2011/07/27

SUN Fire 280R

  どのような昔話にでも、現在に繋がる接点がある。・・・・それにしても、今後は、4Uサイズのサーバーの内部なんか、もう覘くこともないだろう。そこで、今日は、そんな分厚いサーバーのゆったりとした内部を撮影してみた。もちろん、奥の部屋から発掘された製品である。このサーバーの中には、大型のファンが3基も稼働していて、常に「ゴーっと鈍い音」を出している。近づいて手をかざしてみても、あちこちで張り付きそうになる。そのくらい、この時期のサーバーは、冷却に力が注がれていたのである。背景には、少しでも高い周波数でCPUとそれを取り巻く周囲デバイスをドライブし、熱くなった筺体内部を強力なファンで冷却するという、常に危ういバランスで動作する仕組みだった。それでも、その稼働期間は、次のリプレイスまでのおおよそ8~9年と長いので、システムとして、熱的にはかなり余裕を持って設計されている。

補足1:オーディオ機器やコンピュータのラックは、EIAの規格品が使われる。幅19インチ=約482.6mm、高さ1.75インチ=約44.5mm のことを「1U」=1ユニットと呼んでいる。4Uサイズは、この高さの4倍=約178mmになるように設計された筐体のこと。

 PDF写真では「黄色いシールの上に黒いファンのマーク」が描かれているスチールの下に直径12cm 程度のファンが3基並んで回転している。中央のファンが、2個の青いCPU Module を専門に冷却していて、他の2基より強い風を送り込んでいる。向かって左側のファンは、大型の8GBのメモリーボードを冷却し、向かって右側はRASボードや64bit PCIボードを冷却している。CPU Moduleは、1.2GHzのULTRA SPARC ⅢCu  で 64bit  RISCアーキテクチャを実装している。Cu とは銅配線を使用して、高いクロックによる耐熱性にも優れる仕様であることを示す。また、CPU Module内部には8MBの高速SRAMによる2次キャッシュを備え、当時としては贅沢な構成で、かなりパワフルなCPUであった。今でも、Solaris 8/9/10 では、優れた実力を発揮する筈である。

 補足2:SPARC→スパークと読むが、「?発泡する」ではなく、Scalable Processor Architecture の略である。SUN Microsystems, Inc.(以降SUNと略す)が 開発・製造しているCPU(RISCベースのマイクロプロセッサ)のこと。頭にULTRAが付くとSUNが製造する64bit SPARCで、SPARC 64と後ろに64が付く型名は、富士通が製造してSUNに供給している64bit SPARCである。

  CPU Module 以外にもいくつか特徴がある。1つは、サーバーが電源供給障害に見舞われてシステムダウンしても、30分程度ならイーサネットやモデムを使って外部から侵入し、再起動、リセット、電源投入はもとより、POST Open Boot 診断、ブートログ、実行ログ等を収集できるRSCカードを標準で搭載していることで、勿論、これは、従来のSun Management  Center、Sun VTS、kadbカーネルデバッガ、OpenBoot PROM、OpenBoot Diagnosticsなどの既存の監視や診断ツールを補う形になる。そしてもう1つ、FC-ALコントローラを搭載し、内部ディスク2台のFCループへのコネクトをはじめ、外部ポートを介して同じループにアクセスすることが出来る。これには、本体背面に設置された銅製のHSSDC (High-Speed Serial Data Connector)を使用する。つまり、外部のディスクと内部のディスクを連結したり、一緒にRAIDのシステムを構築することも出来る。外部ポートは、Stor Edge Multipac -FC 、StorEdge T3 Arrays をサポートしている。A5000シリーズへは、StorEdge Dual-Loop PCI FC/AL アダプタを介して接続する。

 Fire 280Rには、まだまだ当時としては先進的な試みが数多く搭載されていて、いずれも掘り下げて調査することで、多くの発見があると当時は目論んでいた。先で時間的余裕が出来たら、じっくり検証してみたいと思う気分になったものである。しかし、今となっては、あくまでも趣味でないと出来なくなったし、単純に知識が増えることに喜びを感じる事が出来るかどうか自信がないのである。また、知識が広がり、その連鎖で整合性が高まるにつれて、やはり、それらを使用して新たなサービスを展開しないと、自己満足に終わってしまい、社会性という点において寂しいものを感じる。それもこれも、SUNという会社がなくなってしまった現在では、懐かしがるだけで、まったくそのような気力を失ってしまっているのである。

 さて、まとめると、現在のサーバーにおける最低条件でもある、Reliability、Availability、Serviceability つまり、システムとしての信頼性、可用性、保守容易性は、既にこの時期にSUNによって基礎が築かれたといっても過言ではなく、その先進性が同社の最大の魅力でもあった。かつてのSUNは、全世界のサーバーの90%を占めていた時期もあり、優れた性能を実績という形で証明してきた。一方で、社会貢献でも高い評価を得ている。そして、多くのエンジニアやIT志望の学生から、将来を存亡された企業であった事は言うまでもない。2009年SUNが買収されると報道された時、誰もがせめてIBMにと考えたに違いないが、残念ながら、オラクルというつまらん会社に買収されてしまった。それによって、SUNのDNAは徐々に実体が消滅することになる。そして、長年サーバーやワークステーションなどに携わってきた初老達の心の中で、SUNというブランドイメージだけが生き続けることになるのである。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21989&app=WordPdf

補足3:CPUの上にある白いケース(緑の縁取り)は、CPUの着脱に関する注意点を書いた書類を収容している。さらに、サーバーの前面方向にある緑の冶具はCPU専用の着脱用ドライバーになる。実際に白いケースを開いてみると、CPUを外す時は、その専用のドライバーを使い、左右のねじを均等に緩めながら、垂直に持ち上げるように、あるいは、装着するときも同じように、と注意が残されている。CPUの長い寿命に特化した配慮と言えよう。
補足4:誰もがせめてIBMに:最初の報道がIBMであったためである。2番手企業は想像すらできなかったが、日本の詳しいユーザーは、SUNへSPARC64 CPUを供給したり、SUNからサーバー製品をOEM供給してもらっている富士通が買収にあたるべきだと考えたようだ。
補足5:6月20日、世界一になった日本のスーパーコンピュータ「京」は富士通製で、使われている68,544個のCPUは、同社のSPARC64 VIIIfxである。