2011/05/06

いざ福島原発へ、悪夢に思う

 既に、福島原発の話題を書いて5回目である。決して得意分野ではないが、広島の賢人として、自分なりに痛み入るところがあるからである。それにしても、毎日のように福島原発の事が報道される中、大量被爆の危険性が分かっていながら突入しなければならない現場の作業員の方々を想像する度に心が痛む。そして、そこから連鎖的に原爆投下後の広島・長崎の歴史的事実を数多く思い起こさせるのである。

 さて、何が何でも、暴走する原発を停止させなければならない。そのために、今後は放射線量の高い場所での作業を余儀なくされる筈である。そして、次から次へと人を換えて作業を進めなければならない。これから突入する建屋の中では、4~5時間で年間の被爆線量を越える計算になる。既に、福島原発では、東電の社員はもとより、協力会社、東芝、日立、自衛隊、消防、警察など選りすぐりの1000名近い人達が作業に当たっているらしいが、今後は彼等もすぐに許容被爆線量の限界を迎える。つまり、最初に専門家が現場から離れなければならなくなるのである。そして、次は誰が行くのか。そのために、全国から60~65歳の健康な方を募集し、日当に加えて作業終了時には、被爆線量の1ミリシーベルトあたり1万円の放射線手当てを支払う。そして、事後の治療には通院・入院・手術の費用を一生涯国が負担する。ただし、当人の死後は火葬にせず石棺に入れて地中深く埋める。そんなアナウンスがいつ出るとも限らない。少し心配している。
 
 厚生労働省は、既に苦し紛れに作業員の年間被爆線量の限度を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げている。これは、あからさまに、今すぐ死ぬことは無いので現場に残って作業を進めよと命令しているのに等しい。また、海江田万里が東京消防庁の隊員に向かって「速やかにやらなければ、処分する」との発言は、「お国の為に死ね!」と言っているのと同じであり、それらを裏付ける発言であった。これらは、旧日本軍のやり口と同じである。このような事が、今後はぎりぎりの選択肢として原発で作業される方々にのしかかってくるに違いないのである。ここでも心配は尽きない。それにしても、原子力安全・保安院の西山君は、もっと現場の人達に気を使い、今後は自分の目で見た事実を、直接現場から報告してもらいたいものだ。

 残留放射線の多い場所での作業の危険性は、広島・長崎で既に証明されている。救護の為に現地広島・長崎に入った人達は、その大地から直接被爆したり、あるいは黒い雨によって被爆した。それだけではない、被爆した人々を看護することで、その被爆者からも直接被爆をしたのである。そして救護にあたった人達までも、数年後は様々な癌を発祥し、死ぬまで苦しむことになる。抜本的に治ることはない。元のDNAに戻す薬が無いからである。私の叔父は、直接被爆して30日間苦しんで死んだ。しかし、広島在住の叔母、叔父は、少なからず残留放射線で被爆していて、老いて原因不明の病死を遂げている。日常的に不調を訴え続けながらも、真の苦しみを知っていたのは本人だけだった。最近は、被爆線量によって、体にどのような変化が起こるか明確になっている。それに言及しない政府、下隠しにして報道するNHKには憤慨する。

 そんなことより、放射線の影響は、ずっとずっと未来永劫続くのである。そして風評被害は、野菜や牛乳だけではない。今後は、そこで育った人達にも目が向けられる。今はまだ、放射能が降り注いだ地域と放射線の量は、少なからず曖昧かもしれない。しかし、先行き正確な情報が公開されると、実際はとんでもない量が大地に降り注いでいた事が明らかになるのである。その時、その場所で育った子供達にも風評被害が襲いかかるに違いない。かつて、広島・長崎でも男女を問わず結婚できない人が多かった。「原爆で被爆している人の子を嫁に貰うわけにはいかない」と言うのが理由である。いつも、表向きは優等生のような発言をしていても、いざ自分の身内のことになると一変するのである。そして、そのような「致命的な差別のレッテル」を貼ってしまうのは、日本人の得意技である。私は、野菜などの風評を聞いて、その事を思い出してしまった。これにも心配している。

いち早く福島原発の被害や影響、そしてその未来を知るには、こちらのブログがお勧め。
http://takedanet.com/

補足:放出された半減期の長い放射能の総量は変わらない。大地に降り注いだ放射能を人が吸い込むと体内に残る。人の体に入った放射能は焼却すると大空に放出されたり灰の中に残る。そうやって、福島原発から放出された放射能は、少しづつ居場所を変えながら地球上を拡散していくだけである。