2010/09/07

道後温泉


 幼い頃、道後温泉は、歴史も古く特別に体に良い効果があると教えられてきた。もちろん、漠然と納得もしていた。そうでなければ、早めの夕食を終わらせて、わざわざ家族4人揃って道後温泉まで電車で行くこともないと思っていたからで、理由はともあれ、当時の道後温泉本館は私にとって今で言うスーパー銭湯だったのである。ドラマ「坂の上の雲」でも、道後温泉 本館を想定した湯船の中で久敬(父)が息子の真之へ「急がば回れ、短気は損気」の教えを説いていたが、松山の人にとってこのような親子の会話は日常であったに違いない。この温泉という裸の空間と、ゆったりとした時間の中で、父は息子の為に様々な知恵を授けたに違いない。これは、私もかつてそうであったように、松山独自の温泉文化に根ざした行動だったのかもしれない。

 ということで、今日は懐かしい道後温泉に行くことにする。途中、道後公園前で下車し「子規記念博物館」を訪ねるのもよい。道後温泉駅を降りると、左にはアーケード商店街が続いていて、ここを「道後ハイカラ通り」という。この通りへ入ると、左右にお土産物屋とか喫茶、軽食屋などが軒を連ねているが、まっすぐ進むと、ローソンに突き当る。この左側にどーんと見えるのが「道後温泉 椿の湯」である。一方、右へ向かって、まっすぐ抜けて出ると「道後温泉 本館」に着く。この2つは同じ源泉なので、純粋に温泉の湯だけを楽しむのなら比較的に空いている「椿の湯」がお勧めで、営業時間 6:30~22:30 年中無休 大人360円。一方で、これが最初で最後になるかもしれないという年配の方は、天目(てんもく)に乗ったお茶や、坊ちゃん団子など夏目漱石の世界とか、明治の風情を楽しむには、道後温泉 本館が良い。営業時間は 6:00~22:00 年中無休 大人400~1,500円(切符4種類)となっている。そして、深夜高速バスで松山へ入る「坂の上の雲の舞台を探す」御一行様は、まず、道後温泉 本館で一風呂浴びてから出かけてもらいたい。もちろん路面電車もJR松山駅発→道後温泉行きは 6:16 から運行している。

 道後温泉は3,000年の歴史を誇る日本最古の温泉で、岩の割れ目から噴出すお湯で、傷を癒していた白鷺によって発見されたという伝説もある。道後温泉 本館は明治27年に建築された木造三層楼の建物で、国の重要文化財。泉質はアルカリ性単純温泉で、適応症は神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進など。道後温泉では、現在17本の源泉から汲み上げられて、本館、椿の湯はもとより周辺の旅館やホテルへ給湯されている。花こう岩を浴槽とした「椿の湯」は、古典に記されている聖徳太子のことばに起源をもち、その名が付けられたと言われており、本館の姉妹湯として、昭和28年新設されたが、その後、昭和59年に改築され現在に至っている。

  さて、道後温泉 本館には、2種類5つの浴室があり、種類とは、「神の湯」と「霊(たま)の湯」である。「神の湯」は広めに出来ていて、1.男西用、2.男東用と3.女用と3浴室があり、ここは大方が毎日の常連さんが使用する。こじんまりした「霊の湯」には、1.男用、2.女用と2浴室があり、こちらは観光客がゆったり入浴するにぴったりである。お風呂はすべて1階にあり、神の湯2階席や霊の湯3階席を利用の客も、全てここのいずれかのお風呂に入る。切符の区分と概要はPDFに示したとおりで、1,200~1,500円持って行けば、手ぶらで楽しんでこれるということになる。どうせなら、1,500円コースでゆったりと楽しみたい。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21767&app=WordPdf

 補足1 天目とは、語源としては茶碗のこと。道後温泉では、お茶碗を乗せる「朱色の漆塗りの台」を指す。夏目漱石も司馬遼太郎さんもこの天目に着目し、なにかと話のネタにしている。

 補足2 改札の中は廊下が色分けされており、青色が「神の湯2階席」、赤色が「霊の湯2階席」、黄色が「霊の湯3階席」に進む案内になっている。それぞれの色に添って、席まで行って湯上りを楽しむ。 親しいもの同士でのんびりしたいなら、「霊の湯3階個室」がよい。老舗旅館の客間を思わせる雰囲気が「坂の上の雲」の時代に引き戻され、正岡子規か夏目漱石になったような気分になるはず。 ただし、土日や夜の個室は満席の可能性もある。