2015/02/20

浅草今半の切り落とし肉

  どのような高級なお肉でも、すべてを綺麗にスライス肉として販売することは出来ない。よく、精肉店のガラス越しにそう考えることがある。お肉になってしまえば、黒毛なのか白毛?なのか検証のしようもないので、ここでは国産和牛の美味しいお肉と言う前提で話をしたい。牛さんの体の中から肉として採れる場所を「部位」といい、部位には名前がついていて、サーロイン、ヒレ、ロース、モモ、すね、などで、それに適した加工方法も提示されている。

 その特定の部位(=サーロイン、ヒレ、ロース)などで、肉の厚さや大きさを均一にカットしたものを「スライス肉」と言う。それらを厚く切れば「ステーキ」用、薄く切れば「しゃぶしゃぶ」に使われる。逆にステーキやしゃぶしゃぶに適した部位と言う概念もある。また、特定の部位でも、厚みが一定なのに「大きさの不揃いなカット」を「切り落とし」と言う。切り落としは、スライスよりはるかに安価に求められるが、大きさが不揃いなので、お肉が主役の料理には少々不向きだが、実質的な美味しさを求めるには最適といえる。

 さらに、特定の部位に限らず、厚みや大きさも不揃いでカットされたものを「小間切れ」と言う。幾つかの部位が混合され、大きさも不揃いなので、牛肉の端材と考えられる。端材なので安価だし、最も効率のよい使い方は、ミンチにして他の食材と混合使用することだ。家庭では、牛肉炊き込みご飯、ハンバーグ、メンチカツ、キーマカレーなど、あらゆる料理のベースとして使われ、美味しいおかずに変貌する。勿論、小間切れと言えども、お肉の良し悪しは十分把握できる。だから、国産和牛しか扱わないお店で購入したい。


 店舗を構え、牛めし、すき焼き、しゃぶしゃぶを取り扱う、「優れたお肉の特定の部位しか扱わない老舗のお店」では、どうしても「切り落とし」が大量に出る。それは余り物だが大変美味しいし、そのまますき焼きとして、あるいは、玉葱やパン粉を加えてハンバーグに加工しても最高である。そこが、お肉こだわり派の人々の狙い目になっている。昔からお勧めしているお肉だが、「浅草今半の精肉店」で、今日は、1枚づつシートに包まった高級なお肉ではなく、量り売りの「切り落としのお肉」である。いつもは牛肉弁当しか買わないという人は、精肉店の場所が分かりにくいかもしれないが、必ず近くにあるので、一度覗いてみるとよい。そこでは、年配のご婦人がハンバーグ用や、生産地の掲示を観ながら「切り落とし」を大目に購入されている。確かにお肉の賢い買い方だと思われる。

補足: 浅草今半の店頭では「切り落とし」しか用意されていない。