一息入れ落ち着いるうちに怪しい雲は去り、日差しが出てきたのを確認し、そそくさと500円玉を用意してお会計をする。再び店の前の三年坂を下り始める。左右には甘いもの屋、茶屋、郷土品店、蕎麦屋などが並ぶ。左手にゆるいカーブの途中に立派な門構えの「湯豆腐屋」があったはずだが、今日は営業していないようだ。営業していても、湯豆腐で4,000円弱はちと高い。そのまま、だらだらと道なりに歩くと「八坂の塔」に近づくが、途中、縮緬雑魚を少量配っている「かさぎ屋」の手前の階段を下りる。縮緬雑魚に引っかかりながら、多くの人が吸い込まれていく。ここを、二年坂というらしい。やはり、ここで転げると、二年以内に死ぬことになるので、しっかり階段を見て降りなければならない。
もっとも、この坂は大同二年(807年)に出来たことから二年坂、翌年できた、先ほどの坂を三年坂というのが真相。しかし、みんな早死にしたくないようで、ゆっくり気をつけて歩いている。なんとも「遠まわしな警告」に「怪しい情緒」を感じてしまうのである。 もっとも、京都には「あの世への入口が幾つも開いている」とか、「自分の過去と行き来が出来る」場所もあるとか、都伝説も多い。
二年坂を降りる途中、蒸し器から蒸気の上がるのを見ると、麩饅頭が食べ頃だ。試しに「お1つどうぞ」。少し先には、左へ入る緩やかな細道がある。ここは、全く転げそうも無いが1年坂になる。一方、そのまま、まっすぐ進むと「龍馬坂」に出る。この坂を右に上ってゆけば坂本龍馬のお墓がある。ここは、結構心臓破りの坂が続き、きつい。興味のある方はどうぞ。でも1度いけば納得する。龍馬坂でも、一年坂でも、結局同じふもとに繋がるが、竜馬坂まで行き、そこを左に下ることにする。この路の左手はこじんまりとした2階建ての茶屋が並ぶが、なんとも可愛らしい小ぶりな作りで、これを京風というのだろうか、暫く見とれながら進む。このあたりは駐車場もあり、タクシーも切り替えしている。気をつけて歩こう。右手には高台寺公園があるので、その先を右に曲がる。ここからは、「ねねの道」というらしい。「高台寺、ねね」とくれば、ここを知らない人(無礼者、ここを何と心得る!)でも漠然と想像は出来る。ここにも人力車屋さんの若い衆が多くいて、いつでも人力車に乗れるが、ここは、おっさん一人旅は誘われることも無い。たいがい男女、女二人連れが対象のようだ。また、このあたりには、時折舞妓さん姿の女性が出没するが、「舞妓さん扮する素人さん」である。京都の風景の中で、和服に憧れた女性の変身写真を撮影します、という特撮ビジネスで、まれに綺麗な人もいるが、殆どはそうでもない。・・・・とちょっとがっかりしながら、気を取り直して先に進む。
ねねの道を50mぐらい進むと、右側には高台寺への上り道がある。左には「都路里のちょうちん」がぶら下がっている筈だ。そこの門をくぐると左手にお店がある。日陰になった店の前で、女性のグループや若い男女が震えているので、すぐに分かる。もちろん、その後に続く。寒いときは、お店の前で待つ身はつらい。長くなると、お店のお姉さんが寄ってきて「おつかいやす」といって携帯のカイロをくれたり、暖かいほうじ茶が配られる。これが、いわゆるこの店の暖簾ということになる。順番が来た女性陣は、店内に入ると俄然元気を取り戻し、抹茶尽くしの「都路里パフェ」を食べている。ではこちら
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