2013/06/18

弁当シリーズ8

  最近は、東京でも全国各地の主要な駅弁が購入できる。いつでも、気が向いたら好きな駅弁が戴ける環境にある。だから、人生をより楽しくする事が出来るかもしれない。「東方の弁当をもって西方を目指す」事も出来るのである。しかし、そんな交錯した気持ちで、真の駅弁の楽しさが分かると思っているわけではない。弁当は、万人が愛する「もてなし料理」の一種である。車窓から眺める「その風景」と窓から流れ込んでくる風が顔をかすめていく感触が、この駅弁を「ひときわ美味しいものに引き立てている」と思えるのである。それも昔のことだが、「駅弁は歴史があるほど美味しい」といわれる。その由縁には、ほのかな薫りから、遠い記憶を呼び起こす懐かしさが漂うからである。しかし、ふと我に返ると、窓は完全密閉、駅弁を開けると車両内部がその薫りで充満して、ちょっと恥ずかしい思いをするかもしれないが、流れていく車窓を眺めながら戴くことに幸せを感じるのである。

  ということで、今日はとっておきの駅弁「ぶりのすし」である。これは久しぶりに堪能できた。たいへん美味しい!元々個人的にも魚系が好きというのもあるが、あの生の「脂と臭いの強いぶり」をてなずけて、何とも爽やかで食べやすい駅弁にしてある。かみしめながら、ぶりの風味を消さず、臭みを抜くための工夫がなされていて、そこが絶妙で素晴らしいと思ったのである。姉妹商品に「ますのすし」と言うのがある。こちらは、戴いても「また食べたい」と思うことはないが、お土産として時々戴いたりする。この「ますのすし」の方が知名度が高いのだが、しかし、断然美味しいのは、こちらの「ぶりのすし」である。同じコンセプトで容器も同じ仕様で作られているので、外見もよく似ているが、間違ってはいけない、美味しいのは「ぶりのすし」である。

  このような腐りやすい「生の魚を原材料に使う駅弁」は、酢や笹を使い抗菌効果を高めた材料で包装されている。押し寿司の形式であるがゆえに、中身より容器のほうが高くついていると思えるような贅沢な作りになっている。この圧力によって、ぶりの旨味を酢飯に写すのである。このような「自然の薫りを力で移し、独特の旨味を追求する」ところに奥ゆかしい美味しさが広がるのである。しかし、火の通った食材を使う駅弁に比べると、時間とともに早く消費期限は迫ってくる。だから、「入手したら、すぐに食べるのがよい」かと思われるかもしれないが、実はそうではない。ぶりの脂が「かぶら」やお米に浸透し、にわかに酢飯にぶりの味が染込む頃、つまり製造後24時間程度後がベストではないかと思うのである。ま、「最も美味しく戴く」には、人に薦められないが「危険が伴う腐りかける寸前」ということだろう。そうなると、何といっても、面倒なのが保管状態である。暖かい車内や室内常温に置けばすぐに腐ってしまうし、冷蔵庫ではそのままだとご飯が硬くなる。だから、空気を抜いたフリーザーパックで冷蔵保管する。そうすると少しだけ乾燥を抑える事が出来るのである。

  そして、今日はもう1つ、この「ぶりのすし」によく似合う添え物を用意した。伝統の京都西利の漬物である。こちらは袋から取り出し、軽く絞ってお皿に乗せるだけで、いただける。それだけで、京都の伝統的なお味がすぐに蘇るのである。この京都西利の漬物は、職人が自然の野菜を大切にし、加えて伝統を守るこだわりの製造技術が活かされている。この漬物の作業工程は、寒い作業場で冷たい水を使いながらの作業で、職人にとっては厳しい現場といえる。そのような作業環境で、伝統にこだわり続けて来たのが京都の漬物なのである。京都西利には、定番的で伝統的な商品から、新たな研究開発が生み出した創作漬物まで、色々取り揃えられているが、この懐かしさのある安定した安心感が伝わってくる漬物の食感は、日本人としての美食意識をさらに高めてくれる逸品と言える。
ではこちら
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