2009/01/23

京都2

 話を続けよう。彩を出て少し坂を上ると、左に「古都夢」と言う店がある。その角を左に入り少ない階段を上る小道である。右手には、どう見ても民家なのに「優しいカイロプラクティック」という看板を見るが、つい腰に手をやりながら「そんなわけない」といつも思う。その小道を抜けると、五条坂の通りに出る。あの、危険な道の行き着く先である。全国各地から来たカラフルな観光バスが停車している。それを左手に見て、右に上がる。ここで、五条坂通りと清水道とが一緒になり、その先は清水寺へ至るが、五条坂を上がってきたタクシーがお客を降ろし、清水道から下ろうとするので、タクシーと人が入り乱れる場所でもある。タクシーは清水道を下るとき、出来ればお客を乗せたいのだろう。それを横目に注意しながら進むと、左手に七味屋がある。様々な薫り高い辛味が並んでいて、小分けして販売している。ここは、店に溢れるぐらいお客がいても、きめ細かい丁寧な対応をしてくれる。自分なりに、三味や五味を作って楽しむのも良い。ここは、まさに辛口嗜好の登竜門である。

 その店の脇を北に下りる階段があり、多くの人がそこに吸い込まれるように流れてゆく。この階段の坂を「三年坂」というらしいが、階段の左右には、京都ならではの風情を感じさせる、こじんまりとした華やかなお店が並ぶ、左右をきょろきょろしていると、階段で危うく転げてしまいそうになるが、ここは、何が何でも踏ん張らなければならない。ここで転ぶと、3年以内に死ぬと言われている。それが三年坂に残る言い伝えらしい。怖い、怖い。

 清水寺に参拝もせず三年坂を下ろうとする罰当たりなおっさんは、転んでもしょうがないと思いながら下ると、右に「イノダコーヒ」がある。昨年は、東京大丸に出来たイノダコーヒのお店を紹介した。今年も、ここ清水店に寄ってみることにする。店に入ると、商品が並べられた展示即売コーナーがあり、奥に上がると待合がある。そこで、しばし待機する。

 昨年までは、黒いスーツに身を包んだ蝶ネクタイの細身の年配のマスターが、お客を手際よく案内してくれた。肩から上を上下させず足早に店内を歩き回って指示を出す姿と、客に接するときの物腰の美しさは、店の品格を思わせるようであった。今年は、やや小太りの柔らかい感じの若い人に代わってしまった。あの姿勢の綺麗な彼は、三年坂で転んでしまったのだろうか。と思いながら席に案内され、上着を脱ごうとしたら、お姉さんが近づいてきたので、「ア、ア、アラビアの真珠をお願いします」というと、「お掛けになってからで結構ですよ」と言われた。ああ、そうだなと反省。いるよなー 「こういう、田舎者でせっかちなおっさん」と苦笑しながらコーヒーを待つ。

 大きなガラスの向こうには、怪しい雲行きにちらつく雪が舞い上がっている。ここで、しばし雲が行過ぎるのを待とう。このあたりの天候は変わりやすい。それにしても、珈琲が東京店より濃くて薫り高く感じるには、何か理由があるのだろうか。
ではこちら。三年坂を下りながらのショットだ。転げたりはしないぞ。
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