2010/03/02

弁当シリーズ6

 今年は、公共機関でごねる人が目立つようだ。大きな声で、「俺なんか、もう税金なんか払いたくねえよ、平成の脱税王は、誰か知ってんのかあぁ?」 と文句を言いながら、くたびれた皮の鞄から数百万円取り出して税金を納めるじいちゃんがいる。大人しく番号札を持って座っていても、人それぞれに川柳のような一言があり、ここでは、笑いが絶えないのである。そうやって、支払う人は、何かと文句ばかりつけるが、受け取る方はぺこぺこと頭を下げながら「はい、はい、そうですね」と、もっぱら下手である。ここは、税務署の2階にある納税課である。

 一方、ここの1階では「確定申告はこちら」と書いた札の前を通り、遊園地の行列のようにくねくねと曲がった待ち順路を通って、偉そうなおっさんの前に出る。そして、おもむろに袋から「こちらが、青色申告決算書、これが譲渡所得計算書、そしてこれが確定申告書Bです」と真面目な物腰で、あくまで丁重にお話申し上げる訳である。相手にお願いする時は、ここでは「先生・・・・」になる。ここに、鎮座されている数名の方々は、税理士の中でも選りすぐりのプロで、チェックは鋭く早い。まあ、限られた範囲の条件で、しかも、国税局のホームページのソフトは良く出来ていて、確定申告Bなどは、誰がやってもそれなりの結果が得られるし、おまけに知らなければ、知らない方が損をする仕掛けだからさほど心配はないようだ。提出する側としては、青色決算書と譲渡計算書に関しては、余計なことに気がつかないで欲しいと思ってびくびくしているわけである。だが、今日も、大して見もせず、すかさず納税票に金額を書き込み、「2階でお願いします、お疲れ様でした」と冷たく言い放されてきたのである。まあ、巧妙な裏技は、そう簡単に見つけられるものではないとも心得ているようだ。この、1階と2階の立場の逆転は恐ろしいくらい人間性を顕にするわけで、歳を重ねれば一寸あつかましくもなり、納税の厳しさも身にしみているということなのだろう。わかるなー。それにしても、国税だけでこれだから、市民税とあわせると、確かに態度も変貌して当然かもしれない。

 私は、会社分と個人分と年2回程税務署を訪れるが、いつも、月の変わり目の日で、丁度お昼休み時間あたりが空いているので、この時間帯を狙って来ることにしている。すると、時々、弁当持参のじいちゃんを見かけるのである。納税してもすぐには帰らず、この納税課の居心地がよいらしく、たむろしている高額納税をしたじいちゃん同士が集まって近況報告会兼食事会を始めるようである。彼等は、あつかましくも、「お湯の出るところは何処」とか言って、窓口の人を顎で使っている。窓口のお姉さんも良く心得ていて、その様子は、たわいもないことばかりで、納税課から見ると親切なのだが、小額納税者の私から見ると、あたかも、銀座の高級クラブさながらのサービスのように見えるのである。どうも、じいちゃんは、近くの地主さんのようにお見受けした。今日も、そんな状況を目の当たりにして、税務署でそんな気分を味わえたら幸せだろうなと思うばかりである(そんなの、ありえねえ)。

 さて、その、筋張ったじいちゃんの手元にあった弁当は、たっぷりと牛肉が乗った御飯と別に野菜の煮物で、それが、妙に美味しそうに見えしまい、つい同じ様な弁当を購入して帰ってきた。そんなことから、それほどの高額納税者でも、この程度の質素な弁当で済ませていると思ってもらって良い。そういう意味で、我々のお昼は納税額の割には、カロリーが高すぎるかもしれない。 もっとカロリーを抑えて、長生きして高額納税者になりたいものだ。
ではこちら
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