最近のJ-POPには、電子楽器が多用されている。一本調子の重たい低音は、ちと嫌気がさすが、どうも、それでよいらしい。オーディオ装置を自己流で鳴らしている者にとって、CDに入っている低音再生は、装置の課題を自ら発見し、改善思考というか、試行錯誤をいつも余儀なくさせる。いまだに、チャンネルフィルタのレベルを調整する。困ったものだが、かつては、それが楽しみでもあった。そんな、今となっては、どうでもよい事が、ある時、妙に懐かしく感じる事がある。その頃は、何事にも妥協をせず、自分の持てる知識の全てを尽くし、熱心にそれにとリ組むという姿勢と、その時代の社会的価値観やたっぷりとした時間の流れ、そこにも懐かしさを感じるのである。いずれ、J-POPの低音なんて「こんなものでよい」と妥協するわけだが、低音を出しすぎで妥協するか、控えめに抑えるかは性格にもよるのかもしれない。
昔、先輩に連れられて、いくつかの録音スタジオを取材した事がある。赤坂にあった東芝EMIで歌謡曲のマザーテープを聞かせてもらった時のことである。あんなに、低音が出ないと思っていたJBL-4320が朗々と重低音を鳴らしていた事に驚いた。それだけではないが、やっぱり、レコードには書き込むことの出来ない音が沢山ある事を、その時知ったわけである。また、FUJIから頼まれて、いやいやながら取材に行ったYMOのライブでも、何でこんなに「体が揺れるような、常軌を逸脱した重低音」が出るんだ、とつい感じ入ってしまい、考え込んだ記憶もある。また、無響室の中でスピーカ測定中に、B&Kは20Hzからスイープするのだが、コーン紙はぶるぶる最大振幅でゆれているのに、音にならないのはなんでか。そんな、素朴な疑問を真剣に理屈をつけて考えていたが、答えを実感しないまま、はるかな時間だけ過ぎてしまった。もちろん、私だけではない、「Hi-Fi」と言う「合言葉」を知っている、あなたも同じはずだ。
今では、レコード屋も頻繁に覗かなくなったし、CDも特別録音の良いものを探すことも無い。店先に積んであるものから、分かりやすいのを買ってくる。このような習慣は、昔の過渡現象と言うのかもしれないが、それも僅かに心地よいところがある。そんなCDに何を期待して購入するのかと言われれば、やはり、最新の音作りである。どこかで、誰か優れたミキサーが良い音を作ってくれているのではないか、かつての東芝EMIの行方洋一さんの「京都の恋=渚ゆうこ」なんぞ、凄まじい重低音が記録されていたが、そこまで行かなくても、という、ごくごく 些細な期待感なのである。それが、ある種の宝くじ的な楽しみになっているのである。当たったらうれしいのは、宝くじの方かもしれないが、若さを取り戻せる可能性があるのはCDである。
さて、最近の所感をちりばめてリードが少々長くなってしまったが、 今日のCDは昨年9月10日に発売された布施明のBALLARDE と、先日4月8日発売になった BALLARDEⅡである。 さすがに電子楽器のことはあり、十分にパルシブで力強い重低音が入っている。あなたの装置で、これを再現できるか。
ではこちら
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