2010/05/25

昭和の流行歌4

  どうでもよい事を、少々大袈裟に話題として作り上げるのは、いかがなものかと思うが、かつて記述式の試験を潜り抜けてきた世代の人間として、何かと必要以上に想像力が豊かなところがあって、勝手にありもしないことを考えたり、つまらんことを書き残したりするわけである。しかし、・・・1つの理屈と言うか、論理的考察から想像力を逞しくして、ひとつの結論に到達し、それを具体化すれば、素晴らしい着想だと、密かにほくそえんでいたら、・・・・実は、もう現実の物として存在していたと言う話は、意外に多い。だからと言って、それで落胆してはならない。むしろ、正解を素直に喜ぶべきである。まあ、何でも他人の受け売りで生きているよりは、想像力を逞しくすることのほうが創造的である。 

  前々回、どうも指が滑ってしまい、美空ひばりの「真赤な太陽」は、「黛ジュンに歌ってもらった方が良かったと思うし」、と何気なく自然に書き残してしまった。この、真赤な太陽は、元々ジュディオングが歌う予定で作られていたと聞いた事があって、それを美空ひばりが横取りしたのだと言う話であった。しかし、その話はどうもしっくり来ないと常々考えていた。

 何故か。うーむ、歌の上手さでは文句の無い美空ひばりが歌えば良いに決まっていると考えるか、あるいは、さすがに歌詞を考えると、「真赤に燃えた まではいいけれど、恋の季節なの~」を歌うには、一寸、いや随分「薹が立った年齢の人」が歌う曲ではない。と考えるべきで、制作者側は正しい状況判断をすべきであったと思うのである。だから、美空ひばりさんが30歳にしてミニスカートで登場し、軽い感じの独特の歌い方で流し、背後にブルーコメッツを配しても、何か珍しいものを見るようで、今1つ、曲に乗り切れないファンは多かったと思う。年配の美空ひばりファンからは、「どうしたんだろうね」と落胆され、若者達からは、あの「おばさん誰?」と年齢を問われたわけである。
 
 そんな、フラストレーションがきっと心のどこかにエネルギーとなって残っていて、では、誰が歌ったらそれらしく、屈託の無い受け入れ方ができたのかと考えた時、まず、当時18歳のジュディオングさんは申し分は無いが、ただ、足が綺麗であればよいというものでもなく、歌声にパンチがあり、優れたリズム感、アタック音が明瞭な人が良い、なんて、より完璧を求めようとするわけである。そうなると、曲自体がグループ・サウンズ風の流れを汲んでいることから、必然的に、当時19歳の「一人でもGS風」とまで言われた黛ジュンちゃんという結論に達するわけである。ま、仮に黛ジュンちゃんなら30歳を過ぎてもいけてる感じである。もっとも、ちゃんを付けるには僭越で、私より5歳もお姉さまである。現在62歳かな。

 ということで、さほど当時の歌謡界の時代背景に詳しくも無いのに、軽く希望を書いたつもりだったのだが、読み返してみると、恐らくこれ以上論理的な要素分析はない、と突き詰めるほどに現実味に溢れ、黛ジュンちゃんの方が曲調から言って歌も絶対上手し、はまり役だと確信を持つようになったのである。それにしても、今更40年以上経過している事なんか、どうでもよかったのだが、益々気になってきて、ひょっとして「黛ジュンちゃんが万が一にも、真赤な太陽をカバーしてたりしないよな」と思って、調べたら、すぐにみつけてしまい、「ひえー、カバーしてるよ、してる、まいったなー」と言うことになったのである。

 早速、聞いてみたいのでCDを買い求めたわけだが「真赤な太陽」の入った、入手可能な新品CDは、これしか残っていなかった。 勿論、録音自体は古いし、音作りも硬い感じだが、やはり、丁寧に歌ってあるし、歌声はあの抜群のリズム感、パンチもあるし、そして極めつけの、ポップスでも通用する独特の”こぶし”がエレキサウンドに良く似合い、ノリノリである。「やっぱ上手いよネ」と納得したのである。そんなことで、今日は、「真赤な太陽」に話を終始してしまったのだが、2枚のCDを並べた。1つは、美空ひばりさんのEVERGREEN で、紛れも無く”こぶし”の利いた演歌の「真赤な太陽」と、黛ジュンちゃんの「恋のハレルヤ」から、こちらも”舶来風のこぶしの”利いた「真赤な太陽」を聴き比べてみたのである。

 以上、確かにどうでもよいことで、翻弄してしまったが、ちょっと40年の時を巻き戻してみたような不思議な展開であった。・・・・・が、である。もし、私に話してくれた人が、記憶違いで、元々「ジュディオングさんの曲ではなく、黛ジュンさんの曲であったと説明していたら、恐らく、「ああ、そりゃあ、黛ジュンちゃんの方が当然上手いから、美空ひばりさんは失敗だったね」と、スパッとその場ですぐに納得していたに違いない。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21676&app=WordPdf

 補足 「真赤な太陽」の作詞をされた吉岡 治さんは、今月17日亡くなられた。
 レコード「恋のハレルヤ」のオリジナルは1967年12月発売だが、ボーナストラックに6曲(オリジナル発売以降の曲)追加して 2008年9月26日に再販されたCD。ただ、1967年当時は再生出来なかったと思われる重低音までちゃんと確認できた。そこが嬉しい。
 EVERGREENは、1983年PCM録音。発売当時、12曲3,800円で、清水の舞台から飛び降りるつもりで購入した。音はDENONには珍しくやや硬めだが、素晴らしい録音。さすがに、EVERGREENと名付けてあるだけのことはある。今となっては貴重な1枚。