洋食屋には懐かしい響きがある。昔ながらの手の込んだ舶来の料理に、ソースなるものをかけてフォークとナイフを使っていただく洋食専門の店だ。赤いレンガの外観と文明開化を思わせる、ちょっと上品なテーブルや椅子があれば最高だ。コトコトと煮込んだデミグラ・ソース、ビーフシチュー、時間をかけた料理から、短い時間でささっと調理する熟練技を必要とするのも洋食だ。しかし、洋食屋の看板で生き延びているお店は少ない。今も看板が出ているとしたら、創業は明治という感じの老舗しかない。しかるべきところへ出かければ、あるにはあるが、手軽に美味しいお昼を戴くという状況にはない。どちらかといえば、高価な料理ばかりである。本来ならば、毎日出かけても、メニューの種類が豊富で、飽きの来ないお店が洋食屋の印象といえる。ちょっと小太りのおやじがいて、何でも簡単にすばやく作ってくれ、もっと色々食べたいと思わせる洗練された雰囲気があったのだ。
昔なら、休日にデパートや遊園地へ出かけた帰りに家族で寄るのが洋食屋だったはずだ。いつしか、その洋食は広く一般家庭内に入り込んで、その家庭の味として残って脈々と生き続けるはずだった。その代表格がハンバーグといえる。ところが、これら洋食の具材がデパートの地下やマーケットで販売されるようになったり、ファミリーレストランでも安く提供されるようになってからは、珍しくもなくなったし、お母さん方も腕を振るうことも少なくなってしまった。
洋食屋としての需要は、どんどん減ってゆく。洋食時代のお客が高齢化してしまったこと、手ごろで良いお肉が入手しにくくなってしまったのも洋食屋が減っている理由だと思われる。確かに、お客が少ないのに、良いお肉をあらかじめ大量に用意するのは難しいし、それなりの「価格」で若者に美味しいと思ってもらうのも難しいと思う。外食産業大手は、生産者と直接契約するとか、自社生産で対応して食材は安価に新鮮なものが常に用意できるとしているが、今度は、その場でオーダーを聞いて調理できる本格的料理人が現場にいない。
そこで、これら2つの要素を実現して、さらに「変えてはいけないものと、変えてもいいものを大胆に見極め、大きく積極的に変える」老舗の思想と新進気鋭の熟練技術を持ってすれば、洋食屋としてまだまだ、魅力のあるメニューを展開できるのではないだろうか。そんな中、今、割と手軽に訪店できて、それなりの価格で美味しい洋食といえば、この店しかないが、それでも、まだまだメニューの数は少なく、結局、客側から観るとビールとハンバーグ屋さんのイメージが強い。関西人の私としては、そこそこ簡単に作れるビーフカツレツを手軽に食べたいが、いかがなものか。
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