こういうお菓子は、どのような分類にすると、納得がいくのであろうかと考えることがある。伝統的な製法技術を突き詰めて、さらに工夫に工夫を重ね、地域や時代にかなう製品に仕上げる。この時の分類は、伝統的な製法技術を分類の中心にするのか、あるいは評価された地域とか、時代を反映した時の社会性を加味した分類なのであろうか。例えば、フランス人が日本伝統の職人芸の和菓子の技術を学び、フランスに持ち帰ってフランスの食材を使って、独自の工夫で地元の人たちに好評を博するお菓子を作ったとしたら、既に和菓子ではない。かといって、バームクーヘンに抹茶を加えて焼きあげれば日本菓子かと言えば、全くそんなことも言えない。そんなに簡単に、日本菓子の牙城は崩せないのである。
以前にねんりん家(Nenrinya)のバームクーヘンを紹介したことがある。これは、本場の物とは異なるかもしれないが、やはりドイツ菓子であった。しかし、今日紹介する、この「ちいさなバームツリー」は、いったいどのような分類になるのであろうか。ま、そんなことを真剣に考えるのは、全国菓子協会の会長にお任せしたいが、意見を求められたとしたら、「このバームツリーは、日本菓子の分類」に入れてよいと回答すると思うのである。それは、串に刺さり、何処となく日本菓子風の雰囲気を醸し出しているからではない。決定的なのは、「お1人様用1本」として作られているからである。
実は、この「お1人様用」で1本または1個と言うのが、私の「日本菓子への分類要素の1つ」なのである。生クリームが入っていようがそうでなかろうが、現在では、分類要素に入れてはならない。基本的に1人1個で満足する範囲と言う事が大切なのである。こういう、案配を配慮した物作りの姿勢に日本菓子の伝統があると言う事になる。たとえば、歴史的な職人芸の和菓子を見ると、どのように綺麗に仕上げられていても、もったいないからといって2人で分けて食べることはない。もっとも「作法を逸脱する」例外があったとしても、日本伝統のお菓子は、元々「複数人で切り分けて食べるように考えられていない」のである。
最中、饅頭、あんこ餅、そのほか、だんごを考えてみても、串に3個も付いているが1人で食べるものである。もちろん甘納豆も1人で食べる量が決まっている。しかし、他国から入ってきたお菓子は、作る側の論理が優先していて、定量で合理的と言うか、切り分ける物が多いのである。これは、参加者多数の場合は、1人分の量が減ることになる。我々の長い歴史を誇る日本文化の中で、こういう事態は許されていない筈だ。
長い歴史を誇る長崎のカステラ、松山のタルトも良い例である。私に言わせれば、長崎という日本の地名をつけようが、抹茶を素材に混ぜようが、切れ目を入れようが、所詮カステラは舶来の菓子なのである。タルトも、柑橘系の餡子を使おうが六時屋が作ろうが一六が作ろうが、いずれも洋菓子なのである。と、まあ、話は長くなってしまったが、そんな分類方法から、ドイツの製法なのだが、この「ちいさなバームツリー」は日本菓子に分類して良いと思っているのである。また、舶来物でも、このように日本菓子の流儀にあったものは多い筈である。
ではこちら
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