明治や森永のような、国内のお菓子メーカーのチョコレートは、甘さを控えめにして、上品で滑らかに仕上げてある。そういうところに、日本の伝統的な美学を感じるといったら「言い過ぎ」かもしれないが、50年ぐらい前からその傾向は認識されてきた。しかし、海外の会社が入ってきてからは、「美味しさの表現力」の違いに気づき、大胆で分かりやすい食感に若者が飛びついてしまったようである。そういう輸入品の寄る足並みに押されて、以前より増して国内品は、益々寂れた存在になってしまったようだ。一度でもより甘いもの、あるいは刺激の強いものを口にすると、その印象が強く残り、控えめなものは、影を潜めてしまうのであろう。
海外といっても、様々な国からカカオやチョコレートが輸入されているが、例えばロッテ等は、価格的にも庶民的で万人に好まれている。最近の人は、ロッテは新大久保の会社だと認識している向きもあるが、そうではない。サンディエゴのおばさんが、孫が勤めているソニーと言う会社は、アメリカの会社だと思っているのに似ている。そのロッテのチョコレートの中で息の長い美味しさを誇るのが、バッカスチョコレートとラミーチョコレートである。いずれも、洋酒が入っているので、刺激が強く食べ応えもある。しかし、これらは、洋酒の入ったチョコレートにもかかわらずチョコレート自体にも手を抜かず、しっかり滑らかに仕上げてあり、ヨーロッパから入ってくる安易な洋酒入りのチョコレートとは一線を画した仕上げといえる。
そんなマーケットに割って入るべく、森永製菓のPrivate というチョコレート2種類が季節限定で販売されていた(過去形)。2種類とも箱の色が奇抜で、いかにも「満を持して」といった期待感をパッケージの色彩に表現してあり、早速手が伸びてしまった。これって、商品企画の部長あたりが、「もっと目立つ絵柄にしろ!」とか何とか檄を飛ばしたんだろうなと思わせ、「角度によっても、一寸派手過ぎる出で立ち」をしている。裏面にはチョコレートのカットモデルが描かれ、1つは、緑色の箱に入ったラムケーキチョコレートで、グリーンレーズンとラム酒を含んだケーキを混ぜて、ビターチョコレートで包んだ形になっている(ラム酒使用 アルコール分3.4%)。もう1つは、ピンク色の箱に入ったマロングラッセとブランデーのチョコレートで、粗砕きのマロングラッセとブランデーガナッシュを混ぜてビターチョコレートで包んだ形になっている(スピリッツ ブランデー使用 アルコール分2.7%)。このように、詳しい構造の紹介がされると、日本人の気質かもしれないが、つい口にしてみたくなるのである。果たして、それを美味しいと感じる消費者が残っているのであろうか。
やっぱり、森永製菓という伝統なのか、期待通りの上品な仕上げになっていて、ほのかに洋酒が薫り、柔らかい美味しさに包まれてゆく。グリーンレーズンってどんな味とか思って、それだけをチョコレートから取り出して舌の上に乗せてみたりしたが、一番最初に確認しないと分かりにくい、それほど奥ゆかしい味覚が必要だ。それでも、空腹時には、「おっと、洋酒が回ってきた」のが分かったりして、その甘さに浸る心地よさも感じられる。もちろん、いずれの箱の表面にも「運転時には召し上がらないようにしてください」と明記されている。ラム酒やブランデーのアルコール分が前に飛び出してくるわけでもなく、上品にビターチョコレートに収まっていて心地よさに繋がっている。洋酒の入ったチョコレートは、包んであるビターチョコレートから洋酒が抜けないようにと、寒い時期限定販売になっている。
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