2010/01/19

オーディオマニア10

 単なる「大人のCD紹介」の続きになってしまって、つまらない印象を持たれるかもしれないが、最近のオーディオマニアは、65~75歳位の年配の人が多いらしい。この世代の人たちは、我々とは違ってお金持ちが多いのだと聞いた事がある。確かに、音楽を楽しむ時間を忘れて仕事に没頭し、子育てに追われた時代が終わって、時間的余裕ができたのかもしれない。そう言う人たちは、かつて夢を追いかけた時期があり、途中半ばでの中断を余儀なくされていたようだ。人生の第四コーナーを回って、これからは自ら楽しみたいと実感したとき、残された時間の中で夢の実現の為に、僅かな埋蔵金を叩いてでも手に入れたいものがある、ということなのかもしれない。もっとも、オーディオに限ったことでもなく、かつて「喜びとした記憶と、それに情熱を傾けた時間」が大いに影響しているようだ。 それにしても、今のオーディオ装置に新たな進化を求めるのは、古代遺跡にロマンを求めるようなもので、昔のような興奮を覚える技術的要素はあるはずも無い。そこで、かつて憧れた舶来ブランドに心を寄せ、高額商品を受け入れることになるらしい。
 さて、CDに保存されている音質は、近年明らかに向上してきた。CDが出た当初に比べ、録音装置やミキシング、あるいは音響処理装置などの性能向上によって、音作りに対する考え方も変わってきているし、録音技術自体も少しづつ変貌を遂げてきたといえる。既に音楽はインターネットからダウンロードする時代かもしれないが、そこに差別化を求めるというか、CDの音質が大幅に改善されているのである。だから、オーディオ装置を少々アップグレードするよりも、それなりに新たなCDを探す方が、よほど優れたサウンドに巡り合う確率は高くなり、C/Pの良い楽しみ方が出来るのではないかと考えるわけである。
 どのような装置でも新たな「良い録音のCD」を再生すると、もっとも稀にしかないが、オーディオ装置は見違えるほど元気になる。恐らく、ちょっと大き目のベニア合板にロクハンを付けただけのスピーカでも同じ振る舞いをするに違いない。そのくらい、CDの音質が与える影響は大きく、オーディオ装置や部屋の良し悪しなどは、取るに足らない事だったかと錯覚を覚えることすらある。確かに、かつて無響室でスピーカーユニットをJIS箱に取り付けて計測していた頃は、2nd歪は許容しても、3rd歪は許せなかったし、ピストン領域を外れた分割振動領域までも再生帯域として扱うには抵抗感もあった。実測データーを見ながら、JBLの芯のある音は、3rd歪だとも言い切った頃もある。インパルス応答の累積スペクトラムを聴感と相関を取ろうとしたこともある。でも、それは「無理に特性と音質を結び付けようとした」愚かな行為であったのかもしれない。そして、当時それらは、録音されているレコードの音質の貧弱さに対して、無理に再生装置の物理特性や理屈を振り回して「こじつけ」をしていただけのように思えるのである。
 さて、言い訳がましい反省を長々と書いた上で、今日の本題になるわけだが、前々回、高橋真梨子「NO REASON」 を聴いて、彼女の歌いっぷりのみならず、その音作りにも魅力を感じて、既発売になっている他のCDを聴いてみたくなったのである。少し古いが 「紗」~エッセンシャル~ と the best -new edition- を買ってみた。曲名の詳細はPDFをご覧戴きたいが、「紗」はなかなかの優秀録音なのである。まず最初に何といっても音作りが優れている。カラッと抜けの良いパルシブな重低音に特徴があり、かつて、スタジオのモニター室側で聴いているような、空気感、直線性、分解能、スピード感ともに申し分のない低音を聴かせてくれる。それよりも、個性的なアレンジが大変興味深く、聴き応えがあり文句なく楽しい。各楽器の演奏パートにもきめ細かい工夫が見られ明快で美しい音作りなのである。どこを取っても熟練の領域に達して、「レコーディング・チームが一丸となって細部まで拘りぬいた」と思わせるほど、枯れた大人に納得されるアルバムに仕上がっていると思える。
 ではこちら
http://cid-cfbf77db9040165a.skydrive.live.com/self.aspx/.Documents/%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%aa%e3%83%9e%e3%83%8b%e3%82%a2/%e9%ab%98%e6%a9%8b%e7%9c%9f%e6%a2%a8%e5%ad%902%e3%82%a2%e3%83%ab%e3%83%90%e3%83%a0.pdf