2012/02/17
くら寿司
世の中には、燗症病み(かんしょうやみ)と言われる人がいる。この「燗症病み」という言葉は、もっぱら関西(大阪弁)で使われる言葉で、潔癖症とか神経質と解釈して差し支えない。しかし、どのような状況で使われる事例が多いかと言えば、口に入る食材に関する時であり、それにまつわる限定的な潔癖症としてとらえることも出来る。具体的には、「母もしくは祖母が調理した食事以外は、箸の進みが慎重になること」と例えられるのである。それは一体どう言うことなのか。今日の話では、「回転寿司は、安いかもしれないが、長時間に渡り回転していることで、いつ何時、お客の唾が飛び散っているかもしれない」から嫌だという人がいたとする。それに対して、あんたも「癇性病み」だねという時に使うのである。
いつの時代も母は、幼い子供の日々の体調や、生まれ持った体質をよく観察しながら、将来の事を考えて食物を与えている。おまけに、両親や祖父母の慢性疾患、あるいは遺伝性疾患などにも注意を払い、神経を使って子供を育てる。したがって、知らず知らずのうちに、母が作ったものが「一番に安全・安心で美味しい」と言う一種の信頼感を植えつけられる。そういう経緯で、口うるさい母の下であるほど「癇性病み」に成長することが多い。しかも大人になって、時代とともに生活が豊かになったとしても、やはり、そんな母の「品質保証」が必要だと言う人もいる。今後はその様な「癇性病み」が益々増加する傾向にあるといえそうだ。
テレビ番組で、「くら寿司」という回転寿司店がよく登場する。郊外の八王子や立川等の都下最外周ともいえる地域には、かなりの店舗数が揃っているが、この京王線沿線の千歳烏山、調布、府中にはほとんど見かけなかった。そんなお店が、近所の「つつじヶ丘」に出店する。「くら」という冠名称と、実際の店舗が「蔵」風に作ってあることから、ひょっとしたら倉敷発祥のお店ではないかと思っていたら、やはり、社長の故郷は岡山であった。この「蔵」のように数百年もの長い間、不動の場所で安心して出入りできるお店を考えたに違いない。
くら寿司は、回転寿司のお店だけれど、「品質と流通」の概念をお客の口先まで徹底したお店とも言える。お寿司は「全て無添加の品質を保証」しているし、お寿司自体も人ごみや埃の漂う空気に触れず、「新鮮さを保つ透明ケース入りでお客の口先に届ける」流通機構を備えているからである。もちろん、一定時間流通したら商品を破棄している。それらを日々営業の基礎とすることで、地域に眠ったままの最終顧客ともいえる「癇性病み」の人達を取り込むことが出来るのである。しかも、回転寿司は一般の寿司屋と異なり、人の手で握られていないので、元々「癇性病み」にとっては受け入れやすいといえる。また、それほどでもないけれど、神経質とか潔癖症の人にも最適な回転寿司店と言えそうである。
ではこちら
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