやいや、「酒おびを検知して機能しないようにすべき車メーカーにも責任がある」という見方や、最近は、アルコール飲料を販売している「酒造飲料メーカーにも責任がある」と囁かれるようになってきたのである。そこまで問題にされるような、不条理で悲惨な事故が多かったという現実もあったからである。今後は、それ以上、飲酒運転で人を巻き込む事故につながりテレビや新聞を賑わせると、運転者の自己責任も加重され、酒類メーカーや車メーカーに対する世論の風当たりがさらに強くなるに違いない。

 そのような背景もあってか、酒造メーカーは、「ノンアルコール飲料」を加えて選択肢を増やし、「暗に弊社の責任は小さいよ」と飲酒運転事故における自己責任度を高めようとしているのである。一方で、お酒の呑めななかった人達にも「独特で難解なわがまま」の言える世界を味わってもらおうと「ノンアルコール飲料」をファッション化しようとしているのである。それではアルコール0の清涼飲料水とは、どのような商品なのであろうか。ということで、今日は、サントリーの「のんある気分」をぐびぐび呑んでみたい。ところが、口に含んだ瞬間、何となく笑いがこみあげ、感想を言葉として並べてみると、「夏場のかき氷に掛けるシロップを薄めて炭酸を加えたような味」である。そういう意味では、独特で難解な「わがままを言いたくなる」お味になっている。でも、子供のころを思い出すような一種の懐かしさが通り過ぎていくようで、チョッとだけなら楽しいかもしれない。
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2011/10/13

オーディオマニア19

 またまた、今から30年くらい前の話になるけど、オーディオマニアの課題の1つが低音再生であった。低音といっても、ベースやスネアドラムの音が空気感として伝わればよいというレベルから、ピアノのファンダメンタルや、大地を揺さぶるようなパイプオルガンの重低音まで欲しいと言った高度な要求まで様々で、周波数的には20Hz~80Hz と大したことはなさそうだが、音楽で考えると何とこれは2オクターブということになるのである。一般的に日本のリスニングルームは8~10畳程度しかないので、波長という観点でも1波長が室内に収まらない空間周波数である。それでは物理的に無理だと諦めて素直になればよいものを、誰しも飽くなき挑戦を繰り返してきたのである。

 それが1980年頃に、オンキョーのスーパーウーファLS-1が開発されてからは、やや半信半疑ながらも、希望をもって低音再生に挑むことになる。このLS-1の仕組みは、前面にある重たい振動板と、空気を介して、裏側でそれを駆動するユニットの3要素で構成されている。駆動ユニットが動けば空気を震わせ、次に前面の重たい振動版を揺さぶる。その重たい振動版と空気が最も動きやすくなるポイントを共振周波数という。その周波数を20Hzに調整するわけである。この仕掛は重さのみのパッシブラジエータ型あるいは、等価質量の空気を使うバスレフ型の変形である。振動板を軽くすれば、逆にキャビネットに大量の空気を必要とする。ただ、重たい振動版を少量の空気と共振させるため、理屈では、同じ周波数を再生する巨大な完全密閉型(600リットルのJIS箱)のスピーカに比べて過渡特性は劣る。

 それでも無いより、有った方がよい低音再生では、重低音へ再生範囲を広げれば広げるほど加速度的にコストがかかる。そこで、実際はどこまであればよいのか、あるいは、自分の聞く音楽はどこまで必要なのか試算をして、適当な仕組みで妥協することになる。私も、かつて170リットルの箱に三菱電機のプロフェッショナルモニタ4S-4002Pの40cm径パッシブラジエータとJBL30cmウーファ2203Aを組合せて使用していた。それも、古い当時の写真を見て思い出した程度で、期間は短かったと推察される。それは、スーパーウーファとして設計しても、単純に18dB/octで高域をカットし、さらにフルレンジ側の低域をカットして、レベルを調整しただけでは、「特性的」にも「音質的」にも繋がりが上手くいかないからである。

 その後、苦い経験を抜本的に解消するため、日本楽器製造のSW-160のスーパーウーファと、チャネルデバイダEC-2を組合せて、異なる周波数2段で高域をフィルタリングするようにした。EC-2はクロスオーバー周波数50Hz以上を18dB/oct でカットし、SW-160では、さらに100Hz以上を18dB/oct でカットしている。これによって、スーパーウーファからかすかに人の声が聞こえることもなくなったのである。そうやって、狭い部屋では積極的にフィルタを2段組合せないと解消されないこともある。高い周波数がスーパーウーファから再生されると、全体の音像がぼけるし、中低音の質の低下を招く。確かに、4ウエイで、なおかつフィルタの2段構えは、伝達関数的には恐ろしく好ましくないので、二の足を踏むが、少なくとも、聴感上の課題はほぼ解決できると思う。

    この2オクターブの低音再生に注力して聴感上も上手くいくと、様々な楽しみが生まれる。全てのディスクを聴きなおしてみたい衝動に駆られるし、勿論、その期待に応えてくれる「凄まじい低音の録音」も発見できる。あの、ビートルズのアナログ録音にも部屋を揺さぶるような超低音が入っていたり、デッカのクラシック・レコードにも力強い重低音が入っていたりする。ま、音楽は中低音に始まり、超低音の終わるといってよい。今日は、買ってくればすぐにできる「低音の勧め」と言ったところかな。
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補足:結局この日本楽器製造のチャネルデバイダEC-2は、試作サンプル品で、発売に至らなかった。それは、EC-2を使う超大型スピーカ・システム(すべてのユニットにベリリウム蒸着の平面振動板を使った4ウェイ)も同じ運命をたどったからである。この結EC-2は、日本楽器製造が試作で何台か作った内の1台が我が家に残ったものである。
余計な独り言:この超大型スピーカを雑誌の表紙用で、Kさんは誰かに写真を撮らせた(浜松まで出向いて)ようで、そのポジフィルムを見た記憶がある。ただ、残念ながらそれも同じ理由で表紙として採用されなかった。


2011/10/09

やけて焼けて

 上のタイトルは商品名で、セラミックストーンを使用した石焼き風のオーブン鍋のことである。今日は、その調理器具の話である。・・・・何度も何度もその効能についてテレビから吹聴されると、そ、そ、そうかと思うものである。おまけに、今回限りのお値引き期間中ですと言われると、9月下旬だったこともあって、清水の舞台から飛び降りる気分で購入を決めたというわけである。と、大げさに自慢するほど高価な物ではないが、形は至ってマニアックといえよう。

 さて、急に秋を感じるようになって、これだけ気温が下がると火を使った焼き物が楽しいかもしれない。自宅の庭で七輪に備長炭を使って、脂の乗った秋刀魚を焼くのもよいが、臭いで猫が見物にくるし、その割には煙が近所迷惑かもしれず、そんな大仰なことをする人はもういない。だからといって、割烹専門の魚屋で焼いてもらった秋刀魚を持って帰るのも面倒だし、イトーヨーカ堂の焼き秋刀魚では余計情けないし、セブンイレブンの秋刀魚も立派だけれど、ちとレジでさびしい。なんかこう、自分でちょっと工夫をして、たくさん食べられなくなった胃袋とも相談しながらも、焼き物を楽しんでみたいと常々考えていたわけである。

 構造は、熱を閉じ込める容器の中にセラミックで出来た小石が入っていて、そのうえに野菜を乗せたり、あるいは、アルミホイールを敷いた上に網を置いて、肉や魚、貝類を置き上蓋を閉じて10分~20分ガスレンジに掛けて火を通す。そして余熱も使って、全体にむらなく火が通った頃に「独特で美味しい焼き物」が出来上がるのである。どのような食材も周囲からまんべんな熱を加えることで、いつもと少し違う「素材の美味しさ」が引き出せる。本格的な焼きいもや、ベークドポテト、焼き茄子、焼きとうもろこし、ローストビーフ、焼き魚、焼きりんご、チップを使って燻製、茶葉を使って風味の良い鮭の焼き物など、次から次へと工夫次第で自由自在に使えそうである。

 写真は、最も簡単にできるベークドポテトが出来上がったところを見ていただく。セラミックストーンを敷いて、その上によく洗って土を落としたジャガイモを2個焼いてみた。おおよそ中火と弱火の中間で、左上に見えている不思議な恰好をした黒いカバーを乗せて20分程加熱する。さらに15分程度放置して蒸らし、最後にバターを乗せる。その状態を上から覘いたショットである。
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補足:商品情報は、ホームページ http://www.hirota.tv/yakete.html に詳細がある。

2011/10/07

グリコ栄養食品のうどん2

  「当時、まだ宇高連絡船があったので、船の上でまず「天ぷらうどん」を食べて、岡山駅で乗り換えに「祭りずし」を買って、・・・」という、以前書いたくだりにあるように、宇高連絡船で食べるうどんが、自分にイメージとして残された最後の「讃岐うどん」である。甲板の上の小さなお店なので、出港したら、すぐに走って駆け上がらないと大勢の人達が並んでしまう。うどんを「お湯で洗う」といった程度の短い時間で椀に入れ、上から熱いつゆを掛けて、えび天を乗せる。あまり火が通っていないので麺は太く硬めで、力強く蛇行している。それを”づるっ”と吸い込むと、うどんは、暴れながら喉を通過する。口の先に残った麺の端からおつゆが左右に飛び散る様が、讃岐うどんの「こしの強さ」である。・・・・・ほんまかーぁ?

  意識して探し始めると、なかなか見つけることが出来ない。だから、この掲載タイミングについてはあまり気にしないでいこうと思っていたが、いつでもいいやと思っていると案外早く見つかるもので、例のグリコ栄養食品㈱の「讃岐こし鍋うどん」と「牛筋カレーうどんの素」を見つけてきた。この2つの商品は、もちろん、この2つの組み合わせでも美味しいには違いないが、例えば、こし鍋うどんは、こしがめっぽう強いので、鍋焼きうどんはもとより、どんな鍋物にも使えそうだ。これからの季節は重宝するに違いない。そして、「牛筋カレーうどんの素」は、濃厚な仕上げになっていて、甘辛くコクのある味わいで「うーむ、と唸るほど美味しい」で、関西風。ご飯にも合うかもしれない。

 早速、この「讃岐こし鍋うどん」と「牛筋カレーうどんの素」の組合せで調理手順に入るが、こし鍋うどん と牛筋カレーを鍋に入れて中火でコトコトと10~15分程度煮込むという手もある。おそらくそれが標準的で美味しい調理方法なのだろう。しかし、私は、手っ取り早く調理して、うどんの腰の強さを味わいたい。できれば、そのままお椀に入れて電子レンジ500Wで4分という手もあるかもしれないが、私の方法は少し違う。まず、冷蔵庫から調理30分前に「讃岐こし鍋うどん」と「牛筋カレーうどんの素」を取り出しておく。お湯をチンチンに沸かし、「こし鍋うどん」を四つに切り、牛筋カレーのレトルトパックと一緒にお湯の中に入れる。こし鍋うどんのたまが離れかけたら、両方共取り出して椀に入れる。次に3分電子レンジで加熱する。牛筋カレーの表面の色の濃さが増したら食べ頃である。即席で作った割には、本格的なカレーうどんに仕上がる。はっきり申し上げて、3倍ほど高い「うどん専門店」でいただくカレーうどんより、はるかにC/P(コスパ)よく美味しい筈である。

 この、こし鍋うどんは、まさに私のイメージしている「宇高連絡船で食べていたうどん」に近かった。こし鍋うどんが、暴れながら喉を通過する時、父と母が元気であった頃の様子が思い出される。いやいや、母はまだ死んでないが・・。当時は、父も母も、今の私より若かった頃だと思う。これも、「懐かしさが美味しさにつながる記憶」なのである。
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補足1:こし鍋うどんは、パッケージ内では半生度は強く、十分火を通すことで独特の艶とこしを生むようで、茹時間の調整には神経を使ってほしい。
補足2:宇高連絡船→宇野と高松の瀬戸内海を結ぶ日本国有鉄道の船で、貨車なども運ぶ。船自体は青函連絡船と同じ構造である。

2011/10/02

天下鯛へい

 インターネットの普及で、きっかけさえあれば、どのようなことでも、ある程度の概要を掴むことが出来る。ただ、もっと詳しく知ろうとしても、案外横並びの情報や知識の羅列の場合が多く、まあ、そんなもんかと納得した気分になる他ない。一方で、今1つ食い足り為に、何か視点を変えてみるとか、色々探りまくるということもあるだろう。特に、美味しそうに思える商品とか、珍しい食品は、一度は口にしてみたいと思うかもしれないし、逆に、すぐに手に入りそうもなければ「もういいや」と興味を失うこともある。今後は益々「情報入手が早く、諦めも早くなる」のである。

 今日は、そんな理屈をこねてみたくなるほど、美味しいのに、情報が少ない甘味の紹介である。品物は、あくまで「頂戴した物」なので、伝統的背景などの詳しいことは説明できないが、一口で申し上げれば「鯛焼き風の生和菓子」といったところである。この写真の包は箱になっていて、まさに弁当風の趣をかもしていて、「鯛飯」とか、「鯛のおこわ飯」とかを連想してしまうのである。「ご飯の中に真っ白な鯛の身が入っていて、鯛のことのほか強い風味が漂い」・・・・と考えただけでも美味しそうであった。が、開けてみると「ええっ」と意表を突かれてしまったのである。

 さて、この鯛焼き風生和菓子は、それを一口頂くと、こし餡の上品な舌触りが伝わり、丁寧な仕事ぶりが簡単にわかる。このこし餡の作りが、和菓子の風格そのものなのである。こし餡に含まれる蜂蜜や水あめと一体化した香料が、時間とともに包む皮に浸潤し始め、全体へとくまなく広がっている。さらに皮の「もっちとした食感」は珍しい印象を受けるが、最新の洋風和菓子などにも見受けられる技法である。皮がカステラになったものはよくあるが、それとは対極にある食感を演出し、それによって、あくまで和菓子であることを再認識させられる。甘さは、たっぷりと広がり、今風に「抑え気味といった小細工は一切なく」心地よい。やはり、甘さは堂々と分かりやすくなければならない。

 我々の様な年齢にとっては、小豆を使った和菓子は、舌触りに伝統的な美味さを感じるのである。日本人であることの安堵感とでもいうのであろうか、ついつい着物の上に重ねた母の割烹着姿とか、手間のかかる小豆の前処理をする祖母の姿などが思い出されるのである。昔の田舎では、家庭で様々に甘い物を作っていたのである。そういう作業を見ながら、小豆のこしあん、粒あんに始まり、煮豆に砂糖や蜂蜜を加えて作る「餡」の色々を教わった。餡さえできれば、和菓子が作れるわけではないが、餡は材料の「加減」が重要な役割を担っている。つまり、創作者の感性とこだわりに大きく左右されるのである。
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補足:詳細は、ホームページhttp://www.nihonbashiya.jp/を参照のこと。