2012/05/08

オーディオマニア26


      国内の放送用のモニター・スピーカというと、古くは三菱電機の2S-305 が有名で、ラジオ放送の調整室には、どこにでも置いてあった。また、レコーディング・スタジオで使われる モニター・スピーカ というと、JBL-4320/4331か、あるいは、その3ウエイ版の4333等が多かった記憶がある。モニター・スピーカは、音の専門筋が使うので、必ずしも我々が重視するところの性能が優れた製品が選択されているとは限らない。ただ、音を収録する場所で使われるために、何処の調整室でも、生々しい音がしているので勘違いすることも多い。また、現場で音を扱う人たちは、音量を上げてモニターするために、我々一般人に比べて難聴が進みやすい。そして、その悪循環は、ベテランになればなるほど顕著に現れ、巨大な音でモニターするようになる。したがって、大方のモニター・スピーカは、周波数特性やひずみ率より、はるかに耐入力や最大出力音圧が問題にされることが多いのである。

  一般的には、モニター・スピーカと言うと、無色透明でひずみが少なく、周波数特性もフラットでジャンルを問わず「良い音がする」というように考えられている。そういうイメージに近いのが、YAMAHAのNS-1000Mである(最後のMはモニターの略)。日本楽器製造㈱のような会社では、いたるところで統一的にリファレンスといえるスピーカが必要になる事が多い。楽器メーカーが作るスピーカだから、楽器演奏者も使えて忠実度の高い音を出さなくてはならない。そういう意味で、単にオーディオ好きの家電メーカーが作るスピーカとは違った責任があったわけである。このNS-1000Mは、発売後スウェーデンの国営放送でモニター・スピーカとして採用されるなど、にわかにモニター・スピーカとしての地位を確立していったのである。

    そのNS-1000Mは、その後何度も改良が加えられてきた。しかし、スコーカとトゥイータは、製造上の改良はあるにしても、振動板材料、実口径、磁気回路などは完成しており、進化は見当たらない。目に見えて改良されているのはウーファで、確かに、誰が鳴らしてもウーファの再生帯域から中高域への音的なつながりに課題を抱えていたことは明らかだったと思う。今となっては、そのくらいスコーカとトゥイータの出来が良かったのかもしれない。そこにあった課題とは、ウーファの振動板の材質の音速、密度ρ、弾性係数E、そしてE/ρに関する物理特性であったり、33cm と 8.8cm のウーファとスコーカの実口径比からくる指向性の繋がりによるものであったことは明白である。後に発売されたNS-2000では、カーボンファイバー(ベリリウムとの物性的な相性が良い)を使ったウーファに改良されている。

  そのスコーカとトゥイータの単品ユニット版が発売されたのを契機に、それらをそのままアルミサンドイッチ・コーンL-205と組み合わせることにしたのである。トゥイータは、NS-1000Mのそれに対して、高能率化の為に磁気回路には内磁型を組み合わせてあるJA-0572で、強力なアルニコマグネットによって一段と過渡特性が優れている。したがって、NS-1000Mのそれとは別物と言えるかもしれない。スコーカは、ほぼNS-1000Mのものと同じである。このベリリウム振動板の音速、密度ρ、弾性係数E、そしてE/ρなどの物性的な相性では、アルミなどの金属が優れているし、口径比と言う点では、20cm 径のウーファとの繋がりは良い筈である。
  
  ただ、どのスピーカ・ユニットもかなりの曲者で、上手く繋げるためには、幾つかの工夫が必要になる。そのために、実際に無響室での音圧周波数特性や、インピーダンス特性など、幾つかの実測データ収集とカットアンドトライ的な作業が必要になるのである。
ではこちら
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