2010/12/07

八幡太郎義家納豆

 微生物の酵素による働きの1つに発酵がある。これは、微生物が新たな物質を生成したり、分解する事を示している。微生物とは、カビや細菌のことで、カビの働きを利用したものの中に代表食品として鰹節がある。また、細菌の働きを使ったものには、納豆、漬物、チーズ、ヨーグルトなどが広く知られている。さらに、細菌のなかには、分類として酵母と呼ばれるものもあり、これは、パンや酒類を作るときに用いられている。酵母は細菌の一種で、糖質を分解してアルコールと二酸化炭素や乳酸に変える特徴を持つ。そして、最もポピュラーなものとして、それらカビ、細菌、酵母の3つの作用を組み合わせて作られるものに、味噌、醤油、清酒などがある。これら膨大な発酵食品は、古くから親しまれてきた物ばかりだが、どの時代もそれは偶然に発見されてきた。
 
 その細菌や酵母の働きはさておき、それを偶然に発見し、腐っているのではないかと思いながらも、試しに、食べてみた先人達には敬意を払わなければならない。現代に伝わるそれらの食品も、安全と分かっていても、臭い匂いを放つものがあり、それを想定しただけでも、「うーむ、俺にはとても出来ない」と思ってしまうのである。そんな、挑戦者とも言うべき先人のお名前を拝した納豆がある。それが、秋田名物「義家納豆」である。納豆発祥の伝承として、包装紙に由来の説明があり ・・・「今から約900年前、後三年の役(平安時代後期の奥州=東北地方の戦役)で将軍源義家(通称・八幡太郎)が、今の秋田県横手市金沢町にある砦を攻めた時、農民に煮大豆を供出させたところ、入れ物が間に合わず俵に詰めて差し出しされた。数日後、中で豆が香り放ち、糸を引いているので、驚きつつ食べてみると美味しかったので、広く伝えられたのが納豆の始まり」・・・だと書かれている。

 源義家が辿った軍路を、奥州平定(前九年の役、後三年の役)の折りに北上したとされるのが、丹波、甲斐、大田原、水戸、白河、会津、米沢、仙台、平泉、秋田の順路とされており、どこも古くからの納豆の産地として知られている。秋田はその最終地で、そこで初めて煮大豆から納豆が出来る事を知ったのであろうか、900年も前のことなので知るすべもないが、いずれにしても納豆発祥には、戦いという場において、軽量でパワーが出る食品として、持て囃されたような雰囲気が漂っている。さらに体の調子を整えるには、最適な食品である事が早くから発見されたのではないだろうか。また、その義家と納豆が辿った順路を見ても、後に納豆を名物として販売していることから、誰にでも安くて美味しい食品であったことが推察される。

 今日紹介する、義家納豆は(購入価格313円/100g)滅菌処理したワラで包んである。滅菌処理をするあたりは、この義家納豆をより慎重に伝承し、同時により美味しくといった、全く新たな発酵技術を使って再現した納豆と言ってもよい。1970年代には、同じ様なワラを使った水戸納豆(こちらも美味しい)が、都内のデパートなどで販売されていたが、ワラ自体の性質が納豆には適していても、現代の市場環境にはそぐわなかったのかもしれず、その殆どが、衛生的な発泡スチロールになってしまった。それでも、このワラに包まった納豆には、時間と共に発酵が進むようで、ワラの間から香ばしい薫りが漂い、醤油やからしを使わなくても、上品な風味と香ばしい美味しさが広がるのを体感できる。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21844&app=WordPdf

 補足1:pdf 写真は、質実剛健の日本的朝食のおかずの一部として納豆を撮影してみた。最近、和の朝食を忘れかけた人がいたら、これを見て思い出し、ちゃんと食べるようにして欲しい。

  補足2:製造元のヤマダフーズは発酵へのこだわりが強く、この最先端のバイオテクノロジーともいえる「菌」の操作に着目し、独自の研究を続け、何十種類ものオリジナル納豆菌を開発し保有しているという。