2009/10/23

オーディオマニア8

 最近のレコード店には、社会環境を反映してか「大人のCD」というコーナーがある。これは、20歳以下は聴いてはいけません、ではなくて、ここは中高年向けの売り場だと主張しているのである。かつて歌唱力に定評のあった歌い手が、当時流行した他の歌手の曲を、アレンジをしてバラード調というか、自己流に歌い上げたCDが並べられている。1970年頃のいわゆる和製ポップスを心得ている人向けに、円熟した歌い手のお洒落な雰囲気のCDを並べた一角といえよう。 もっとも、「さして音楽そのものには興味は無い、しかし、昔流行した曲と歌手」は良く承知していて、聴きなれた曲でも、一寸新しい感覚で聴いてみたい人が「私の知っている歌手はいるかな」と探す場所でもある。どちらかと言えば、こちらではないかと思われる。

 大人ならば、その同じ時代を生きた歌い手に共感する懐かしさと、上品なパッケージの雰囲気に、つい見入ってしまうに違いない。しかし、実はお店の方も、世代が変わっていて、これらのCDは名前の順に並べた場所に置くには目立たないし、しかも、かつては歌唱力に定評のあった人達なので、ちょっと別コーナーにまとめてみようかなと、気を利かせているということになる。このコーナーでは、歌い手はともかく、知っている曲があるかどうかも重要な要素になる。かつて紹介した徳永英明、布施 明もこのような場所に置いてあった。このコーナーに出くわすと、「これって私のコーナー」って思ってくれる人もまれにいるわけで、何かを勘違いして買って帰る人も少なくない。

 一方で、ある程度内容を理解出来ている人たちは、出てくる音質にも「枯れた大人の録音」を期待している。当然「歌手の歌いっぷり」も納得いく物でなければならない。ちょっとBGM風に「豊かな低音とアコースティックな響きを、秋の夜長に朗々と鳴らしても、恥ずかしくない」音質であってほしい。これが大人のCDに対する勝手な個人的イメージである。そんな、たわいも無い音楽に浸りながら、秋の夜長を上質な珈琲タイムで過ごしたり、職場から持ち帰った仕事を進めるのも良い。
 とかくファンとしては、勝手に良い方向でイメージを膨らませるわけだが、それに対して期待はずれもあるわけで、経験的に見ると、実際は3枚に1枚ぐらいしか気に入った物は無い。それは、バックの演奏が非常に元気が良いのに、年齢のためかボーカルが歌えてないとか、優しい印象を出すために、アレンジが単純すぎるとか、アコースティックな音は姿を消し、軽薄なエレキサウンドで構成されているとか、薄っぺらい作りであったりする。これが、少々購入時に勇気のいる理由でもある。

 それにしても、とにもかくにも聴いてみないことには、何ともいえないわけで、そこで、今回は女性ボーカルが男性の曲をカバーしたアルバムにした2枚を購入してきた。言い方はよくないが、「騙されても騙されても、騙され続ける喜びと言うか、世の中の本質をこんな僅かなお金で体験できるなんて、他に無い」と妙に納得しながらも、もしかすると、と一種の期待もするわけである。それもこれも、ファンの気持ちや要求をもっと具体的なサウンドにして表現すべきではないかと思うからである。もっとも、期待=購入意欲と言うこともあるのだが。

 さて、どちらも10~12曲入りで3,000円である。詳細はPDFをご覧戴きたいが、確かにリリースする側も「絶対に数は売れない」と思っているに違いない。私のような物好きが、間違えて買って帰るぐらいに考えているのであろう。まあ、それでもよいし、でも、この2人は、かつて歌いっぷりもしっかりしていたので、そんなにはずれではないだろう。 曲を思い出してもらうために、曲名ごとに作詞・作曲者名を付け加えた。
ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21386&app=WordPdf