以前の計画停電の頃、無停電電源の話を紹介したことがある。それ以来、その部屋の片付けをしている為に、色々古いハードウエアが出てくる。そこで、前回のようにRAIDの話になった訳だが、今回は、マルチCPUサーバーである。このようなサーバーは実際に購入してみないと、一定期間の振る舞いを調べることすらできないのが現状である。一方で、カタログやメーカーのHPからでは、よからぬ期待ばかりが頭を巡り、実際の問題点や残されている課題を知ることは出来ない。ということから、以前、自社開発のJAVAアプリケーション・ソフトの検証用に購入したサーバーを紹介したい。まだ、本体にタグがついたままになっているぐらいで、検証終了後はそのまま放置してあった。ディスクは300GBを2本でミラーリングにしてあり、今でも、センターサーバーやWEBサーバー程度なら、十分使える状態と思われる。
その話に進む前に、さらにもう少し遡ってみると、以前にもマルチCPU仕様のサーバーを使った事がある。それは、IBMが大型の技術をスケールダウンして企画・製造したPCサーバー720である。PCIとマイクロチャネル混合のアーキテクチャで、最大6CPU構成で稼動でき、さらに、ディスク12本のRAIDも搭載していた。まさに黎明期のPCサーバーである。IBM自社製のカスタムLSIをふんだんに投入し、同社でしか製造出来ないサーバー製品のようであったが、Windowsの場合、2CPUの実装でしかないのに、これが稼動中よく停止して困った。OS-2 なら6cpu まで全く問題はなかったが、Windows OS には大きな課題を抱えていたようである。そのくらい、Windows におけるマルチCPUは、評価に値しなかったのである。最近のことは詳しく知らないが、まだまだ不安な存在かもしれない。その点、SUN のSolaris は、まさに古くからマルチCPUのOSと言ってよいほど高い実績を誇る。
さて、結果的に、判りやすく、この4CPUのコンピュータの振る舞いを例えるとこうなる。おおよそ、実際の組織でも同じだと思うが、4人のグループで仕事をこなすことを想定すると、4人が平等に仕事をしようとすると、仕事を分けたり、再構成する為の時間が必要になり、それが、かえってオーバーヘッドになりかねない。そこで、誰か1人が重要なメインの仕事を引き受けることになる。残りの3人は、単独で完結する仕事を平行して行うことになる。たとえば、1人がプレゼンの資料を作成しているとすると、別の1人はそれに使う図面を作成したり、写真をロッカーから取出したりする。また1人は電話を取ったり、伝票を記載したり、見積りを作ったりする。そしてもう1人は、郵便物を受取りに行ったり、珈琲を入れたりするという分担になる。そうやって、社内の何処にでもある風景に置き換える事が出来る。1CPUの場合は、全ての仕事を細切れにして、それぞれ時々中断しながら、1人で少しづつ進行するしかないので、結果的に時間がかかることになる。
我々のような一般的な使い方に限ると、パフォーマンスモニターを見る限りコンピュータのOSは、今だ十分にマルチCPUを生かす方法を見出しているとは言えない。一方で16~32CPUぐらいのサーバー製品も増えているが、当面は1度に多くのアクセスに耐えるWEBサーバー系で威力を発揮している。この場合、256CPUとか512CPUでも効果は顕著に現れるとされているので、この用途でのマルチCPUは急激に進化すると思われる。一方で、全く違う視点から乗り物に例えると、4CPUは4輪駆動の乗用車と考える事が出来る。少々道が悪くても走行できる筈になっている。さらに256や512のマルチCPUになると多輪駆動に例えられる。つまり、駆動輪を増やせば、それだけ駆動力を確実に地面に伝達することができ、数輪程度の障害が発生しても継続走行は可能になる訳である。その様な例えで捉えることも出来る。そうなると、さまざまなメリットが出てくる。
このように、改めて内部を眺めながら、マルチCPUの効能を様々な分野で適用する事を考えると、「うーむ・・・」と自問自答するなど、学び取ることも多い。だから無味乾燥でも、今日のPDFのような写真は、美しいと思えるのである。また、そのようにコンピュータ・アーキテクチャを丹念に調べることで、明日からの生き方や考え方、あるいは、個人としての、あるべき姿も見えてくるかもしれない。この小さなサーバー中には、それでもふんだんに英知が組込まれているし、複雑な構造である筈なのにスマートでエレガントに仕上げられていて、自分達の未来を覗くような気がしてくるのである。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21951&app=WordPdf
補足1:DL560は、横幅寸法が483mmである。
補足2:DL560では、4個の緑色の放熱器の下にそれぞれ Xeon-MP CPU がある。拡張性はクロック周波数 3.0GHz 、最大CPU4個 、キャッシュメモリ 4MB L3 キャッシュ まで 可能である。
補足3:マイクロチャネルとは、IBMが1987年に発表した拡張スロット用バス・アーキテクチャ。スループットは理論値として40M~160Mbytes/sec 相当。