ジャムやマーマレードのように、味を濃くしたり、保存目的で砂糖と一緒に煮詰める食品は、その時間によって美味しさが変わったり、また、素材の持つ風味や薫りは、煮詰める温度によっても影響を受ける。昔から、世のお母さん方は、ジャムやマーマレード作りに工夫を重ね、市販品とは異なる独自の美味しさを追求してきたが、手作りではどうしても到達できない領域が存在していた。そこに、まだまだ市販品としてのアドバンテージが残されていて、その美味しさは最近飛躍的に向上しているようだ。
たとえば御飯は、大きな釜で炊き上げたほうが美味しいことは広く知られている。それでも、市販のおにぎりやお弁当の御飯は、その美味しさの実現を匠に委ねている。彼等は、冷えても美味しい御飯の開発に凌ぎを削っているわけだが、我々は背景すら知らずに、「素材がよければ冷えても美味しいね」、とかなんとか勝手に感じているだけなのだが、それはそれとして、知らず知らずに、そのお店に足を運んだり、弁当を購入する価値として認識しているのである。たまに違ったお店で、いつもと違う御飯に遭遇すると、やはり、そう単純な物でもないことにも気が付き、きめ細かい裏技の存在を感じるわけである。それでも、消費者の立場でいる限り、詳細を理解することも無く、ただ、あそこは美味しい店という印象だけが残るのである。
今日紹介する、ジャムやマーマレードは、大きな釜を使って大量に作ったから美味しいというものではない。発売から99年間のノウハウを積み重ね、試行錯誤を繰り返して到達した老舗の製法であり、既に様々な果実で実績を積み重ねて、商品として高く評価されているものである。その最も大きなポイントは、「ジャムを真空釜で製造する」ところにある。それは、より「減圧して低温で煮詰める」ことを可能にし、また、果実ごとに真空釜内の環境を調整し最適化することで、果実そのもののおいしさを残し、より果実感を楽しめるジャムに仕上げる、と言うものである。 勿論、その詳細は公表されていないが、実物を口にするとその違いは明白である。
この製法は、水やお湯を注ぐと、元の状態に戻るフリーズドライ食品が美味しくなった理由とよく似ている。 フリーズドライは、その名の通り「凍らせて、乾燥する製法」のことで、例えばジュースに例えると、ジュースを凍結した後、ほぼ真空の乾燥庫の中で、ジュースの中の凍った水分を「昇華させて気体」にすることで乾燥させる。フリーズドライは、あくまでも「低温下で乾燥」させるのが特徴なので、素材本来の味、薫り、食感を保つことができると言う訳である。ジュースを沸騰させて、徐々に水分を飛ばして粉末にするのでは、本来のジュースの美味しさや薫りが一緒に飛んでしまうからである。つまり、美味しさを残すには、「その食材の特徴や持ち味が残る温度で調理する」必要がある。それは、果物の加工では、よりデリケートに調整が必要のようだ。一般的に手作りでのジャムやマーマレードは1気圧で水分を蒸発(100度以上にて)させながら調理するが、それを真空釜では、果物によって最適な気圧で、例えば80~90度で煮詰めることを意味している。
このジャムやマーマレードのお味は、確かに、かつて口にした事の無いような、リアルな食感が美味しさとなって伝わってくる。 これはもう「生でもないのに生々しい」と言うか、半生風の素材感の残る美味しさと言ってよい。また、甘さがかなり抑えられて、果実の持つ甘味や酸味が残っているために、美味しさの主張が際立っている。
それにしても、スーパーの乾物の傍等に隠すように置いてあっても、誰もそんなことを気にもとめないだろうし、食パン売り場にある、紙パックの寒天で固めたジャムをごく自然に手に取るに違いない。つまり、興味の無い人にとってみれば、どれでも同じにしか見えない商品なので、何かの告知行為がないと、気が付かないだろう。美味しさの違いは、実物を食べてもらうとすぐに分かるが、明治屋という「昔ながらの奥ゆかしい職人気質の商売」を継続する心意気には、老舗の余裕すら感じる。小さめのビン入りで価格も安く、種類も豊富で、かなり美味しい商品だと思うので、気が付いたら試してもらいたい。ま、せいぜいこのPDFをご覧戴いて概観ぐらいは覚えておいて欲しいものだ。今日紹介するのは、「果実実感ジャム6種」で、赤いキャップの商品である。キャップを開けると、要冷蔵なので2回に分けることとし、白いキャップの「国産果実 ジャム4種」は後日紹介したい。
ではこちら
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補足 職人気質 ここでは、「俺の仕事は誰にもまけねえ、違いが分かるやつだけ買ってくんな」といった自己満足的な気質をさすが、反面、商品の品質にはめっぽう気を配り、お客には「自分が納得する最高の物を提供しよう」とする気質も併せ持つ。