2010/02/02

浅草今半

 牛肉と言えば今半である。ここの牛肉弁当、すき焼き弁当、ステーキ弁当(全て紹介済み)は、店舗によって多少構成が異なることもあるが、いずれも少々辛口な割下が味を引き立てている。これらは、特に割下と牛肉の旨味が融合し、御飯の中にまで浸透して、まさに「関東風ならではの美味しさ」を引き出している。「味は冷えて染み込む」というぐらいだから、出来立てよりも、少し時間が経過しているところがよいのである。
 さて、今日は、今半の本命中の本命といえる「牛肉と割下」の紹介である。まさに、すき焼きには最高の材料といえる。朝から「今日は、俺がやるから」と宣言し、材料を自分で集める。牛肉は新宿小田急百貨店(地下1階食品売り場一番奥の今半)で買い求める。ここのおばちゃんはいつも愛想が良い。1人分の牛肉の目安は200g程度。割下は2名で1本程度使用する(割下が足りなくなると、本醸造の濃口醤油、味醂、日本酒、三温糖に加えて昆布だしなどを使って混合調整する)。また、市販の割下はお店で出るものとは違い、あくまで市販用の味であることに配慮されたい(甘口)。牛肉と割下を入手した後、帰りに近所の八百屋で長ネギや焼豆腐、春菊、しいたけ等を買い求める。関西では、まつたけを加える地域は多く、今となっては少々贅沢に思えるかもしれないが、昔はごくごく一般的であった。ただ、純粋に関東風の美味しさという点に拘るなら、まつたけは評価できない。懐かしい食感を味わうなら、むしろ薫りの少ないエリンギ等の方が良い。あとは、日本酒のCMではないが、これで「やっぱり~菊正宗」でもあれば最高なのかもしれないが、私は呑めないので御免。早速、鉄鍋を出して準備に取り掛かる。といっても、具材を適度に切っておくだけである。最初から具材全てを鍋に投入してはならない。最初は鉄鍋を火に掛け、牛脂を少量流して牛肉を敷き、しばらくして割下を流しいれる。牛肉に火が通り、割下が牛肉の表面で踊っているときに口に運ぶのが美味しい。具材は、単なる付け足しであるが、割下が美味しいと、牛肉の旨味と割下が渾然一体となり、煮込む具材も俄然美味しくなる。2~3枚牛肉を口にしたところで、残りの牛肉と具材を投入しよう。
 今年も活気溢れる時間を過ごすために、美味しい牛肉をたんと食べて元気に仕事に向かいたいものだ。人は長い人生の中で様々な経験を重ねる。面白くないことが続いたり、落ち込んだりしたときは、今半の牛肉を食べるのが良い。ドリンク剤などよりはるかに元気が出る筈だ。そして、できれば家族全員で、この「今半のすき焼き」を囲んで欲しい。 すき焼きは、今半まで食べに行くのが王道だという人も少なくないが、今の時期は、具材を自分で買い集めて、自宅で楽しむのが賢い。家族みんなですき焼きをつつけば、部屋も体も、そして心も温まるひと時になる。そして、ここからが重要なのである。
 さて気分を整え、前頭葉の制御モードを「何でも笑える」に設定を変更しよう。そういうモードがない人は、3億円の宝くじが当たったことを連想すればよい。そして、小さなきっかけからみんなに笑いを誘い、徐々に家族の大きな笑いに盛り上げていく、食っては笑い、笑っては食う。どんな小さな事でも、つい笑ってしまい、腹を抱えて真っ赤な顔をしながら、みんなで笑いこける。これが、遠慮のいらない自宅で「今半の牛肉と割下」を使って楽しむすき焼きの醍醐味である。と言っても、大塚商会のような駄洒落を連発しても場が白けるだけである。なかなか、きっかけが掴めない場合は、平素から家族の事をよく取材しておく、あるいは、「母さんから聞き込み調査」をしておかなければならない。どのような話題で盛り上げるか、これもイベントには重要な要素なのである。大笑いをした後は、うどん、もち、玉子など何でも好きなもので、割下を根こそぎ絡め取ってたべる。 そして、最後の口直しに天然の檸檬シャーベットなどを用意できれば、オヤジとして満点がもらえる筈だ。
 こういう、時々最高に美味い物を買ってきて、調理して食べさせてくれ、おまけに屈託の無い楽しい時間を提供してくれるオヤジこそが愛されるのである。飛び切り美味しい物をイベントにすると家族は自然に集ってくる筈だ。つまらんことを、ぐじゃぐじゃ考えていたり、先行きの閉塞感を1人抱え込んでいるような暗いオヤジは、職場のみならず家族からも嫌われる。オヤジは、たとえ演技であっても、常に前向きで、楽しそうに仕事へ出かけて行き、楽しそうに帰ってくることが使命なのである。それでも、心配が絶えない人は、とりあえず、この時だけ張り切っている様子を見せて、適度な緊張感を楽しみながら、みんなの笑い顔に対する責任を、一人になって実感すれば良い。
 今日の写真は、ほんの参考程度ということで材料だけ並べてみた。家庭や習慣によって用意するものはそれぞれ異なるが、オヤジが作るすき焼きの「味のコンセプト」はいつも明確にしておきたいものだ。でも、やはり、基本はみんなで大笑いをしながら食べるところかな。 
ではこちら
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