2014/03/11

MEYERの包丁

  最近、自らの包丁の使いこなしに首を傾げる事が多い。ぺティーナイフでりんごの皮を剥くときに動きがよくないことに気が付いた。本来、皮を剥く行為は、ある程度切断部を目で追いかけるだけで、自動的に左右の腕、手、指先が相互に距離感を調整しながら動作する。つまり、目で得られた情報を元に、腕の部分がりんごをある範囲の動きに固定し、りんごを持った方の手首と、ナイフをもっている方の手首が互いに関係を保ちながら親指を動かし、切り取った皮が適当になるように回転させながら進む。ここでは、刃の角度やりんごの傾きなどをいちいち細かく指示する必要はない。それだけ、りんごの皮を剥く行為は、巧妙に制御されていると考えられる。そういう見立てが成り立つとすると、それが下手になることは、とても危ないことだと不安になったのである。

  2年ほど前にも同じ様な話をしたことがあるが、やはり、その懸念がきっかけで、刀船技研の牛刀包丁21cm(刃渡り)を購入した。それによって、まるで嘘の様に自信を回復することが出来たという経緯がある。新しい包丁の切れ味を自然に受け入れ、それに対応して従来と同じ成果を得ることが出来た。つまり包丁の能力が向上した分が、使いこなす能力を補うように介入したと考えられる。単なる気分的な現象だったとは思いたくはないが、包丁の切れ味というのは作業性に大きくかかわるという、きわめて当たり前のことを再認識するに至った訳で、それにしても、人は運動能力が低下しても、それなりに素晴らしい自動調整機能を持っていると感心したのである。

  そんなことで、どうだこうだと言うつもりは無いが、包丁も刃の長さや重さとか、取っ手の長さや太さの適正不適正というのがあり、それを把握する為に、やはり、自分の手でそれに触れて食品を裁断してみる、とか刀で言うところの試し切りをする必要がある。林檎の皮を剥く時期になってからぺティーナイフの切れ味に不満を持っていたので、ずっと気に掛けていたのだが、MEYERの包丁に触れてみて、握る取っ手の大きさや、取っ手から刃先までの距離などが、丁度自分の手の感触とそのイメージにフィットしたので、つい気に入って買ってしまった。それ以来、自分の能力を超える切れ味に興奮している。そして、価格も割安な事から、すぐに少し大き目の小三徳包丁までも追加してしまった。

  10年ぐらい前から、様々な食材を裁断するようになって、改めて道具の重要性を感じたわけで、この期間で、おおむね日常的に自分専用として「4種類の包丁」が必要なことがわかったし、それらを適材適所で使いこなすことで、作業に無理な力も必要なく、余計に注意が払えるようになり、接触事故などを未然に防げる。もちろん、裁断面が綺麗になるというのも、何かにつけて気持ちがよいが、それだけに留まらず、よく切れるということは、さらに間隔の狭い裁断が出来るということでもあり、それによって、野菜や果物は食感までも大きく変わることに気が付く。あとは、如何に切れ味を保つかということでもあり、刃に使われている金属の材料なども重要だが、実は、まな板の表面の柔らかさも大きく貢献していることがわかってきた。
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