久々に流行歌を思い出すことになった。きっかけは、山口百恵さんの15,300円の豪華な完全記録本が、最近にわかに話題になっているからだ。やはり、昔の歌謡曲を懐かしがる人が多いのか、あるいは伝説の人の当時の記録と自分の若かりし日々を重ねてみたいのか、全くわからないが、いずれにしても結局「あの頃は良かった」に繋がるわけである。あの頃とは、1970年から1990年ぐらいの間で、当時20歳前後の1950年代生まれの人たちの気持ちなのだろう。
彼女のデビューは、「スター誕生」という日曜日10時頃のオーディション番組で、今なら、さしずめ政治番組の時間帯である。昔は、政治よりも歌謡曲に関心が高かったのである。歌の上手い森昌子さんや、可愛いい曲が似合う桜田淳子さんと同じ時期のデビューである。その二人の間にあって、難しい路線を歩むことになる。当時としては、やや禁句のような大胆な言葉を並べ、冷たいトーンで「女の子の大切な物を・・・」と歌い、「ひと夏の経験」はヒットしたものの、「作詞:千家和也、作曲:戸倉俊一」の曲は、今一つ盛り上がりに欠けた。この前期二人組の頃は10曲ぐらいリリースされたが、ヒット曲はその他に「ちっぽけな感傷」、「夏開く青春」、「パールカラーにゆれて」あたりに留まる。
ところが、後期の「横須賀ストーリー」に代表される、「作曲:宇崎竜童、作詞:阿木燿子」の曲からは、大人のイメージをどんどん加算していく。「これっきり、これっきり」など小気味よい繰り返しは、主張する女性を印象付け、それが、山口百恵の秘めた魅力を少しずつ引き出したといっても過言ではない。まさに、歌詞を通じて時代を象徴するような、「強く生きるヒステリックな女性」を作り上げていったのである。
その宇崎・阿木シリーズの中でも最も印象深いのは、「真っ赤なポルシェに乗った女性」である。ここでも「プレイバック、プレイバック」と業界用語を繰り返しながら、途中に「馬鹿にしないでよ、そっちのせいよ」の責任転嫁の強気のフレーズが入っていて、捨て台詞風の言葉が多く集められている。極めつけは、「坊や、一体何を教わって来たの」で、女性なら一度は投げかけてみたい言葉である。勿論、潮風の中、力いっぱいアクセルを踏み、ラジオのボリュームをあげると流れる「勝手にしやがれ、出て行くんだろ」は、沢田研二の曲を指している。このあたりの描写にも、時代を反映したとめどもない解放感が潜み、とても象徴的といえる。さらに、この二人の曲のもう一つの魅力は、メロディーラインの「リードギターの響き」が美しく際立っているところである。
その後も、横須賀あたりで流行った象徴的な技法が「美・サイレント」にも使われ「こちらは歌詞のない XX・・・・ の個所」が多数設けられている。その少し前には、「イミテーションゴールド」に、「あん、あん、あん、・・・・」と続けるフレーズもあった。いずれにしても、かつて使われたことのない歌詞の組み合わせに、その斬新さがうかがえる。
その強気の路線とは対極の、やや古臭く大袈裟な歌謡曲ともいえる谷村新司 作詞・作曲の「いい日旅立ち」や、さだまさし 作詞・作曲でフォーク調の「秋桜」を挟んで、落ち着きのある年代のファンにアピールする仕掛けを作り、彼らを巻き込んで、立て続けにヒットを飛ばしてきた。
さて、今日のPDF写真だが、当時のものとして現存するのは、CBSソニーのミュージックカセットや、45rpmのドーナツ盤である。そこで、そのシングルジャケットを撮影して参考資料としておきたい。ファンには申し訳ないが、ま、勝手にいいと思う写真だけ並べてみた。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%211059&app=WordPdf