最近は故郷へ帰ることも珍しくなったが、昔は、呉線にも急行が走っていて、帰省の時にはよく利用した。「急行の吉備」である。単線の限界だったのか、三原駅から呉駅まではさほどの距離でもないのに1時間20分も掛かったのを覚えている。実家まで最後の列車ということで、三原駅から呉線に乗り換えて、気持も緩みがちで、うとうとしたくなる時間帯になる。ちょうど忠海、竹原あたりの山と海岸線の間をぎりぎりにブルブルとディーゼルエンジンを噴かして走る。その車窓には瀬戸内海の穏やかな波と、それに傾きかけた陽の反射を望みながら、広がる牡蠣用の固定筏や小さな漁船の通り過ぎる陰が写る。それが不思議といつも同じ構図になるのである。小さな漁船などは、写り込まない日があっても不自然ではないが、それでもやっぱり、忘れずに車窓に入り込んでくるのである。あの頃は、それが、ほのぼのとして退屈な時間のように思えたものだが、今となってはちょっと懐かしい。しかも、もう決して見ることは無いだろう。
時々ニュースに、三陸の沿岸を走るディーゼル列車が登場する事があるが、その寂しそうに走る姿を見て、ふと、あの「竹原や忠海」を思い出すのである。三陸との沿岸は1000Km以上も離れているし、海から列車の走る距離は大きく異なるが、不思議と牡蠣の採れる風景は似ていることに気付くのである。広島の牡蠣といっても、範囲は広く広島市の沖で採れる牡蠣から、宮島、江田島、倉橋島など、もちろん、この竹原あたりも含めた地域を指す。周囲の島で採れるもののほうが身が締まっていて評判が良い。おまけに、度々申し上げるが、水温の低い三陸で採れる牡蠣のほうが、当然旬の時期も長くて、しかも美味しい。「早く復活して出回るようになってほしい三陸の牡蠣、俺は待ってるぜい!」といったところで、みんなも同じ気持ちのはずだ。
今日紹介するのは、そんな忠海、竹原の沖で採れた牡蠣を使ってオイル漬けにした缶詰2種類である。オイル漬けの缶詰だと、いつ何時でも素早く料理に使え、年中口にすることが出来る。缶詰めの中身は比較的に小粒で美味しい物が揃えてあって、おまけに、PDF写真のとおり綺麗に並べてある。1つはバジル風のソース仕立てのオイルに漬かっていて、丸ごとパスタなどに利用できる。もう一方のスモークしたタイプは、酒のつまみや「もてなし用のカナッペ」など、使い方も自由自在である。オイルには綿実油を使って牡蠣の風味を余すことなく引き出してあるので、価格は少々お高いとしても、お好きな人にはたまらない逸品になっていると思われる。
さて、今の時期は牡蠣の旬なので(11月~2月)簡単に、生食の牡蠣が入手できるので、缶詰の牡蠣などは目新しくも無いかもしれないが、缶詰で味付きとか、燻製というのも利用価値が広く便利といえる。保存食として災害に備えるのも良い。早速、簡単にパスタに応用してみた。用意する材料を挙げてみると、バジル風のソース仕立の牡蠣と少々スモークされた牡蠣の2つとも使用する。それぞれ1缶づつ、パスタ200g(2人分)、山椒のしょうゆ漬け粒少々、ガーリックチップ、ジェノベーゼソース、ブラックオリーブ、胡椒等である。茹で上がったパスタに、これら全てを絡めるだけだが、やはり、ジェノベーゼソースは追加が必要になる。燻製タイプの粒を5~6個ぐらいを潰し、さらに、山椒のしょうゆ漬けも同様に潰して、一緒に和えてパスタに混ぜる。それによって牡蠣の風味が広がり、山椒で牡蠣の臭みを消す。さらに上から牡蠣と山椒の粒を添える。これで、どこにも負けない「牡蠣のパスタ」に仕上がる。美味しいぞ。
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