丸いチョコレートには、古くから親しみを持っている。その中には、ピーナッツ、キャラメル、アーモンドなどが入っていて、幼い頃、と言っても半世紀程前の話だが、はっきり覚えているエピソードがある。当時小学校4~5年だったと思うが、広電(広島電鉄)の電車の中で、紙屋町あたりに差し掛かった時のことである。ドアの前で、いとこと二人並んでチョコボールを頬張り、外を眺めながら、たわいもない話をしていた。彼がふと「ピーナッツの方が旨いんでぇ、お前、知らんかったんかぁ?」と呟いた。私は、「ええっ」と彼の方を向いた。今、手にしているこのチョコボールにはキャラメル入りしかないと思っていたからである。その時、彼は既にピーナッツの入ったチョコボールを頬張っていたのである。外箱パッケージのデザインが良く似ていて、彼の手をこじ開けながら確認したのを覚えている。その時、やっぱり呉は田舎だと痛感したのである。
今でも、丸いチョコレートを見掛けるたびに、そんな思い出が蘇ってくる。自然と、まだ未確認の「美味しい種類のチョコボール」が他にあるのではないかと、探求する気持ちが沸いて来るのである。そんな、大して食べもしないのに、いろいろと食べ比べをしたい衝動に駆られてしまうことがある。「他にはどんな種類があるの?」。その言葉は、自身の幼少期のトラウマかと、周囲から勘付かれないように下隠しにしてきたのだが、意外にも、それがチョコレート好きの人達に共通する気持ちだったことが、最近になって分かってきたのである。
同じことを、お客からよく聞かれるとのことで、お店の人は、同じ種類の製品をよく把握している。「今はお店にありませんが、ザクロも美味しいですよ」とアドバイスまでしてくれるのである。それもこれも、やはり厳選した美味しさが、この「ブルックサイドのラインナップ」には揃っているからだろう。店員さんは、自分で口にしたことが無くても、安心して薦められるのである。どこから始めても満足できるからこそ、次も口にしてみたい。次はもっと美味しいかもしれないと、一口で、誰でも手ごたえを感じてくれるのである。その美味しさの極意を把握していれば、異なる種類でも次々と手放しで売れていく。種類が多ければ多いほど、飽きも来ず、息の長い商品となるのである。今日は、そんな6種類の商品ラインナップから、好みの3種類を買い求めてきた。どの種類も、国内のメーカーにはないので、珍しい風味や薫りを楽しむことが出来る。
一般的に、シリーズ商品と言うのは、それらラインナップ全てが満遍なく好評を得ることは難しいとされる。最初の2割ぐらいの商品企画では、常識的な感覚でニーズを汲み上げて整理するだけで誰でも成功できる。しかし、それに味をしめ続けて安易な企画に走るとか、営業的な要望から無理をしてラインナップを増やそうとすると、開発コストの割には、良い結果に繋がらない傾向がある。販売店や輸入代理店も、そのあたりの状況をよく心得ていて、商品ラインナップを全て店頭に並べるよりも、売れ筋になる幾つかの商品だけを扱えるよう、スペースの関係上は種類を収束させたいと願っている。しかし、この「ブルックサイド」は、全て満遍なく売れ行きが好調のようである。話を聞くと「ほー」とため息が出るほどだ。確かに、その特殊な風味や味わい、デザイン、パッケージング、などどれも魅力的だが、それ以上に原材料から滲み出ている豊かさではないだろうか。
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