2013/06/04

あごのやき

  大人の「好き、嫌い」は一種の趣向である。また、「美味しい、美味しくない」は個人の感想である。したがって、「美味しいですよ」というのは押し付けになる。しかし、「こういう食べ方をすると、美味しいです」というのは、一概に「押し付け」とは断定できない。これは、本質的に対象が食べ物自体ではなく、手順とか調理方法を示唆しているからである。それは、また視点を変えると、人々の感想を統計的にまとめたもので、それは、自分だけではなく、多くの人の評価と解釈される。その手順や調理方法での食べ方に従っても、結果的には、さほど美味しくない場合もあるが「このような食べ方をするんだ」と納得することもある。この手法は、販売者が一度試してみて欲しいときによく使われる手法である。

  食べ物は、その人の育った地勢的な要因や経験的な背景によっても影響を受けていて、好き嫌いや、美味しい美味しくないという判断に影響を与えている。とりわけ、今日紹介する「あごのやき」は何なんだろう?と思われるかもしれないが、これは、少し大きめの「ちくわ」と思ってもらってよい。ご飯のような主食でもなく、かといっておかずにもちょっと適さないような「ちくわ」は、どの様な食べ方をするのが美味しいのか、と考えがちだが、一番美味しい食べ方は、酒のお供というのが良さそうだ。あとは、単純に一口大に裁断して、わさび醤油で戴くということになる。原材料は、かまぼことほぼ同じだが、一般的にかまぼこを戴くのは食卓で、一口大の大きさに切った大きさだが、これも同じ方法で戴くこともあるが、どちらかといえば、ちくわは携帯食の傾向が強い。

  現在は、そのような状況と遭遇することは少ないかもしれないが、かつては、駅や桟橋の売店では必ず見かけた。それこそ、今日紹介するような、少し大きめのちくわである。同様な品揃え状態で「かまぼこ」が売られている売店を見かけることはない。列車や船の中でビールを片手にちくわを口にする人は、ローカル線などでよく見かける。例えば、呉から松山へ向かう高速艇の中でそんな人を見かけたかもしれないし、岡山から伯備線で山陰に戻る人の姿を見かけたとすると、きっと日本酒とこのあごのやきを手にしているに違いないのである。山陰とは、中国地方の日本海側を示し、出雲の神様がいらっしゃる地域である。また、このあたりでは、松葉蟹をはじめとする美味しい海産物が大量に採れる場所でもあり、古くから魚肉練り物のちくわやかまぼこなどが有名である。

  「あご」と言うのは、飛魚(トビウオ)の事で、だし汁などでも美味しい出汁が採れる魚で、かつてフェリーで瀬戸内海を渡るときなどには、時々飛び跳ねている姿を見かたことがある。瀬戸内海だけではない、日本の近海には古くからたくさんいて、刺身、出汁、練り物などに使われてきた歴史がある。特徴として「少し甘めの美味しさ」で誰しもそれを知っていて、高級な和食の出汁に使われる事が多い。今日紹介するのは、そんな日本海側の山陰で採れた美味しいあごを50%使った贅沢な魚肉練り製品の「ちょっと大きめのちくわ」である。この山陰で採れるあごは、特に近海の海老や蟹を食べて育っているので大変美味しい。少し柔らかになる程度に暖めて、わさび醤油で戴くのが良い。
ではこちら
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