(前回の続き)出来れば太陽が真上にいる午前中に山頂に上がりたいので、早々とリフト乗り場へ向かう。昨日、夜半に雨が降った。そのせいで、朝から遠くがかすんでいる。それもあって、気持ち的には半ばあきらめムードだった。順番を待つのに、ちょっとわくわくするのは、楽しみにしていた証拠だ。それにしてもリフトは便利だ。腰掛けていれば山頂へ連れて行ってくれる。苦労しないで撮影すると、また、撮りにくればいいやと気が緩む。そう、便利なものは、ついそれに甘えてしまう。オートホワイト、オートフォーカス、手ぶれ補正でつい撮影を安易に考えてしまうが、それがどんどん自分を駄目にする。いや、果たして本当に駄目にするのか、むしろ、逆だ。不満がつのるに違いない。手ぶれ補正は回転方向の補正は出来ないし、当然、画素ピッチのミクロンオーダーまで制御できるはずもない、1200万画素と思いながら300万画素ぐらいの画質を見て、満足なんか出来るはずもない。ホワイトバランスも、精度が追いつかないと、つい青系に振ってしまうのではないか、暗いところでは、そのずれが目立つのではないか、オートフォーカスもスピードを上げると後ろ、後ろの後ピンへずれていかないのかな、フルスキャンすればピークは出せるが、時間がかかる・・・・と様々に思いをめぐらしているうちに、「レバーを上げてください」と言われて頂上に到着した。
ここは、ひどく眩しい世界だった。近眼の俺でも、裸眼でどこまでもピントが合ってしまうが、順光撮影では、やはりデジタルカメラの液晶モニターが背後に位置する太陽光を反射してしまい、まるで見えない。4x5で使う黒幕か専用フードがほしかったと反省。それでも、適当に4箇所移動して撮影する。背中は既にびっしょり汗ばんでいる。基礎代謝が高い証拠だ。そのせいか、汗が出るとなんとなく心地よく気分も良い。冷たい風が緊張感を与え、太陽はしっかりと俺の背中を捕らえている。しかし、どのフレームも気に入らないまま、仕方なく再びリフトで降りる。気に入らなくても目的を達成するため、余計に撮っておくのが取材の基本だ。この歳で、言い訳は許されない。リフトを降りて再び次を目指し、山頂のふもとを歩くが、いいところに限って電柱が邪魔になる。山頂の姿に目を向けながら、その回りを移動するが、どんどん時間ばかり過ぎてゆく。今、仮に撮れていない不満でシャッターを切っても、後で消去するだけだ。それにしても、太陽はどんどん遠のいてゆく。
11月にもなると、日暮れが早い。結局2フレーム追加しただけで3時過ぎに、もう終わりだあ・・と思った。殆どは移動時間だが、思ったよりてこずった。それでも、なんとなく不満は残るので、ロスタイムだけどもう一発だけ、と太陽に叫ぶ。ここで最後の駄目押しをしようと思う。ところが、Fuji がすねてしまい、ピントを出してこないのに慌てる。壊れたか?どうもフレアーに苦しんでいたようだ。場所を少し変えて、再び仕切りなおしだ。あせりは、返って思わぬミスを伴ったり、ポカをやることがあるので、注意深く最後のショットを撮る。この緑の木漏れ日をどのように処理するんだろうと楽しみにする。しかし、撮り終わっても、何故か不甲斐なさだけは残っていた。
今日は、その最後のロスタイムに撮った写真を見ていただこう。少し時間差があり、太陽の位置がずれているが、お許しいただきたい。(初めての方は、続デジタルカメラ3の本文を参照のこと)
PDFの容量が大きいので、このシリーズはこちら
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