2009/10/16

ウォーキング3

 準備編と実践編を2回に分けて説明してきた。今日は、その補足である。ウォーキングを始めようとするには、やはり、きっかけがある。また、それを継続させるためにも、それなりの考え方や背景が重要な役割を果たすことがある。まず、そこからお話したいと思う。少し前の「銀座梅林のカツ丼の具」でもお話したとおり、私は、腹膜炎で手術をしたことがある。

 手術当日は、耳元で「終わりましたよ、全部綺麗にしましたから」と、まるで私のお腹が散らかっていたので、片付けておきました、そんな風にも似た明るく大きな声が聞こえ、私は目を覚ました。「終わったんすか」とつぶやきながら、頭は朦朧としていた。部屋に戻されると、スニーカーを履いた軽快で機敏な先生がやってきた。「今日は、ゆっくりお休みください、明日から歩いてもらいますから」と声をかけられたのである。そんなわけ無いよな、だって、俺は、今手術が終わったばかりの重症患者なんだけんど、と思いながら、「ええっ?」って目をしかめたら、駄目押しのように「あ、る、く、ん、で、す」と子供に含んで聞かせるように耳元でささやき、その言葉だけを残して去っていった。翌朝、身の回りを良く見ると、体には、点滴の管、尿道からの管、そして、腹部からも3本の管が出ていた。腹部の管は、牛乳瓶2本分ぐらいの透明のタンクに繋がれ、中には管から流れ込む血液が既に半分ぐらい貯まっていた。これでどうやって歩くんだよ、と思いながら待っていると、看護士さんが手際よく歩けるようにしてくれたのである。

 ごろごろと点滴のスタンドを押しながら、重たい体に大半が神経を失っている状況で7階のフロアーを行ったり来たりする。少し歩くだけで貧血になり凄く疲れるが、休み休みでも歩くようにと指導されているので、なかなかベッドには戻れない。腹膜炎なので当然、お昼も、夕食もあろう筈が無い。もっとも、食べる気力も無いわけだが、それにしても、もう2本目、こんなにたくさんの血液がお腹から出ていくと、後々どうなるのか心配にもなる。
 人は痛めつけられても結構我慢できるものだと、よくわかる。そして、そんな日が3日ぐらい続くと、慣れてくる。何か新たな物を知りたいと思う願望も回復し、院内の別棟まで探検に出かけたりするようになる。

 数日後、教授の回診があった。教授は、テノール歌手のような体型で、ピチピチの白衣を揺らしながら、回りの先生方にも促すように、私に向かって、「歩いてますか?歩くのは体に良いんですよ」、「歩くことで腸が動き、元気になるんですよ、免疫力が上がりますからね」と話かけたのである。もちろん回りの先生方も首を縦にうなずきながら、私を覗き込んでいる。「こんな状況で、体に良いってよく言えるよな、ほんとかな」と思いながら、やや強張った顔で顎を引くしかできなかった。最後に付け加えるように教授は笑みを浮かべ、「ライオンも猫も犬もお腹をゆすって歩いてるでしょ」、と付け加えたのである。その言葉に妙に共感を覚え、教授が去った後も、ずっと心に残ってしまった。そして、その言葉通り、既に手術後5日目には、お粥を平らげ、喫煙所で血液のタンクを抱えながら、入院仲間と元気に高笑いをしていたのである。

 入院以前は、ウォーキングをするのに、年寄りの暇つぶしか、体重を減らすとしても、大した効果はないと思っていた。消費カロリーだけなら、食べなきゃいいわけだし、他にも方法はある。血行を良くするならお風呂で十分である。体脂肪を落として筋肉質になるなら別のスポーツもある。色々言い訳を考えてウォーキングをなめていた。しかし、将来的な事を考えると、1人で歩くだけで、健康バロメータともいうべき、免疫力が高まるなら話は別だと少しづつ思えてきたのである。これがきっかけになるわけだが、ストレスは大きく免疫力を低下させると言われている。生きている限りストレスから逃れることは出来ない。ならば、歩くしかないという結論に達する。思い当たるフシのある方は頭の片隅に残して欲しい。

 さて、それでは、本題のウォーキング継続中の注意点をまとめてみる。

 ①健康を管理する。ウォーキングを継続させていると、風邪をひいたりすると、すぐに咳や鼻水などの症状が出て、発熱し、また、すぐに治る。このレスポンスの速さが特徴である。もっとも、平素から痛んでいる部位があると、ウイルスはそこに身を寄せるらしく割と症状は長引く。早めに体調を知るには、正常時の体温(/時刻)と現在を比較すればよい。微熱を感知できれば、対処も早い。ちなみに、日本人の体温は舌下血管5分計測で36.8度で、これは脇の下の計測値に比べて高い値(+0.5程度)を示すと言われているが微熱を計測するにはこちらが良い。 通常体温が高い人は、元々免疫力が高いと言われており、それが、加齢と共に下がり気味になった人は、免疫力も低下するらしい。また、病気の治りが遅かったり未病状態が続くのも老化の特徴言われている。
 胃腸の弱い方にとってウォーキングは快便の効能が顕著だと思う。快便が続くとお腹周りもすっきりする。ただ、経験的に歩きすぎても良い結果にはならないことがある。歩く距離によってその効果が大きく異なるので、いくつかの歩行コースで距離を調べながら歩き、快便のための最低歩行距離を割り出しておきたい。快便は食欲の源である。

 ②自分を過信しない。とかく体の調子がよくなると自信がつく。これが危ない。実は、誰でも既に40歳ぐらいから微小な脳梗塞が進行しており、これによって、運動神経が大幅に低下している。さらに、使わなくなった筋肉は既に衰えている。大きな動作は問題ないが、俊敏な対応力や、瞬発力が低下してくる。いくらまっすぐ歩くのが上手になっても、運動神経が回復しているわけではない。よほど自信のあること意外は注意して実行した方が良い。

 ③目と肌の保護。ここ4~5年紫外線の強さが報告されている。目にはUVカットタイプの眼鏡を装着し、髪の毛のある人は帽子をかぶる。無い人も別の意味で帽子をかぶる。むやみに肌を紫外線で痛めつけないようにしたほうがよい。

 ④夕方から夜間は歩行厳禁。人の目は、正常でも急に暗くなると実体が見え辛くなる。これは、車の事故も夕方が多いことから容易に理解できる。また、50歳ぐらいから暗い部分の解像力、階調再現が著しく低下する。つまり、一定の暗さ以下では物体を認識しずらくなる。これは、徐々に水晶体が白濁してくるからである。毎日通っている夜道は、頭の中で障害物は既に認識されているが、不慣れな道では、障害物などに近づかないと認識できない危険性があるので、夜の歩行は厳禁である。

 ⑤歩行中の水分補給。歩きはじめて初めの頃は何かと疲れやすいので「酸素水を頻繁に」飲むと良い。慣れると「梅肉エキスの薄め液」なども良い。 いずれも既に紹介済み。

 ⑥歩く事が果たして本当に健康によいか、常に検証する気持ちを持つ。歩き始めは、何かと顕著な反応があるので、気分もよくなる。ストレス解消になったとか、お腹がよく空くようになったとか、よく眠れるとか言われる。しかし、それは、運動による単なる体の反応である。健康になっているかどうかは定かではない。また、継続している人は、自分は健康だと、そう信じ込んでいて、しばらく歩けない状況が続くと、どうも体調が悪いとか、不満を漏らす人が多い。これも、体を休めて何が悪いのか分からない。つまり、むやみに歩くことが体によいとは限らない。その程度の認識でよい。あくまでも、体調管理の1つの手段でしかないからだ。軽いストレッチで済ませたほうがよいとか、睡眠をとったほうがよいとか、それを判断するのが人間である。

 ⑦時々負荷を増やす。同じ平場をひたすら前に進むだけではなく、広い場所では、時々後ろ向きに歩いてみたり、 蟹のように横にも移動して、衰弱した神経や筋肉に刺激を与える。そして、坂道を歩いて心肺に負荷を掛けるように心がける。階段でも効果が高い。

 ⑧コースの時間を計測して楽しみを探す。どのコースを使って、どのくらいの時間で達成できたかを知り、平均歩行速度を求めたり、目標値を持つことで、継続意欲は少し上がる。 ストップウォッチを用意しておくと、さらに本気になる。

 ⑨携帯する物。小銭いれ(電話番号、名前を書いた物を入れておく) 、タオルのみ。身軽にして煩わしい事を忘れる。ガムを携帯し、トロリンチョな顔にならないように、ガムを噛んで顔の筋肉も鍛える。

  ⑩歩行中は血流が早くなるので、必要なビタミン類や栄養素は歩く前に補給しておくと効き目が良い。

 以上、補足として注意点をまとめてみた。どれも当たり前のことばかりだけど、気持ちよく歩くためには、危険を回避しながら目標を達成する必要があるので、たとえ、歩き慣れた道でも気を抜かないで歩くようにして欲しい。
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