人が何かに夢中になって楽しんでいる姿は、微笑ましい。ご本人にとっては一種のブームが到来していると言える。日常の家庭や会社といった煩わしい人間関係や組織から解き放たれ、武装も解除し、鎧(よろい)を脱ぎ捨て「心も裸」になる。旅行もその1つで、見知らぬ土地で、多くの人が楽しんでいる姿は、自然に気持ちの安定度を実感できる。そして、自分もそれに、知らず知らず同調し無邪気になってしまうのである。
毎年、この時期は大阪方面に出張する。今回も帰りにちょっと途中下車して、京都を歩いてみることにした。 そこで、今回から数回にわたり、京都から報告するのでお付き合いいただきたい。お勧めのお店や茶寮、そうでないお店もある。もちろん、ここで画像比較もしてみたい。一緒に楽しんでもらえば嬉しい。
普通なら、出張した仕事場に近い天王寺駅から梅田まで御堂筋線で出て、阪急電車で四条河原町まで行くのが安上がりなルートであるが、時折、カタカタうるさい車両に出くわすので、天王寺から乗り換えなしの、特急「はるか14号」10:51発に乗る。恐らく新幹線の次に高額なルートになるが、一番早く(京都までおよそ40分)着くことになる。既に疲れが溜った体の「ベルトを緩め」るには、この空いた車両が心地よい。
いつものように、乗り換えの案内アナウンスが入る頃、身支度を整え、次々と前の車両に移動し、先頭車両まで行きそこで降りる。「はるか」から改札口は遠い。改札を抜けて目の前の京都タワーを見ると、もうお昼だ。すっかり仕事を忘れてしまったようで、腹も減ってきた。「急ごう」。駅前から206の市バスに乗車。乗車口はバスの中ほどか後部になる。料金は後払いの両替方式である。財布から210円を取り出し左手に握り締める。それにしても、このバスはとても混み合っている。山手線で鍛えた体にもちょうど良い押され具合で、柳のようになりながら、ぼーっと窓の外を眺める。信号待ちの静寂は乗客のひそひそ話が良く聞こえてくる。駅前から七条通りに入り東へ向かう。どの道もびっしり車で埋まっているのに、運転手は熟練のテクニックで前に進む。バス停では、無邪気になった旅行客達がこちらを指差しながら待っていた。三十三間堂前では、後ろで溢れて乗れない乗客を、前に誘導する運転手の臨機応変ぶりに心が和む。全員乗せて満杯のバスは、大きく左右に揺れながら智積院の前の三叉路を左に曲がり、東大寺通りに入る。そして、五条通りに向かい、東山五条の交差点を少し過ぎた「五条坂」のバス停で降りる(最近、少し先で停車するようになった)。ほぼ全員が降りるので、あわてることは無い。駅からの距離は4km弱なのに、渋滞と乗客の乗り降りに手間取り、おおよそ40分かかってしまった。
降りてバスの後向に歩き、東山五条の交差点を渡る。さらに登り道の右側へ渡るが、ここは、危険な歩道だ。惰性で坂を降りてきた参拝帰りの客をかきわけ、さらに、スピードを落とさず下ってくる大型観光バスを機敏に交わし4分ほど進むと、清水新道(茶わん坂)との分岐点に出るので、そこからは、ゆったりとした茶わん坂へ進路を取る。途中、人力車屋さんが、「だんなぁ~お乗りになりやせんか?」と勧めてくれるが、「この先で御飯を食べるので」と丁寧にお断りをして、足早に前に進む。きっと、疲れているのと、腹が減っているのを見間違えたのだろう。と想像しながら、回りの参拝客を追い越し、さらに坂を上がってゆく。既に、「腹は空洞」になっている。道の先には、清水寺の三重塔が見える。もうすぐだ。茶わん坂の丁度中ほどにある「がんこ」という緑色の看板を探す。そこが最初の目的地である。 ここは、「彩」という小さなカレーのお店だ。
ではこちら。
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