2012/05/19

ねんりん家


   製造には、大変な手間と根気の必要なバームクーヘンだが、残念ながら、それほど美味しいと思ったことは無かった。その理由の1つが、口の中の水分が全て吸収されてしまうところにある。まず、この部分を何とかしないと、美味しいとかなんとか、それ以前の問題だと思っていたのである。だから、マーマレードとか、チョコレート、カスタード等を薄く挟み込んでほしいと思っていたのである。しかし、そんなケチばかり付ける私でも、この「ねんりん家」のバームクーヘンは、どれをとっても美味しいと思えたのは驚きであった。

  今時、集中して精魂使い果たすような菓子作りを、何年もかけて本場で学び、受け継ぎ、さらに何年も窯の前で試行錯誤を重ねてそれを改良し、バームクーヘン作りの伝承者に留まらず、もっと、もっと、身近で美味しいお菓子に仕上げたいと思う人がいたというのは、半ば感動的ではあるのだが、それも、これも、最後には多くの人から賞賛されて、商業ベースに乗せる事が出来たなんて、途方もないことだと思うのである。

  そういう菓子作りの姿勢とか、長年積み重ねてきた技術にこそ、「ねんりん」と言う言葉がふさわしいわけで、けっして同心円状の絵柄のみを象徴したネーミングではなさそうである。ねんりん家の代表商品は2つある。1つは、「ストレートバームやわらか芽」という名称で、小麦、卵、乳、大豆、オレンジを原材料としている、いわゆるバームクーヘンで、ふっくらしてカステラのような仕上がりである。もう1つは、「マウントバームしっかり芽」という名称で、小麦、卵、乳、大豆を原材料としている。表面に砂糖をまぶしたフランスパンの様に、カリッとしていて内部はやわらかい。いずれも、高い技術に裏打ちされ、徹底して拘った食感に、かつて無い美味しさが潜んでいたのである。

  今日紹介するのは、「ストレートバーム ショコラ&ココア」と、「マウントバームの桜の香り」版である。前者は、ココアを何層にも巻き込んだストレートバームの小型版にチョコレートをコーティングしてある。そのまま戴いても良いが、電子レンジで30秒ぐらい温めてみると、熱くとろけそうな食感で、薫も広がり益々美味しい状態になるのである。そしてもう1つの後者は、これもまた自然の様な桜の薫りが広がり、何とも言えない美味しいバームになっている。この2つは、まったくもって、口の肥えた「現代の若者にも美味しいと言わしめる味作り」がなされているように思える。

 さすがに、いずれも菓子職人の心意気を感じさせる逸品である。素材、技術、時間と、人生の大半をそのお菓子作りに費やし、懸命に菓子の美味しさを追求してきた重みさえ感じさせる。ここまで、洗練された商品に練り上げられていると、他の追従を許さない領域に達したバームクーヘンと言うことになる。恐らく多くの人が、ある時は 「シンプルで美味しい」 また、ある人は 「優しくて美味しい」 と様々に表現するかもしれないが、誰しも無条件で美味しさを認める商品になっていると思う。だからむしろ、もっと他の色々違った種類のお菓子を食べてみたい衝動に駆られる筈である。
ではこちら
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