2010/03/26

厳島神社

 歴史ある社寺仏閣には、多くの先人達の想い入れが潜んでいる。長い年月を現在までに伝える想いとは、何であろうか。もし、それに1つでも触れる事が出来たら、現在に生きる喜びを感じる事が出来るはずである。先人達の苦労を垣間見ながら長い歴史を感じることこそが、壮大なロマンなのである。 そして、その願いを理解し、その場に残る心意気を後世に伝えることも我々の役割ではないだろうか。

 今日は、世界遺産の宮島に来ている。早速ここからレポートする。上の写真は本社本殿の左背後から撮影した物で、遠くに見える赤い鳥居が、宮島の風景写真でおなじみの大鳥居である。この厳島神社は、今から1400年ぐらい前に原型が創建され、今の形になったのは、900年ぐらい前の平安時代と言われている。奈良時代の次が平安時代なので相当古いが、 水に浮かんでいるにもかかわらず、2度の火災にあっている。その後、修復を重ねて現在の形になったのは、500年ぐらい前になるらしい。最近では、1991 年、1999 年、そして2004 年の台風で大きな被害を受けて来たが、平安時代の様式をそのままに修復し、今日に伝えている。ここは、全国に広がる500の厳島神社の総本社で、宗像三女神(むなかたさんじょじん)が祀られている。女神様が祀られているためか、社殿を含む一帯全てが、どこまでも雅で美しく、松島、天橋立に並ぶ日本三景の1つでもある。生涯を通じて1度ぐらいは、これらを訪ねてみたいものだ。

 ここまで来るのには、広島駅から広島電鉄(略して広電)の路面電車の「宮島口」行きに乗り、約68分かかるが、料金は270円と安い。JRで来るには、広島駅から山陽本線に乗り宮島口駅で下車。所要時間は27分と早いが、料金は400円。いずれもフェリー桟橋まで徒歩2~3分。フェリーは2社あり、「宮島松大汽船」と「JR西日本宮島フェリー」で、どちらも宮島まで乗船時間10分、価格170円で15分間隔で運行されている。満潮に近い時間帯に限るが、行きは「JR西日本宮島フェリー」が良い。それは、わざわざ大鳥居に接近する航路を通るからで、ぜひとも、この大鳥居手前からの厳島神社をご覧戴いただきたい。記念写真には、ここも欠かせないポジションの1つでもある。

 さて、一般的な話は、これくらいにして、また屁理屈が始まったと思われるかもしれないが、続けよう。大昔から、宮島の弥山(みせん)の稜線は「観音の横顔」の如く美しい(確かにそう見える)といわれるぐらいで、古くは、宮島自体が自然崇拝の対象となっていた。そんな女神の宿る宮島を、庶民は対岸側から拝んでいたのである。その後、本格的な社殿が平清盛によって造営され、清盛は権力の象徴としていたに違いない。また、周辺の豪族を参拝に招く時には、必ず潮が満ちてから船で大鳥居をくぐり、神社先端にある船着場のような「火境前」から入場したのではないかと推測される。なぜなら、権力の象徴は、自分が神に近いことを誇示するため、大鳥居を必ずくぐるだろうし、本殿と大鳥居を結ぶ線上、これを軸と考えると、それに対して神社自体が左右対称に構築されていて、その軸の延長海上からの景観が一番美しいからだ。それを観ずして何の価値があるのだろうか。是非それをフェリーで確認してもらいたい。いつも、この風景を眺めながら、その様に考えてしまうので、先人達もそこに価値を見出していたに違いない。いまでこそ、フェリーを降りてから、本殿までの順路に、もみじ饅頭などのお土産屋だとか、焼牡蠣のお店、穴子飯屋、あるいは、しゃもじ屋などが軒を連ねているが、自然崇拝の時代に遡るとすると、大昔には、庶民が宮島に渡るには、潮が引くのを待って、小船を出し、鳥居の前で下船し、鳥居を歩いてくぐっていたかもしれないのである。つまり、1400年前は干潮時の海面がかなり低かったし、900年前も現在よりは1m以上低かったのではないだろうか。これはあくまで推測である。ということで屁理屈を終わりにするが、今日のPDF(干潮時の大鳥居)を見ながら考えて欲しい。大鳥居の構造は伝え聞いているとしても、そうならば、900年前に実際にどうやってこの大鳥居を基礎から構築したのであろうか。そこを考えてこそ先人達の想いを理解できるし、厳島神社の存在価値を見出せると思う。厳島神社は、ここがミソなのである。
 ではこちら
https://onedrive.live.com/view.aspx?cid=CFBF77DB9040165A&resid=CFBF77DB9040165A%21574&app=WordPdf

補足:1.もみじ饅頭は出来たてが美味しい。参道では1個ぐらい楽しんでみよう。
2.焼牡蠣は、殻付き牡蠣を焼いただけの物だが、殻付き牡蠣自体もやや大ぶりな物で市場価格は1個200円前後である。すると、焼いてある分お得と言うことになる。お店によっては3個500円で楽しめる。
3.穴子飯は、穴子を裂いてタレにつけて焼き上げた穴子が御飯の上に載っている。江戸前の穴子を食べなれた人には、煮付けと焼きの違いが、少々歯ごたえと香ばしさの違いとなって感じられる筈だ。
4.厳島神社の拝観料300円。本殿左手丘上に在るのが千畳閣、こちらは拝観料100円ここもお薦め。