2013/02/22

多摩川3

    多摩川との付き合いは長い。自然で僅かな流れの変化や、人工的な護岸の変化も見守ってきた。この場所に来ると、雑多な周囲の喧騒を離れるせいか、その小さな変化とか、平素無関心なことでも気に留まり、先々のことまで詮索することがある。時折、新たな工事を見かけると、素人ながら、余計なことだが「そこよりも、あちら」の方に手を入れたらどうか?などと思うこともある。


     去年の10月中旬から多摩川低水護岸工事が、進められてきた(上の写真は工事前の様子)。この場所は、上布田町あたりで、調布駅側から望むと、ちょうど電気通信大学のグランドの裏にあたる。ここの草木をはがして縁石ブロック、カゴマット、コンクリート・ブロックで護岸を造成するのである。そこには、ちょうど、川の中ほどに孤島があって、そこの流れはいつも緩やかで、夕方になると糸をたれる人が集まり、穏やかな釣場になっていた。その孤島との距離は、おおよそ20~30m程度で、孤島と平行した土手部分は70m~80m程度、そこをふさいでせき止め、水をくみ上げて工事を進めるというものである(下の写真は12月末頃の水をくみ上げている時の様子)。ただ、そんなことが、今、本当に必要なのだろうか。


 それにしても、ちょうど去年、東北の復興予算を他の事業に転用するのがニュースで話題になって、ここの工事開始もタイミング的にも一致して始まったことから、それに該当するのではないかと心配した。できれば、これからは、案内看板に「予算の出所」も明記して、ガラス張りにして余計な心配をさせないで欲しいものである。もしかしてここは、35年前の「岸辺のアルバム」時代からの悲願の護岸工事だったとしたら申し訳ないが、ここは急激な流れになりにくい場所なので、自然を残したままでもよいはずだ。


  さて、建設業を初めとする、不動産業、製造業、情報産業など、多くの業界が期待を寄せる中、政府は声高々に金融緩和、財政出動に続き、成長戦略を打ち出そうとしているものの、しばらく読めそうもない景況感に不安を隠せない庶民は多い。株価・為替を眺める目線は、上を向いているが、足元で輸入頼りのガソリン、公共料金など円安の影響を実感すると、酔いがさめるかのように、現実に頭を抱えてしまうからだ。ま、あたり前だが「金持ちは少しだけ金持ちに、貧乏はより貧乏へ」と格差が広がるだけで、国民全体が平等に豊かさを享受出来ることはない。企業も同じで、資産や内部留保の多い輸出企業には少し潤いになるが、中小企業の倒産は増えるといわれている。また、成長戦略には、規制緩和がつき物だが、所詮は新たなルールで競争を促し「敗者もしくは弱者を消す」これが経済成長に繋がるのである。

  ここ20年ぐらい、重機が朝早くから暗くなるまで大きなエンジン音を発して稼動している姿を見ることは少なかった。最近は、この地域の特殊性でもあるが「京王線の地下化工事」を端から眺めて、「なんか、活気があっていい」と思っていたし、このように綺麗で便利な駅ができると将来も発展しそうに見える。さらに、あちこちで建設、土木、河川、ビルなどの工事が始まると、ふと昭和のバブル時代を思い起こさせ、日常にある現実とは大きな隔たりを感じながらも、何かそれが懐かしく、高揚感さえ沸いて来るから不思議である。あの頃は、よかったと思う人も少なくない筈だ。そのような風景を作るのも政府の狙いかもしれない。

  その気分を忘れないうちに、今の高揚感を象徴する絵を撮っておきたい。きっと将来、「そんな多額の借金をしてまでやるべきことではなかったし、他にもっと、もっと、やるべきことがあった」と反省するに違いないが、かすかな期待感に寄せる思いと、昭和のバブルを髣髴とさせるイメージが重なる絵を探して、教訓として残しておきたい。
ではこちら
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