2012/04/02
オーディオマニア25
たまに昔の仲間が集まると、オーディオ談義が始まることがある。既に気持ちの上では整理し尽くされた世界なのだが、Hi-Fi が生活の一部として今でも日常化していると、どうしてもその再生装置のことやら、何十年も試行錯誤を重ねて来た「自分の追い求める音」と言うものを話してみたくなるのかもしれない。私のスピーカも30数年とよく働いてくれたので、今度、全てのユニットとネットワーク部品の交換をしたいと考えている。そんな話を出すと、「音のイメージが変わってしまい、新たな課題を背負い込むから止めたほうがよい」と指摘を受けてしまった。しかし、当初からの計画でもあるし、準備のためのコストも掛けて来ているので、不安もあるが当時の原稿を読み返しながら記憶を辿って、ブログにその後の続きを整理してみようと思う。そうでもして歩みださないと、交換用ユニットや関係部品を残したまま、私の方が先に寿命がきてしまう可能性もあるからである。
そんな流れから、現在も音出しに使っている「3ウエイSPシステム」を紹介したい。外観は、上のタイトル写真の通りで、ウーファ(ミッドバス)がLo-D (日立製作所)L-205、スコーカとトゥイータがYAMAHA(日本楽器製造)のJA-0870とJA-0572である。実験的に更なる高域再生を試みてテクニクス(松下電器産業)のリーフ・トゥイータやパイオニアのリボン・トゥイータを接続してみた。これらを何回かに分けて紹介する。
キャビネットは、2つに分かれていて、上部4/5に各ユニットを円形配置してあり、音響中心はキャビネットの中心、同時に、スコーカとトゥイータは縦に並べて配置し水平方向の指向性を改善している。内部空間体積は約75リットル(吸音材充填後で65リットル)である。通常50リットルの容量でL-205は、F0c=40Hz で Q0c=0.5 となり臨界制動になる。しかし、先行きスーパーウーファの接続を予定していたので、キャビネットは、やや大きめに設定し F0c=34 とQ0=0.36 程度に下げておきたい。キャビネット内部には、ユニットに関連するピークコントロール回路、定低抗化回路等を収容している。アッテネータL082は、スコーカ用とトゥイータ用をそれぞれ前面に配置した。一方、下部1/5は低、中、高の分割フィルタを収容した引き出し構造になっていて、内部は各部品をマウントした基板が収まっている。これによって、帯域分割フィルタの定数変更も容易に出来る。
キャビネットの板の厚みは全て30mmで、背面バフルは壁に密着できるようにフラットを実現し内部を補強している。各ユニットはフレーム部がキャビネットのバフル面に沈むように、バフルに座ぐり処理をして中高域周波数特性への影響を抑えている。引き出し手前には2pin のキャノンコネクタを配置し、パワーアンプに接続している。キャビネットの製作はフォステクス、引き出し部には建具屋職人さんの手を借りている。前面部の塗装指定は、黒のつや消しだったのだが、製作関係者の言葉を借りると、「黒のつや消し仕上げより、米松の付板の方が綺麗なので、側面と同じ付板仕上げにし、気に入らなければ自分で塗装してください」とのことであった。以降、そのまま30年それを尊重してきた。
さて、今回はウーファL-205を中心にまとめる。設計者である日立製作所の河村信一郎さんは、ある日、編集部に手みあげにアイスを持ってこられて、一同それを食べながらSPユニットにまつわる苦労話を聞いた記憶がある。L-205は、我々の様々な実測データでも特別優れた性能を備えおり、それを作った人だということで、我々は無意識のうちに崇拝していたのである。その従来からの改良の多くは、世界的な特許で固められていたので、ブレイクスルー的な価値の高い苦労話になっていた。それを、一言も漏らさず記憶に残したいと願っていたのを思い出す。その代表的な幾つかの特許を記憶から列挙しておきたい。
続きはこちら。
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%211121&app=WordPdf
補足1:サンドイッチメタルコーン(日、米特許)、ギャザード・エッジ、ギャザード・スパイダ(日、米、英、西独特許)、Lo-D アクチュエータ(日、米、加特許)ほか。
補足2:上の見出しは、1983年「ラジオ技術」本誌に掲載した時のタイトル。撮影は無響室の中、測定用マイクはB&K1/2インチ使用(右)。リボン・トゥイータを取り付けて視聴中が左の写真。
補足3:引き出しにネットワーク回路を搭載したスピーカ・キャビネットは世界で初めてである。やはり使いやすく、今でも自慢できる機能の1つである。