今日は、ある山の中へ来ている。早速現場から報告する。昨日、駅を降りて延々と2.5km以上坂道をあがってきた。坂道は高い心肺能力を要求する。心臓はバクバクだし、シャツと背中の間で汗が渦巻いている。限度いっぱいいっぱいの体を引きずりながら一歩一歩前へ進む。平場で12km(週2回のウォーキングコース)を歩くより、はるかにきつい。と思いながら、裏腹に途中で一息入れて煙草を吸う。これがまた、頭の芯まで即効でニコチンを搬送し、ひどく聡明になる。荷物は当然F100fdとFX500と取説、着替え2日分と24mmレンズ付きF1(フイルム撮影用)と露出計、その他洗面用具と薬剤一式(何が起こるかわからないので胃腸薬、目薬、風邪薬、花粉用の薬、ビタミン剤、湿布薬、など)である。あと、即席珈琲、折りたたみ傘なども入っている。取材で最も重要なのは、ペデスタルともいえる自分の体である。
いまどき、脆弱なおっさんはいつ強盗団に襲われるかもしれない。カードは持たず、現金のみを3箇所に分けてしまってある。2台のデジタルカメラは没収されても、古いF1は持っていかないだろう。これが残ればいい。万が一、殺されても好きな事をするために来たのだから、自己責任だし、今までそれなりに頑張ってきて(回りは誰もそう思っていない)特別思い残すこともない。心の準備は出来ている。などと、馬鹿な事を考え、無心になって前へ進む。振り返ると、そういう悲観的な考えを吹き飛ばすぐらいの壮大なスケール感が待ち受けていた。
今日は朝から撮影場所を8箇所ぐらい想定し、太陽が日暮れまでに描く軌道を考えて移動を開始する。昨日の荷物のせいで肩も張っているが、3台のカメラを携帯して出掛ける。この見慣れないスケール感をどうやって切り取るか、とてもじゃないが収まりきれない、足早に移動しながら、ここもいい、あそこもいい、しかし、それにしても、高圧線や電柱が目障りだ。とりあえず、順光が照射する側面からシャッターを切ることにする。F1から撮影開始。デジタルは、ガンマがフイルムと違うので頭の切り替えが必要だ。早々と2台のデジタルカメラのズームレバーの動きが敏感なのに困った。フレームを合わせようとすると、ちょっと触れただけで余計に動いてしまう。「なんで、そうなるの?」と独り怒りながら腐心する。フレームを揃えて適正露光から1/3ステップづつ露出補正を+側、-側へ振って終了。現場では結構面倒な操作だ。次のロケーションを探すため、再び移動を開始する。デジタルは自動機能が多いので逆に神経を使うと実感する。 F100fdとFX500の互いの操作を間違いそうになったり、画質では、2台で黒の立ち上がり、ガンマーカーブ、ハイライトの処理が微妙に違う。また、F100fdはモニターのコントラストが見づらいし、FX500はモニター画像のエッジが強すぎる。ぶちぶち言いながら、結局4フレームを収めた。それにしても、慣れたフイルムの方は簡単だ。光の状況と露出計の癖が分かっているから「こんな感じ」でいけてしまう。次は山頂までリフトに乗ることにしよう。 ・・・・・
今日は、この午前中の撮影から1フレームを紹介する。
PDFの容量が大きいので、このシリーズはこちら 。
(初めての方は、続デジタルカメラ3の本文を参照のこと)
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=0FF68288DD53524E&resid=FF68288DD53524E%21712&app=WordPdf