今日は天気もよく、連休後半のちょっとのんびりムードが漂い、歩きたい気分で野川を下る。70分ぐらいすると二子玉川で、ここの高島屋の地下に寄るのが習慣になっているが、混雑しているしここで何かを買ってしまうと、ついバスで帰ろうと安易な帰路を選びそうになる。そこで、多摩川を渡り20分ほど続けて歩く、と溝の口に出る。ここは、大きな街でノクティーと丸井がどーんと幅を利かせている。さすがに渋谷から一本で下れることもあって、調布などとは違い幅広い層に支持されるような、若者向けの雑多なお店から、年配の人にも優しいお店まで、その時代背景をそのまま残した街並みがある。そんな画一的でないのが、何処となく懐かしさを帯びて、活気のある夕刻時は、どこか安心感を与えてくれる。
この溝の口あたりまでが、テリトリーというか、説明できる歩行の限界といったところ。いつものように、もはや足の筋肉には乳酸が溜まっている。しばし休息で、よく丸井の1階に入る。奥に進むと中央にはテーブルと椅子が並び、その周囲を軽食の出店が囲う。ラーメンだとか蕎麦だとか、アイスクリーム等を買って、そこの椅子に行儀よく座って食べれるフードコートがある。今日も、そこでしばし休息を取りたかったが、とても混雑していた。実は、そんなことはどうでもよいのだが、帰り際に同じフロアの和菓子屋「末広庵」で数人のお嬢さん方が何か購入しているのを見かけた。珍しい、そんな若い人達が押寄せるようなお店でもなさそうなのに、と思いながら覗いてみると、やはり和菓子しか並んでいない。お嬢さん方は、店頭からそれらを指差し、少しづつ買い求めている。お店の人も忙しそうに低い姿勢で体を左右に揺らし手際よく対応している。次から次へと売れているのは、いったい何だ?と思いながら眺めているとシュークリームやカステラであった。元々、このような和菓子?のお店は、私の得意分野でもあるのだが。ひょっとすると、地元の人でないと分からない美味しい物があるのかもしれない。
そうか、「美味いのか」と思い、ついつられて最中、羊羹とカステラを買ってみた。この、つられるという気分は、たとえ豊富な経験を誇る者として、店舗外観とか、ショーケースとか、品物の包装とか、店員さんの物腰とか、品物の色合いであったり、そんなありきたりの判断が通用せず、時たま意表を突かれることもあるので、そこはかとなく期待をしてしまう。帰りは、溝の口から登戸までJRを使い、登戸から再び歩く事にしている。電車の中で、手提げの中のカステラの包装紙に巻かれたオレンジ色の帯を読む。 回りの人たちは、へんなオヤジと思ってチラチラと見て見ぬ振りをしているが、そんなの知ったこっちゃ無い。
そこには、こんな記述が載っている 「音楽のまちかわさきのシンボル-ミューザには5248本のパイプ数を誇るパイプオルガンがあり、柔らかで繊細な音が響き渡っています。」 おお、すごいな、こういうコンサートホールが川崎にもあるんだ、ツアラトウストラはかく語りき、サンサーンスの3番、いや、バッハだろうな、と勝手に頭の中に重低音が響き渡る。説明文を続けると「末広庵では日本の伝統あるカステラを現在風にアレンジし」、ううつ、いやいや、そんな工夫をしなくても古い伝統的な製法にこだわってほしいな、と思いながら続けると、「天然のミネラルを多く含んだ北海道十勝産のてんさい糖と糯米を原料に、砂糖を一切使用しない粟飴とでパイプオルガンの音色の様なお味に焼き上げた、体にも優しいカステラをお作りしました」とある。ふうーんと、危うくその場で1個パクっといくところだった。いやいや、カステラではなく最中の方で、小さい一口サイズで大丈夫。ただ、能書きは、これだけではなかった。
家に帰って、早速1つづつ開けて食べてみた。カステラは爽やかな甘味なのに割りともっちりしていて、後口もよく、ざら目が本物ぽさを感じさせる。なるほど、甘さ控えめの低カロリー風で、食感は重量級でも食べた後は軽い感じがする。これだな、パイプオルガンの音色をイメージしたというのは、きっと、湧き上がるような空気感のよく出る低音なのであろう。わかるぞ。
やはり、美味しい物を独自に探すのは難しいが、こんな能書きが書いてあるカステラも初めてで、読むうちに徐々に「こだわりと味わい方」が伝わってくる。そのイメージだけでも、今日は十分楽しめたと思う。これなら、その地元の若い人たちに、親しみながら味わってもらえるに違いない。つづきは、こちらのPDFで
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