2012/04/13

マルちゃん正麺


    麺業界で、マルちゃんほど面白く変ったCMを提供する会社は他にない。赤いきつねと緑のたぬきの武田鉄矢、榮倉奈々さんは、古くはハチャメチャな感じであったが、最近は格調ある雰囲気でまとまってきた。商品に歴史もあるし、知名度も高い、おまけに売れているので、多少遊びを含んで余裕さえ感じる。個人的には、真矢みきさんの面白い展開が続く「麺づくり」と「屋台十八番」のCMが好きだ。真矢みきさんの人柄というか芸達者な感じがよく出ている。宝塚出身の人たちは活躍の場が広く、東芝の天海祐希さん、金麦の檀れいさんなども絶好調である。「昔ながらのソース焼きそば」には、タカアンドトシが起用されているが、残念ながらどこが面白いのかわからない。

    奥ゆかしさの中に、秘めたるメッセージを織り込むといった旧来のCMから、最近は、ストレートで分かりやすく、おまけにあつかましくも、短いメッセージでまとめるという傾向が色濃く打ち出されている。「嘘だと思ったら食べてみてください」と言う、役所広司さんの口を突いて出る言葉にも、その一端を垣間見ることが出来る。このシリーズには他にも、「食べ終わってお礼を言う」とか、「美味い美味いと3度、ある時は4度言う」とか、「マルちゃんが無いと機嫌が悪くなる」とか、「お客のもてなしに、鰻からマルちゃん正麺に変えた」とか、かつて無いほどの幅広いバリエーションを用意して、微妙な美味しさの攻撃をしかけてきた。最近の「鰻からマルちゃん正麺に変えた」は、ずいぶん抵抗を感じるが、鰻好きの人は少し気になるに違いない。

    一方、CMではないが、電子レンジでチンをして、水でほぐすだけの麺道楽という商品がある。そば、うどん、そうめん、中華めんと4種類揃っているが、この「麺道楽」のネーミングの由来は、お鍋で麺を茹でなくても良いから、面倒になるというもので、それを「どうだ!面白いだろう」と押しつけられても、我々としては考え込むしかない。それより、麺道楽の麺と従来の手順で作られた麺の食感や喉越しの違いを「綾鷹のように、一般消費者に街頭で」比較してもらいものである。まあ、CMにしても、このネーミングにしても、人の心をどのようにして掴むかという点においては、ひどく拘りを感じるわけである。

  東洋水産㈱が、有名になったのは、赤いきつねと緑のたぬきの1978年からである。他方の好敵手ともいえる日清食品の「どん兵衛」は1976年からである。この即席麺における「仁義なき戦い」を繰り広げてきた2つの商品は、まさに、我が青春の胃袋を満たしてくれ、高度成長時代を牽引した商品なのであるが、「どん兵衛」の目先を変えて次々と新商品を投入するのに対し、マルちゃんは、あくまでも麺と厳選された出汁にこだわり続け、「どん兵衛」より、それは常に一歩リードしてきた。そんな東洋水産㈱が、決定的なネーミングの「正しい麺=正麺」として登場させた商品は、誰でも少々興味深いに違いない。

  そんな足跡からか、この「マルちゃん正麺」を歴史的な偉業の1つとして写真を撮っておきたい。そこで、苦慮するのが実物の麺の上に添える具材の種類である。そこには、その人が歩んできたラーメン好きとしての拘りが如実に表面化してしまうからである。今日は、味噌味を取り上げるが、北海道系の味噌ラーメンの代表的な具と言えば、焼き豚、メンマ、茹で玉子、ネギである。安っぽく感じられるせいか、最近はコーンがめっきり影を潜めてしまった。それでも、ラーメンの上に具をたくさん載せると栄養豊かに見えるが、味がぼけてしまい、本来のマルちゃんの良さが出ないことになる。そこで、写真用として少し強調感は出ても、味噌との相性に配慮し、「帆立のバター炒め、コーン、かいわれ、なると」 全て少量という形でまとめてみた。麺はかなり太い乾燥麺で、お湯で4分と早く茹だる割には、食べ応えのあるモチモチ感に驚かされる。また、しっかりした太麺の喉越しがとてもいい感じである。これを「生麺うまいまま製法」といい特許出願中らしい。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%211122&app=WordPdf

補足1:昔ながらの図柄が浮き出る「なると」は少なく、入手が難しくなった。今日の「なると」はそれでも、まあまあ気に入っている。どうよ。
補足2:東洋水産㈱が推奨している味噌味の具は、少なめのベーコン角切りとキャベツ、コーンとネギのようだ。あくまで少なめに拘りがある。