2012/02/24

かにや1


     この坂を登りきった丘の上から眺めても海は望めなかった・・・・と叫びたい気分だが、ここは埼玉県の武蔵野の面影が残る狭山市である。だから、甲殻類を専門に扱うお店なんてあろうはずもない。話は、全く方角違いであった。この「かにや」は、昭和25年の創業である狭山市の老舗和菓子店のことである。今日は、そこの戴き物を紹介してみたい。かれこれ1年以上も通ってきた狭山市だが、いつ来なくなるか分からないので、このあたりの名物とか、風景とか、武蔵野の面影を残した象徴を、出来るだけ早いうちに切り取って、忘れる前にここに残しておきたいと思っているのである。掘り返せば、どんな田舎でも甘味の美味しいものは見つかる筈である。

 さて、戴き物なので偉そうなことを申し上げにくいが、このような昭和初期からの老舗の和菓子店を探ると、必ずといってよいほど宮内庁とのかかわりが出てくる。創業当時は、時代からして甘いものと言えば小豆であり、餡子ということになるわけだが、昭和天皇は、旅のお供やおやつに甘味が御好きだったという話を耳にしているので、お菓子屋は競って献上したのだろう。お店側としては、当時は、その献上品の開発を通して、商売自体に弾みがついていたことと思われる。もちろん、この「かにや」も例外ではなかった。

  戴いた箱の上には、「伊利麻の幸」と詰め合わせの名称が書かれている。豊かな自然の風土から生まれた味わい深い銘菓を折り込んだ、贈り物に最適な銘菓撰とあり、6種類のお菓子が2個づつ詰め合わせてあった。とりあえず、全て少量ごと口にしてみたのだが、独特の魅力を感じたのは「拍手さい彩」で、京都辻理のお菓子と言ってもよさそうな「抹茶の味わい」が漂い、武蔵野台地で採れる狭山茶を髣髴とさせる。これは、特に地域性を感じさせる優れたお菓子の1つといえる。

 そしてもう1つ気に入ったお菓子は、「関東あばれんぼう」である。何故か食べやすく親しみやすい。しかも、懐かしい味わいなのである。原材料に練乳とか、粉ミルクとあり、それが要因なのかもしれない。ただ、包装に使われているアルミ板は、焼き型を兼ねていてエッジがシャープなので、子供たちは口元に気をつけたほうがよい。そういう意味で「あばれんぼう」なのかもしれない。
 
 この、「伊利麻の幸」の詰め合わせに関する感想としては、割と、全体的にバターやクリームを使った洋菓子なので、期待していた私の得意分野の小豆の餡子だとか、寒天等を組合せた純粋な和菓子は無かったが、バラエティーに富んだ詰め合わせで、そこそこ楽しい。ただ、「かにや」には伝統的な和菓子の詰め合わせの用意もあるので、次回は、餡子、小豆などの和菓子を是非紹介してみたい。
ではこちら
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