今頃の神代植物公園は、ハナミズキ、フジ、バラ、ボタン、エビネ、シャクヤク、シャクナゲ、サツキ、ツツジ等が花を咲かせる。それを目当てに、中高年アマチュア・カメラマンが朝早くから殺到する。ポジション取りのため開門と同時に走り込んで行く人も少なくない。人気のある場所はある程度決まっているようで、狭い場所にひしめき合って三脚を立てているのですぐに分かる。みんな白い望遠レンズを取り付けて同じ方向に向けている。スポーツカメラマンさながらの光景は、花の「クローズアップに背景ボケ」のフレームを構成しているようだ。 このような世界に入り込み、仲間になりたい人は、そこそこの一流カメラを用意する必要がありそうだ。
最近、植物が発散している「フィトンチッド」という物質に注目が集まっている。森の多い国で古くから研究され、人体にも良いことも分かってきたらしい。このため、朝早くから森林を散歩する「じいちゃんばあちゃん」は、特別健康を維持できるとも言われている。肝機能や生理機能の活性化など、多くの効能があるという(ただし、午前中10時ごろまでしか効果はない)。また、木々の放つ薫りの清涼感によって二日酔いや頭痛・吐き気も軽減され、さらに噴水や滝のある森林では、マイナスイオンを大量に発散し、肩こりの軽減やリラックス効果もあるようだ。さらに、疲れた目には、新緑が良さそうだ。この植物園には全てが用意されている。休日には、早起きして森林を散歩しながら考えをまとめる習慣をつけると良いかもしれない。ただ、気をつけて欲しいのは、あくまでも効果があるのは朝は10時までと言うことで、それ以降は体に毒らしい。
私はいつものように、ぶらぶら散策し、いつもの森の妖精が声をかけてくれるのを待っていた。しばらく歩いていると、向こうから手を上げあげながらゆっくり寄ってきた。「ブログ観たよ、あれは寒いときだったね、暖かくなったから、今回は、のどかな感じの写真がいいね、ついでだから、もっと綺麗なところ撮ってよ、来園してくれる人を増やしたいから。やはり、一般人には綺麗な写真がいいよ」という。そ、そうだねと言いながら歩き始めた。そして、彼は通りから外れた、ある場所へ連れて来てくれた。「ここは、なんでもないように見えるだろ、よくありがちな感じなんだけど、自然に見せるのに、植木の角度に苦労したんだ。いろんな角度から見られるからね、このあたりはどう?」という。そこで、フレーミングをあれこれと試してみたが、どの角度も「1本の木の枝」が邪魔で、決定的といえるフレームにはならなかったが、今日は彼のプロデュースで撮影することにした。撮影中、彼は見にくい液晶を覗き込むようにして、いくつかのフレームから、1枚の写真を選び出した。「アールヌーボー風でいいよ」とひとりつぶやいて、いたく気に入った様子だった。まあ、そういう感じの場所ではある。そして、納得した彼は、機嫌よく研究園の方へ戻っていった。そうそう、彼に1つ伝える事を忘れていた「今日、年間パスポート買ったんだよ!」。
入園する我々は、造園者の苦労や気持ちを知らないで見学する。 何年も掛けて計画的に造園され、花を咲かせる時期や枝分けなど年間スケジュールも厳密だ。ただ、写真を撮って帰るだけでも、それなりに楽しいかもしれないが、造園者の話を聞きながら、多くの木々に注がれた愛情や、その情景にまつわる話も一緒に写し込んでおきたいものだ。土日や祝日は人が多いので、そんな、彼の言う「のどかな感じ」は無いかもしれないが、平日朝10時(開門9時30分)までなら大丈夫だ。時々、妖精たちは、二人連れでしゃがみこみ、話しをしながら草むしりをしているので声をかけてみると良い。色々教えてくれる筈だ。
ではこちら
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