先々週、NGUYENの牛肉の赤ワイン煮を食べに行った帰りに、見付けてしまった和食の店「本濱」へ、早速今日「鯛めし昼定食」(1,200円)に訪れた。その「本濱」へは、JR浜松町駅の北口から線路の下の信号を渡って、文化放送の前を通って右折し50m程先の左側の道路沿いにある。健全な五感を備えている人であれば、目立たないが漂う匂いで分かる筈である。だいたい美味しい物を出すお店は、近くの空気まで美味しい。ついでに言わせて貰うと、美味しいお店は、あまり見てくれにお金をかけない。丁度開店と同時刻の11時30分入店し、着席して大人しく待つ。メニューは昼定食だけなので「音なしの構え」で待機する。しばし(25分ほど)経つと、入店の順に奥の席から膳が出てくる。鯛めしに、刺身、薄味仕上げのあら煮、その他小物2皿が乗っている。表の黒板には唐揚げ付きとあったが、それらしきものは何処にも見当たらない。
それにしても、何かと都会人は、平素から魚というものに餓えていて、御飯が鯛めしと聞くだけで、密かに「うーむ・・美味そう」とほくそえむかもしれない。そんな人は、このように、お皿にたくさんの刺身が乗っている光景を目にすると少し驚くかもしれない。そして食べ終わって満腹になったならば、何かと周囲に大袈裟な話題として話す事もある。だけど、お昼の定食に魚料理で満足させるのは容易なことではない。仕入れから調理法まで、幾つかの工夫が重ならなければ他店との違いは出せず、客は満足などしないからである。普通に考えるなら、まずは、魚の目利きになって朝早くから市場へ出向き、活きの良い美味しそうな魚を選んで買ってくる。いや、料亭や老舗の旅館ならいざ知らず、上品で小奇麗に焼き魚定食や刺身定食を出したとしても、魚に餓えた都会人の胃袋をそれで満足させることは難しいのである。
と、まあ、ぐずぐずと能書きを考えていても仕方ないので、記念写真を撮って、とにかく箸を付けてみることにする。鯛めしはかなり本格的な炊き上げで、おまけに焼いた鯛の切り身が上に乗っている。この鯛めしの上に焼いた切り身を乗せる手法は、間違いなく「瀬戸内料理人の手口」である。その一番美味しい切り身を崩しながら御飯と一緒に、ほおばるのが最高なのである。鯛めしは、お代わりができるが、焼いた切り身は乗ってこない。次に、刺身は、たっぷり何枚も何枚も皿に重なっていて、食べ応えはある。刺身は、意外にお腹にたまって、たくさんは食べられない。ここでも実際に困るぐらいの量がある。この2つ皿の構成で、「刺身と鯛めし定食」として出してもよいくらいだ。次に、あら煮の方をつっついてみるが、あら煮というより、あら煮風の煮付けに近く、中身は、いくつかの種類の魚の切り身が煮付けになっている。通常のあら煮のような味の濃さはなく、薄い煮付けのだし醤油に浸っているといった感じである。おっと、この中に切り身の唐揚げが隠れているではないか。うーむ、この意表を突くような感覚は確かに難解ではあるが、これもまたこれで、鯛めしと組み合わせて「あら煮風煮付けと鯛めし定食」が完成しそうである。
一応食べ終わるのに15分と言ったところか。特別に鯛めしのお代わりをしたわけでもないし、もったいないので、刺身は全て戴いたけれど、あら煮は残してしまった。それでも、「お昼を食べ過ぎると体が辛く」なるようだ。瀬戸内海では、伝統的な魚師風の料理が数多くあるが、この「旬彩 本濱」の仕立ては、それに由来した伝統的なものと、この店ならではの新たな感覚を切り開こうとしている。まさに愛媛県宇和島市の鯛めしに、魚師風仕立ての都会風な新感覚で、お昼の定食作り上げたと言えそうだ。ここでは、純日本式の魚料理としての上品さよりも、豪快な盛り付けで迫り、魚料理に餓えた都会のサラリーマンが納得する量で勝負している。食べ方は、どれも自由自在で特別な流儀等はないし、箸は気ままに進めてよい。さらにお味には、全体的に塩気を抑える工夫が取り入れられてあるため、中高年層にもありがたいといえそうだ。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21850&app=WordPdf
補足1:唐揚げと言っても、もちろん鳥ではなく魚の切り身の唐揚げである。
補足2:本濱のこの鯛めしは、愛媛県松山市より南の宇和島等の地域で食べられている鯛めしである。したがって、ここのお店で使われている魚は、全て宇和島あたりで毎日採れた魚の直送ではないだろうか。クンクンクン・・そんな印象を受けた。