2013/12/06

島根 わさびめかぶ

  食意地だけが自慢の私でも、時たま、食事が終わると、案外「物を食べるって疲れる」と思うことがある。まだ時間は早いのに、もう、そのまま寝ちまった方がいいやと、気持ちも緩みがちで、つい横になってしまう。もーう、牛になりそうだ。こういう場合は、きっと、今の体力では、食べすぎなのだろう。その理屈で言えば、「食事の量=体力」なのかもしれない。確かに、体力が無いと食べ過ぎは胃腸の負担が大きく、消化にも時間がかかる。だから、あくまで腹七~八分目程度の量で、生命維持に必要な栄養が採れるように、自然に工夫をするようになるのかもしれない。これからは気をつけるよう心がけたい。

  そんなこともあって、やっぱり、今日も、以前に紹介したように、侘(わび)とか寂(さび)の思想を「食の世界に取り込んで」何気ない食事でも、古くから親しまれてきた食材を加えることによって、より美味しく、より健康的に楽しもうとする話の続きをしたい。侘(わび)とか寂(さび)というと、少々大袈裟に聞こえるかもしれないが、少量でも、それなりに「体に良い効果がある食材」を選んで、納得しながら口にする、つまり「それを、たいへん美味しい。と考えるべきだ」と思うのである。これも、時たま食べ過ぎてしまうのを、控えるための手段の1つにしたい。

  今日は島根の特産である。瓶詰めの中身をそのまま商品名にしたと思われる「わさびめかぶ」という名称である。これは、瓶を横から眺めると、下に山葵(わさび)の層と上に芽株(めかぶ)の層と、2つに分けて詰めてある。この状態によって、山葵だけでも、芽株だけでも、あるいは混ぜて一緒にしても美味しいという、3色の味わい方があるそうだ。芽株は少々ねばねばで覆われ、山葵は辛味が抑えられていながらも香りがよく、少々甘目の風味で優しさに包まれる。最初口にした印象は、最近少なくなったが、老舗の寿司屋で、刺身を頼んだ時に、つまとして洗いざらした芽株が乗ってくることがある。その芽株、刺身、山葵が渾然一体となった時の香りを思い出したのである。妙に懐かしい薫りと空気感に包まれてしまった。その気分を大切にして応用してみると、温かいご飯には、もちろんぴったり合うが、意外にも蕎麦の上に乗せていただくのも美味しい。まだ、他の食べ方も色々あるかもしれないが、炊き込みご飯なども含めて和の食材なら世界は広がる。

  それでは、それなりに「体に良い効果がある」とは、どこを指してそんなことが言えるのだろうか。芽株とは、わかめの茎の部分で、わかめの増殖をつかさどる胞子が作られる部分でもあるため、わかめの豊富な栄養が凝縮されている。その芽株には、ビタミンB1、B2、 カルシウム、ヨード、鉄分、ミネラル、さらに、ねばねばなどにはアルギン酸、フコイダン等の食物繊維が豊富に含まれている。昔の人は細かい事を知らなくても、体にいい感じがして、好んで食べていたようである。だから海辺で煙草を吸いながら海を眺めて過ごす、骨皮筋衛門のような「じいちゃん」は長生きなのである。答えは、そのねばねばにあった。特に、フコイダンは、最近医学的な研究が進められており、注目されている素材である。研究によると、癌細胞に選択的に働いて自滅させる特殊な作用(=これをアポトーシス誘導という)があるとされ、抗がん剤の一種として食事療法に幅広く利用されている。その他にも、さまざまな研究が進められており、今後も臨床応用で注目される食材のようだ。
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