子供のころ美味しいと思ったお菓子は、幾つになってもその印象が残って懐かしい。だから、一寸だけでも口にしてみたいと思うことがある。しかし、逆の印象のあるお菓子は、大人になってからも、また、歳を重ねれば重ねるほど拒否してしまう確率は高い。少々大袈裟な話になるかもしれないが、今まで人生の中でクッキーを特別美味しいと思うことはなかった。もちろん嫌いとまでは言えないが、今、お皿の上に並べてあったとしても、紅茶の方は素直に戴くが、クッキーには手が出ないと思うのである。
そのくらい、幼いときの印象は強く残る。昔の話に戻すと、帆船の舵のマークの入ったクッキーを、よくお土産げに戴くことがあったが、何度口にしても、どれを口にしても、少々脂っぽく感じて、美味しいという印象は残らなかった。それが以来55年以上続いているのである。大脳皮質に深く刻まれてしまった「見た目よりも美味しくないから気をつけろ」という暗示は、それに近い食感のビスケットや焼き菓子に至るまで、全てを同列に扱うようになった。本来の流れなら、まじめに作った昔の方が美味しかったが、最近は美味しくなくなった。という愚痴は案外に多いと思うのだが。
ところが、若い人たちには、それほど「そういう印象」は存在しなかったようで、年代ごと「美味しいクッキーは沢山あるよ」という表現に変わってきた。確かに「高級で格調もあり、高価なもの」なら沢山存在することは知っているが、小安く、手軽で、バリバリという庶民的なレベルでは、賞味期限だとか小売価格とか、クッキーの種類とか、それら幾つかの要素で、いま1つニーズに広がりがないと思ってきたが、徐々に、原材料の薄力粉、バター、ショートニング、フレーバー、さらに混ぜ合わせる素材の美味しさなど、全体の品質が高まったようで、最近は特に静かなブームが起こるぐらい美味しくなっているらしい。
「ステラおばさんのクッキー」という商品もその1つで、ステラおばさんは100種類のレシピの中から季節に合わせて20種類程度が焼かれ、全国57店舗で販売されている。缶のパッケージが綺麗で、枚数別のパッケージもあったり、あるいは、企画として「つかみ放題」とか、「食べ放題」とか多彩に用意されていて、お客を逃さない工夫も準備している。クッキーは、どれをとっても丁寧に作ってあり結構美味しい。そして、食べ終わると次から次へと口にしてみたいと思うのである。1枚ごとでは、特別お安いこともないが、いくつか「美味しさの違いを楽しむことで、満足度やその価値が上がってくる」と思われる。つまり、そこそこの価格で、軽い食感と後を引くような美味しさが魅力だ。最近は、テーブルにこのクッキー数枚と、ミルクや紅茶の組み合わせで「おやつを楽しむ」ことが意外に心地よいと実感することがある。
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