標高3000mのアンデスの高地にあるという「天空のマラス塩田」では、湧き出る高濃度の天然塩水を使って、インカ時代の以前から天日塩作りが盛んに行われてきた。今でも、当時のまま渓谷の上方から塩水が流れ出し、斜面に日本の棚田(急斜面に段々に続く田畑)のような形をした3800もの塩田へ、水路によって幾重にも導き、高地独特の強い天日で水分を蒸発させ、天日塩が作られている。アンデスは、かつて海であった所がプレート移動で隆起し、その力で山脈が形成された経緯を持ち、地中にあった海水が閉じ込められ、時間とともに濃度が高められた。インカ時代は、この塩を使って保存食、病気の治療、ミイラ保存にも使われていたと言われ、大地の豊富なミネラルを含みながらも太陽エネルギーが降り注いだ、類まれな天日塩ということのようだ。
今日は、そのようなペルーから来た歴史的にも珍しい塩(税別価格500円)と、もう1つ、インカインチオイル(税別価格1,505円)を入手しので紹介しておきたい。インカインチオイルとは、グリーンナッツから搾ったもの。グリーンナッツとはトウダイグサ科のつる性の植物で、絞ったオイルには、オメガ3(53%)、オメガ6(33%)、オメガ9(8%)などが含まれている。オメガ3とは、α-リノレン酸のことで、青魚や魚介類に多く含まれるDHAやEPAが属する。酸化に弱い必須脂肪酸で、生のまま摂取すべきもの。一方、オメガ6とは、リノール酸のことで、サラダ油やドレッシングに多く含まれているので、日常的には、むしろ採り過ぎに注意したい油である。オメガ9とは、オレイン酸のことで、オリーブ油やキャノラー油が代表格になる。これもオメガ3同様に積極的に摂取したい。つまり、インカインチオイルの60%は、人が外部から摂取しなければならない油が含まれていると言うことになる。このインカインチオイルは、インカ時代以前から食べられてきており、高度な文明の発達には、やはりミネラル豊富な塩とオメガ3/6/9オイルがバランスよく必要だったと思われる。
オリーブオイルは、野菜に生のままドレッシングとして使われる事が多い。また、健康のためには、エキストラバージンオイルをそのまま戴くのがよいという年配の人も多い。しかし、インカインチオイルの優れた特徴は、酸化に弱いオメガ3に属しているにもかかわらず、抗酸化力はオリーブオイルの2.5倍ほどあるとされているため、加熱料理にも使える特徴があり、これも類まれな優位性といえる。早速、何か加熱する料理に、インカ天日塩とインカインチオイルを駆使してみたいと考える。そこで、季節外れだが、春を感じるハマグリと菜の花のパスタに使ってみたい。プロセスを簡単に説明すると、ハマグリはよく砂出しをして、殻をよく磨いて酒蒸しにする。パスタと菜の花は、インカ天日塩の入ったお湯で茹で上げておく。インカインチオイルでガーリックを焦げ目が付くぐらい熱を通したフライパンに、ハマグリとパスタを入れて和える。最後に、ブラックオリーブと菜の花を乗せて出来あがりである。
贅沢にインカインチオイルをたっぷり使ったパスタになったせいか、それとも、インカ天日塩の効力が発揮されたのか、随分いつもと違った趣向の味になってしまった。確かにオリーブオイルにありがちな「独特の香り」はなく、自然にハマグリの美味しさと菜の花が引き立っている。それも、まるっきりハマグリの出汁に馴染んだ感じがするから不思議だ。塩に関しては、いつも使っている瀬戸内海の赤穂の塩とは大きく異なり、ミネラルの成分か鋭さを感じるので、少々塩分控えめで良い。天日塩とインカインチオイルの組み合わせと、優しさのある赤穂の塩とオリーブオイルの組み合わせの、どちらが美味しいかと言われると、前者の方は、魚や貝など海産物との相性は良さそうで、しばらく加熱用に色々試してみたい気分になる。もちろん、インカインチオイルが、α-リノレン酸ということで、老齢化によるボケの防止にも役立つとすれば、少々のことなら、こちらがいいと判断するのは自然なことかもしれない。
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