麻布十番モンタボーに「吟十勝あんぱん」というのがある。以前から、年に1度ぐらいだけれど、忘れたころに突如店頭に並ぶので買ってくる。美味しいので、次は、いつ店頭に置かれるのかと楽しみにしていたら、ある日、その「あんぱん」の下にこんなことが書かれていた。「初物の小豆は、毎年その年だけの特別な味わいを届けてくれ、その初物を楽しむ事を「あずきヌーボー2014」と命名しました」。ほー、パンの楽しみ方を提案してきたモンタボーが、期間限定の"和"の味わい品を用意したということか、おまけに、餡がなくなり次第に販売終了するという強気な期間限定商品とのこと、なるほどやはり一寸見逃せない「あんぱん」だったようだ。
これが、十九代も続いた由緒正しい老舗の一品なのである。「あんぱん」というより、餡子に皮をまとわりつけた形をしていて、普通のあんぱんとは別格の生まれの違いを感じさせ、いかにも大切に育てられた格好をしている。餡子は、北海道十勝産の小豆を使った贅沢感あふれ、小豆の持つ紫っぽい色合いまでもが表面に浮き上がり、アントシアニンたっぷりの素材感を顕わにしている。餡子には白ざらめが使われているようで、あくまで自然な風味を生かした甘さが際立ち、うーむ、いかにもこれが十九代目が解き放つ品位の高さなのだろう。素晴らしい甘さと風味のバランスを保っている。
これを、一般的な感想では「餡子が甘くないから好き、だから美味しい」とか、訳のわからない表現をする人もいるが、それはまったくもって「餡違い」で、世の中には、飛び切り甘くて口の中で溶けやすい餡子でも、パンの生地との相性によっては、喉越しの良さから美味しさを実感することもあり、そんな中年好みの「小安いあんぱん」も存在しているのである。さて、そんな独特の餡子の美味しさを味わうには、ここはやはり、自然な風味を生かし、甘さを引き出すために、コントラストを強調したい。ここでは、抹茶のエスプレッソを用意してみた。加えて、喉越しを改善するために、少しだけバターを加えるのが私は好きだ。もちろん、好き嫌いはあるにしても、独特の風味が浮かび上がり幅広い美味しさを実感できる。
使われている素材が純粋であることから、自分なりのアレンジでも素材の存在感を失うことはない。たとえば、餡子とバターの場合は、わずかに渾然一体となった独特の風味が、ちょっと洋風な味わいの幅の広さを感じたり、抹茶のエスプレッソによって、それが純粋な和風の饅頭などの風味にも感じたりと、品位の高い美味しさを味わうことが出来る。これらは、あくまでニュートラルな餡子の味付けを楽しむことにも繋がり、最後まで自分好みに拘り、飽きの来ない食べ方が楽しめるのである。
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